歯周病治療
歯周病の治療
以下に歯周病の治療手順を記載します。
歯周病の検査
まずは歯周病の検査からです。
歯周病の診査を始るのに一番最初に行うのが歯周ポケット検査です。
これは下の写真(写真1、2)にあるプローブという器具を用いて行います。
プローブを歯周ポケット(図1:歯と歯肉の間に存在する溝のこと)に入れ(写真3)、その深さをミリ単位で測定します。
この歯周ポケットは1歯に対して6ケ所計測します。(写真4)おおむね5mm以上の深さが認められる部分は歯周病と判定します。図2は当医院で使用している歯周病ポケット検査表です。図3 はその判定表です。
レントゲンの検査
次にレントゲンの検査を行います。
レントゲン検査により骨の吸収程度をみます。
黄色の線(.......)は骨が吸収する前の骨の位置を表した線で、赤の点線(.......)は骨が吸収してしまった現在の骨位置です。
歯周病によって骨が大幅に吸収してしまったのがわかると思います。
歯周病菌の測定
次に歯周病菌の測定を行います。
歯周病菌についての詳細は下記参考リンク『歯周病菌はどこから感染するの?』および『歯周病細菌測定検査』を参考にして下さい。
同じ深さのポケットがあってもポケット内部に存在する細菌の量や種類は異なります。
歯周病菌の測定を行うことにより、菌の種類や量を把握し、実際に歯周病は細菌感染で起こっていることを理解していただきます。
顕微鏡で歯周病菌をみると写真6のように見えます。
噛み合せの検査
次に噛み合せの検査を行います。
上下の歯型をとり、噛み合せととり、こう咬合器という噛み合せを再現する装置に取った型を取り付け噛み合わせの状態をみます。咬合器に取り付けた状態が写真7です。
お口の中の清掃状態の検査
次にお口の中の清掃状態を検査します。
簡単に言えば歯ブラシがきちんとできているかどうかを診査することです。
このことは非常に重要なことです。
歯周病の根本的な原因は歯の汚れですから歯ブラシの状態が悪いままで治療を行っても絶対に治りません。
歯科衛生士とともに口腔内の管理を徹底的に行います。
写真8はお口の中の汚れが赤く染まる液をつけて磨き残しの状態をみたものです。
一見きれいなように見えますが、矢印の部分の赤が磨き残しがあるところです。
口腔内の写真撮影
次に口腔内の写真を撮影します。この写真は治療計画の立案や、各専門医との連係やディスカッションのため、又治療前後の口腔内の変化を把握するために重要な資料となります。正面、左右側方、上下等5~10数枚の写真を記録します。(写真9)
全身状態や生活習慣等の問診
次に全身状態や生活習慣等の問診を行います。
歯周病と全身とのかかわりは非常に深い関係があります。
糖尿病、喫煙、食生活、ストレス‥‥等と歯周病との関係については多くの報告があります。
以下にはその質問表を記載します。
歯周病および虫歯リスク検査に関するアンケート
以下の項目について判る範囲内でお答え下さい。□にレ印をして下さい。
歯磨きについて
-
1. 歯磨きは毎日行いますか?
- はい
- いいえ
-
2. 1日に何回歯磨きを行いますか?
- 1回
- 回
- 3回
-
3. いつ歯磨きをしますか?
あてはまるもの全てにレをつけて下さい。
- 朝食前
- 朝食後
- 昼食前
- 昼食後
- 夕食前
- 夕食後
- 毎食後
- 物を食べたら
- 就寝前
- その他( )
-
4. 1回何分ぐらい歯磨きをしますか?またその方法は?
- ( )分/1回
- 歯科医院での指導による
- 自己流
- その他( )
-
5. デンクルフロス(糸ようじ)または歯間ブラシは使用していますか?
- はい
- いいえ
-
6. リステリン等の洗口剤を使用していますか?
- はい
- いいえ
飲食について
-
1. 1日に何回食事(間食を含む)をとりますか?
- 1日1回
- 1日2回
- 1日3回
- 1日4回
- 1日5回
- 日6回
- 1日7回以上
-
2. 砂糖の摂取についてあてはまる項目にレをして下さい。
- 菓子類やジュース、砂糖入りのコーヒー等をまったく摂取しない。
- 菓子類やジュース、砂糖入りのコーヒー等を時々摂取する。
- 菓子類やジュース、砂糖入りのコーヒー等を1日1~2回程度摂取する。
- 菓子類やジュース、砂糖入りのコーヒー等を1日3~4回程度摂取する。
- 菓子類やジュース、砂糖入りのコーヒー等を1日5回以上摂取する。
-
3. 食事について近いと思われるものにレをして下さい。
あてはまるもの全てにレをして下さい。
- 野菜や穀物等の繊維質が中心である
- 食事のバランスは気を使っている方である
- 野菜を多く取るようにしている
- 魚を多く取っている
- 肉類を多く取っている
- 偏食が多いと思う
- ハンバーガー等のファーストフードをよく食べる
- 菓子類をよく食べる
-
4. 飲酒について
- 毎日飲酒する
- 時々飲酒する程度
- 週に3~4回程度
- 付合い程度
- 週に1~2回程度
- 全く飲酒しない
予防について
-
1. フッ素を使用していますか?
あてはまるもの全てにレをして下さい。- フッ素入りの歯磨き粉を使用している(アクアフレッシュ、デンターライオン、ホワイト&ホワイト、ミクロクリーン、PCクリニカ、つぶ塩、GUM等)
- フッ素濃度の高い(フッ素含有900ppm以上)歯磨き粉を使用している(PROSPEC、STAN-GARD等)
- フッ素洗口剤を使用している(ミラノール等)
- 歯科医院にて定期的にフッ素を歯面に塗っている とくになにも使用していない
- 使用している歯磨き粉がフッ素入りかどうかわからない
-
2. キシリトールを使用していますか?
- キシリトールを使用した予防法を経験済みである
- 100%キシリトールガム等を時々使用している (一般に市販されているガム等は100%ではありません)
- 使用していない
全身状態について
-
1. 運動を定期的に行っていますか?
- 毎日運動している
- 週に2~4回運動している
- 週に1回程度
- 月に1~2回程度
- 時々する程度
- ほとんど運動していない
-
2. ストレスについて
- ストレスを毎日感じる
- ストレスがかなりある方だ
- 時々ストレスを感じる
- さほどストレスはない方だ
- ストレスはほとんどない
-
3. 全身疾患について現在あてはまる項目全てにレをして下さい。
- 心臓病
- 糖尿病
- 高血圧
- 肝臓病
- 肝炎
- 脳卒中
- 腎疾患
- ぜんそく
- ペースメーカー
- 血が止まりにくい(血液疾患)
- その他(病名 )
喫煙について
-
1. あなたはタバコを吸いますか?(または吸っていまいしたか?)
- はい
- いいえ
-
2. 1年以上定期的にタバコを吸う人と同居もしくは長時間過ごしたことはありますか?
- はい その人はどれくらい吸いますか?( )本/日
- いいえ
- ※ 1で『はい』と答えた方は以下の質問に答えて下さい。禁煙された方も3以降の質問にお答え下さい。
-
1で『いいえ』と答えた方はこれで質問は終了です。
ありがとうございました。
- 3. 最初にタバコを吸ったのは何歳ですか? ( )歳
- 4. あなたがタバコを吸い始めてから今まで平均すると1日に何本吸いまいしたか? ( )本/日
- 5. 先週タバコを何本吸いまいしたか? ( )本/日
-
6. 禁煙された方に質問します。
禁煙されたのは何歳のときですか? ( )歳
以上で質問は終了です。ありがとうございました。
リスク判定表ができしだいお渡しします。
以上のような診査をもとに治療計画書を作成し、お渡しします。
歯周病の状態や治療の方法などにより違いますが、1~7枚程度の治療計画書をお渡しすることになります。
どの歯がどのような状態であるのか?歯は残るのか?どのような方法があるのか?どのように治療するのか?どれくらい治療期間がかかるのか?将来性はどうか? 治療費はどれくらいかかるのか?等について記載されています。
その治療計画をもとにカウンセリングを行い、患者さん等の希望も合わせ、最終的な治療計画を立てます。
以下には実際の治療計画書の一部を掲載します。
(1)と(2)は全体的な治療の流れと治療必要歯について等の内容であり(3)は口腔内の汚れの付着状態、(4)は自費診療等の治療費の内訳等が記載してあります。
歯周病の治療開始
さていよいよ検査、診断、治療計画まで終わり、歯周病の治療を開始することになります。
どんな治療から開始するかはその状態によりますが、歯周病の治療の基本は感染を起こしている原因物質を除去することです。
しかし、いくら感染物質を除去しても再度感染してしまえばきりがなく、歯周病の進行も止まりません。
簡単に言えば歯ブラシができていない状態でいくら歯周病の治療を行っても絶対に治らないということです。
そこで歯科衛生士が正しい歯ブラシを指導致します。
この段階できちんとしたブラッシング方法を身につけていかないと歯周病の治療は失敗に終わります。
そして次に行うのが歯肉の中に存在する歯石や歯周病菌の除去および歯の根の中にまで感染を起こしている根面の滑沢化です。
このことをルートプレーニング(SRP)と言います。
写真10はルートプレーニングに使用する器具(キュレット)です。
器具の先は刃のようになっており、根面に強固に付着している感染物質を除去するのに適しています。
図4はルートプレーニングの方法を図式化したもので、写真11、12は模型上で実際にルートプレーニングを行っているところです。
次にルートプレーニングを行った部位の再評価を行います。
これは始めに計測した歯周ポケットがどこまで改善したかを再度検査をし、評価を行うことです。
この時点でポケットがおおむね3mm以下になっていれば歯肉の治療は終了ですが、現実問題として初診時にポケットが7~10mm程度存在するとルートプレーニングのみでは完治しません。
ルートプレーニングのみで完治するのは歯の部位にもよって違いますが、初診時6mm以下の場所です。
再評価時にまだ問題が残る部位は歯周外科処置へと移行します。
外科処置と聞くと恐い感じがするかもしれませんが、治療はルートプレーニングでは取りきれなかった感染物質の除去を徹底して行うことです。
この時に骨の吸収が認められる部分は骨を再生させる再生療法を併用することもあります。(下記参考リンク「骨再生治療」参照)
歯周外科処置後再度ポケット検査を行い、治癒状態を診査します。
そしてこの状態を維持できるようにメインテナンスヘと移行します。
そして虫歯の治療や歯がない部分の治療、噛み合わせの治療などはルートプレーニングの前後に行います。
治療期間中に歯が無かったり、噛めない状態はありません。