全身に起こる金属アレルギー

はじめに

歯科治療における金属アレルギーには
「局所性金属アレルギー」と「全身性金属アレルギー」
があります。

局所性金属アレルギー

「局所性金属アレルギー」とは、ピアス 等 直接金属が触れた部位で起こる金属アレルギーのことです。

全身性金属アレルギー

それに対して、「全身性金属アレルギー」とは、歯科治療で使用された金属がイオン化し(溶け出して)体内に吸収された結果、離れた場所である 手 や 足 等に起こるアレルギー反応です。
なぜ 口腔内の金属が 口腔内とは関係のない手や足に金属アレルギーの症状が起こるのかと言いますと口腔内にある金属が唾液 や 口腔内の酸性状態が続いたり、噛み合わせやガルバニー電流が生じることでイオン化し、体内に侵入していきます。

そのほとんどは、便として体外に排出されます。
しかし、3~10%程度は腸管から吸収されます。
そして、腸管から吸収された一部は、汗の中に排出されるのです。
手(手のひら) や 足(足のうら)は、汗腺が多い場所なので、全身性金属アレルギーが起こりやすいのです。

全身性金属アレルギーにさまざまな症状があります。水泡(すいほう)ができたり、湿疹(しっしん)であったり、蕁麻疹(じんましん)のような状態であたり、赤く腫れ上がったりといろいろな病態がありますが、通常こうした症状が現れると「皮膚科」を受診します。
手に湿疹 等の症状がでれば、日常触れる機会のある洗剤 等の化学製品を疑うこともあります。
ステロイド剤を処方されるかもしれません。
赤く腫れ、痒ければ 「虫さされ」 と指摘されるかもしれません。
抗ヒスタミン剤(かゆみ止め)の処方があるかもしれません。
足に湿疹 等がでれば、水虫を疑うこともあるかもしれません。
実際に皮膚科疾患の中には、なかなか原因が特定できないこともあるようです。
しかし、上記のような症状は、金属アレルギーでも発症するのです。
そのため、ステロイド剤 等 を使用し始めた頃には症状は軽減したが、次第に効かなくなったり、症状の改善が認められずに何年も期間が経過した方で口腔内の金属を除去することで症状が改善する場合があるのです。

しかし、金属アレルギーとアレルギー疾患を確実に結びつける根拠は少なく、金属アレルギー検査である「パッチテスト」で陽性と判断された金属を口腔内から撤去しても症状が改善しないケースもあるのも事実です。
金属アレルギーに見識が少ない先生であれば、手や足、全身に生じる 皮膚疾患がまさか 金属が原因と思わないこともあります。
実際に金属アレルギーを疑わない皮膚科医もいるようで、ステロイド剤を何年も使用したが、治らないので患者様ご自身が金属アレルギーではないかと不安になり、歯科医院を受診されるケースもあります。
何年も皮膚疾患で悩まれている方は、一度金属アレルギー検査を受けられてみることも一つの方法です。
現在金属アレルギーと最も因果関係の高いと言われているが「掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)」という皮膚疾患です。