どうして歯科治療は中断されるのか?

治療中断で失敗する患者様が非常に多い!

インプラント治療を希望される方はもちろん歯が欠損しているわけです。歯がなくなる原因として

  • 歯周病
  • 虫歯
  • 歯根破折

が考えられます。
そして、多数の欠損をもつ患者様の多くは欠損状態を放置していた経緯があります。
そして、だんだんと噛めなくなり、痛みも伴い、『そろそろまずい!』と思って歯科医院を来院される方が多くいらしゃいます。
そうした場合の治療は、虫歯1本の治療とは異なり、数回の治療で終了することはほとんどの場合ありません。

特に重度の歯周病を併発している場合、治療期間が半年や1年かかることもあります。
インプラント治療を行う前には、歯周病の治療はどうしても終了させておく必要性があります。
それは、歯周病細菌はインプラントにも感染してしまうからです。
これをインプラント周囲炎と言います。
この詳細はこちらを御覧下さい。

インプラントと歯周病の治療を希望されて来院した患者さんのうち何割かの人は治療を中断してしまいます。
それでは何故このように治療を中断する人が多いのでしょう。
ここでは歯周病患者様に焦点を絞って話たいと思います。

治療中断患者様の共通点
  • 自覚症状がないから。
  • 初期の治療により出血等の症状が改善したから。
  • 仕事等が忙しく、通院する時間がない。
  • 治療に対する痛み等があったから。
  • 治療の必要性はわかっていてもなかなか行動に移せない。
  • 一度予約をキャンセルしてしまったために通院しにくくなった。
  • 治療に対する理解が得られなかった。
  • …etc

治療中断は必ず歯周病を悪化させる!

その先に待っているのは歯を失うこと

一度歯周病治療を中断した患者さんが再度来院した場合、ほとんどの患者さんが悪化しています。
これは、一度治療を中断すると再度治療を受けるまでにある程度の期間(時間)が経っていることがほとんどであり、治療に対する積極性が劣るためブラッシング自体も不足になっている場合がほとんどであり、再度検査を行うと必ずといっていいほど検査結果は悪化しています。
一度治療を中断したとしてもあきらめず、再度治療を行う行動力をもって下さい。

歯周病治療において大切なこと

  • 歯周病に対する正しい知識を理解すること
  • 現在の歯周病の進行程度および治療内容を把握すること
  • 毎食後、人の2倍の時間をかけ徹底して歯ブラシを行うこと!
    歯ブラシを少しでも怠ると、治療の効果はないと思って下さい。
  • 絶対に禁煙すること!
    喫煙者は歯周病は治りませんし、インプラントもダメになります!
  • 歯周病も全身的な病気の一つですから、食生活、睡眠、適度な運動、ストレスをためない等の生活習慣に十分注意すること!
  • 根気強く治療を行うこと
  • 定期検査(メインテナンス)を必ず受けること

上記全てをみてどうですか?
喫煙し、食生活や睡眠?ましてはストレスまで…
無理だ!
と思われている方は歯周病治療は難しいと思って下さい。
歯周病も全身疾患の一つです。
例えば、糖尿病の方がいたとします。
重度の糖尿病とします。
食生活、喫煙、運動…
どれをとっても改善しなければ、治りません。
徹底してです。

喫煙したり、脂っこい食生活していても長生きしている人もいるじゃないか?
と本気で思っている方は治療はあきらめた方が良いと思います。
喫煙を例にとると、歯周病の方と歯周病ではない方ではリクスの程度はまったく違います。
歯周病で歯を失った後にインプラントをされた患者様で、喫煙されている方はいらしゃいます。
喫煙されている本人はさほど深刻には思っていらっしゃらないと思いますが、これは意識があまりにも低いことです。

全身管理もまったく同じです。
歯周病の大きな原因は汚れの付着(ブラッシング)ですが、口腔内も全身の一つですから、健康でないといけません。
上記にあったような食生活、睡眠、適度な運動、ストレスは歯周病にも、インプラントにも関係してきます。

話は長くなりましたが、上記の7つは最低限守らなければ、ならないことです。
歯周病になってしまい、抜歯後にインプラントを希望される場合、どうしてもインプラントを行い、噛むことに集中してしまいがちですが、本当に注意しなければならないことは歯を失った原因です。
歯のない部分に単にインプラントを行っても原因を改善しないとインプラントもダメになってしまいます。
また、現在問題がない歯までもがダメになってしまう可能性があります。
インプラントを行う際にはまず、『どうして抜歯に至ったのか?』ということをきちんと把握する必要性があります。

治療後が最も大切!:定期検査を受けないと…再発します。

歯周病の治療が終了したとしても安心してはいけません。
歯周病は、一生つき合っていく病気ですから治療自体が終了したからといってその後一生歯周病にならないということではありません。
特に初診時に重度の歯周病であった場合は再発する可能性が高いため治療終了後も定期検査(メインテナンス)が非常に大切になっていきます。
メインテナンスは、治療と同じくらい大切であると言われています。
実際に一度良くなってもメインテナンスを受けない人は再発し、抜歯にいたることもあります。

それではメインテナンスはなぜ必要なのか?
歯周病の治療が終了したとしても、きちんとした管理ができていないと必ずと言ってもよい程再発してしまいます。
実際に歯周病で時間をかけて治療したにもかかわらず、再発をしてしまい抜歯をしなければならない状態になった方も多くいらっしゃいます。
歯周病の治療中や治療終了直後は歯周病菌(歯周病を悪化させる問題の菌のこと)が非常に少なくなっています。
はじめは、歯ブラシも非常に注意をし、時間をかけて行っていますが、だんだんおろそかになっていく場合もあり、ふたたび問題となる歯周病菌が繁殖しやすい環境となるため再発を起こしてしまいます。
メインテナンスとは、定期的に口腔内を管理することにより、歯周組織の健康を維持していくことです。

アメリカの歯周病学会では歯周病のメインテナンスを『歯周病の治療の延長であり、新しいあるいは再発する異常や疾患を早期に発見し、治療しようとすることである』としています。
そして、このメインテナンスの有効性や期間を科学的に実証する論文も多数あります。
以下には『なぜメインテナンスが必要なのか』ということと、どれくらいの頻度で受ければ良いのかということを論文をもとに説明いたします。

『なぜメインテナンスは必要か?』

歯周外科処置後にメインテナンスを行わなかった場合どうなるか?

歯周外科処置後にメインテナンスが行われなかったり、歯ブラシが不十分であれば、結果的に歯周病は再発することが多くの研究により実証されています。

研究 1.

AxellsonとLindhe(1981)は6年間にわたり歯周外科治療を受けた患者さんが適切なメインテナンスが行われないとどうなるかを調べました。2~3ケ月の間隔でメインテナンスを受け、その時に診査と指導、および歯石除去等のクリーニングをした患者さん(メインテナンス群)と、メインテナンスを受けなかった患者さん(指導やクリーニングはしないで検査のみに来院してもらった)ではあきらかにメインテナンスを受けなかった患者さんは再発していました。

『どれくらいの間隔でメインテナンスは必要か?』

歯周外科処置後にメインテナンスを行わなかった場合どうなるか?

歯周外科処置後にメインテナンスが行われなかったり、歯ブラシが不十分であれば、結果的に歯周病は再発することが多くの研究により実証されています。

研究 2.

WestfelとNyman(1983)により歯周外科処置後に専門家による歯面清掃を繰り返し行うことの重要性が報告されました。
24名の患者さんは2週、4週、12週の間隔をもってメインテナンスグループにわけられました。
その結果メインテナンス間隔が短いほど再発が少なかった。
『メインテナンスの期間はその人の歯ブラシ(口腔管理のレベル)の程度や歯周疾患の程度により違いますが、特に問題が大きいとされる患者さんは来院期間を短くした方が再発のリスクは少ないことが実証されています。

当医院では、歯周外科処置を行った患者さんおよびご自身では完全に口腔内のケアーができない方は、基本的に1~3ケ月に1回、 軽度の歯周病であり、口腔内のケアーも良くできている方は6ケ月に1回メインテナンスを行っています。』

『口腔管理がきちんと行われ、適切なメインテナンスを行うことで歯周病で失った骨は再生する!』

研究 3.

RoslingとNyman(1976)らは口腔内の管理とメインテナンスがきちんと行われた場合、口腔内管理およびメインテナンスがあまり行われなかっった場合に比べて、骨の再生に効果があることを報告した。
また逆に、歯周外科処置を行っても、その後の口腔内管理とメインテナンスが行われなかった場合は再発することをKeer(1981)が報告した。
この報告によると歯周外科処置後5年の再検査の結果、口腔内管理とメインテナンスがきちんと行われなかった患者さんのうちその45%に失敗が認められたと報告した。

メインテナンスにおいて何年かおきにレントゲンで骨の再生状態を確認しますが、口腔内の管理(日常の歯ブラシの程度)やきちんとメインテナンスが行われなかった場合は明らかに骨の再生は認められない場合が多いです。
歯周病の治療が終わった患者さんには、メインテナンスは実際の治療以上に大切なことであり、ご自身の歯で一生過せるかどうかはこのメインテナンスにかかっていることを話します。
しかし、このメインテナンスは日本ではまだ一般的でないのが現状です。
ご自身の歯で一生を過ごしたいと思われる方は必ずこのメインテナンスを受けて下さい。

『メインテナンスを行うと本当に歯は保存できるのか?』

研究 4.

例え進行した歯周疾患であっても、歯周治療を受け、適切な口腔内管理とメインテナンスを行った場合はかなりの確率で歯を維持することが可能であるという報告が多数あります。
0liver(1969)は5年から17年間(平均10.1年)のメインテナンスケアーを行っている歯周疾患患者さん442人について報告した。 この研究によれば歯の喪失率は1.6%という非常に低いものであった。
Ross(1971)らは、2~20年メインテナンスを受けた患者さん180人について歯の喪失率は患者1人当たり0.78歯であった、と報告している。
同様に、口腔内管理をし、メインテンスをきちんと受ければ歯周疾患にかかった人でもメインテナンス期間中に失う歯の平均はHirschfeld (1978)は1.8歯、Becker(1984)は0.72歯、Nabers(1988)らは0.29歯であったと報告している。

もともとの歯周疾患の程度やどこまで治療するかによってもその予後は異なりますが、口腔内の管理がきちんとできて、適切なメインテナンスを行えば、その予後はメインテナンスを受けない方よりはるかに良いことはまちがいないことです。

治療が終わった患者さんが良くする言葉があります。
『また痛くなったり、問題があったら来ます!』もし本当に問題があってからくれば当然歯を抜歯したりすることになるのです。
特に歯周病は自覚症状がある状態はかなり進行していることがほとんどです。

歯を抜きに歯科に来院するのか?歯を保存するために来院するのか?
ということです。

ご自身の歯はご自身で守ることができるのです。
もう痛みがあってから治療するという考え方を変えてみてはいかがでしょうか?