インプラントのための抜歯術:ソケットプリザベーション:その2
今日も昨日の続きになります。
ソケットプリザベーションの2回目になります。
今日は論文の話も多く、ちょと難しい内容になっています。
昨日は抜歯して時間が経過し、骨の吸収が起ると、その後にインプラントを行うのが困難であることを書きました。
また骨が存在しない場合には骨を増大させる治療法 GBR法が必要なことも書きました。
そしてGBR法は簡単な治療ではなく、治療の大変さや治療期間が長くなるといった欠点もあることを書きました。
この骨の吸収が起る原因は他にもあります。
歯周病であったり、 歯の根が折れてしまった場合には 炎症により、歯周囲の骨が吸収してしまっています。
そのため、抜歯後にインプラントを行おうと思ってもできないことがあります。
『インプラントのための抜歯術:ソケットプリザベーション』は抜歯と同時に骨の吸収を少しでも防止するための治療法です。
抜歯と同時に『ソケットプリザベーション』を行うと、その後のGBR法を極力少なく(最小限の治療)する、もしくは回避できる可能性が高くなります。
インプラントを行う場合には抜歯の段階で、すでに治療は始まっているのです。
抜歯の技術もその後の治療を左右する大きなポイントです。
『ソケットプリザベーション』の歴史
『ソケットプリザベーション:socket preservation 』は日本語で『抜歯窩の温存』という意味です。
抜歯窩(ばっしか)と読みます。
『窩』とは抜歯した『穴』のことです。
つまり、歯を抜いた穴をできるかぎり吸収させず、温存することを目的とした治療法なのです。
この治療は1980年頃にはすでに行われていた治療方法です。
『ソケットプリザベーション』の最初の方法は抜歯窩に人工骨を充填するというものでした。
代表的な論文として1985年に Oral Surg Oral Med Oral Pathol誌に発表された Ashmanの報告があります。
この論文によると『人工骨を抜歯窩に入れることにより、抜歯窩の吸収を極力防ぐことができた』
とのことでした。
ただし、現在の『ソケットプリザベーション』はAshmanの報告のような単に抜歯窩に人工骨を入れるという方法ではありません。
現在の『ソケットプリザベーション』については後で解説します。
話は戻りますが、Ashmanの論文と同様の報告は多数あり、『ソケットプリザベーション』の効果は実証されています。
ただし、1990年頃になるとちょっとした変化がありました。
それは骨をもっと積極的に再生させようとする方法が取り入れられたのです。
『GBR膜』の誕生です。
使用方法によっては『GTR膜』とも言います。
『GBR膜』と『GTR膜』については ここで話しますとかなり長くなりますので、ご興味のある方は先に こちら『GBR膜』と こちら『GTR膜』を参考にして下さい。
簡単に説明しますと『GBR膜を用いたソケットプリザベーション法』は従来の人工骨を入れた治療法よりさらに積極的に骨を再生することが可能となってきました。
1997年に J Periodontol誌 に掲載されたLekovicらの報告でも『非吸収性のGBR膜を用いたソケットプリザベーション法』の効果が報告されています。
その後、1999年に Atlas Oral Maxillofac Surg Clin North Am誌でSclarが発表した『 The Bio-Col technique 』があります。
この方法の詳細はこの項の最後に詳しく説明しますが、
抜歯窩を清掃後、人工骨を入れ、抜歯でできた穴をコラーゲンで封鎖し、仮歯にてその穴を密封する方法です。
現在、非常に有効な『ソケットプリザベーション』とされています。
またそれを改良した方法(論文)を2004年にImplant Dent誌 でWangが発表しています。
現在では人工の骨にコラーゲンの吸収する膜(GBR膜)を併用し、歯肉や仮歯で、抜歯窩を閉鎖する方法が多く行われています。
『ソケットプリザベーション』は
1 抜歯窩に人工骨を入れる方法
2 非吸収性のGBR膜を併用する方法
3 人工の骨にコラーゲンの吸収する膜(GBR膜)を併用し、歯肉や仮歯で、
抜歯窩を閉鎖する方法
へと変わっていったのです。
ちょっと難しい話ですが、『ソケットプリザベーション』を行った場合と
行わなかった場合ではかなりの違いがあります。
2003年のIasella(掲載誌:J Periodontol)、
2006年のNevins (掲載誌:Int J Periodontics)の
報告においてのその優位性が報告されています。
明日もこの続きになります。
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大船駅北口歯科インプラントセンターインプラント 歯周病 専門医
神奈川県横浜市にある日本歯周病学会歯周病専門医 国際インプラント学会認定医の歯科医院
I.T.Iインプラント認定医でもあり、GBR法、サイナスリフト、審美インプラント等の難症例も行います。
HPでは治療費(費用)の説明やインプラント症例、無料相談コーナーもあります。