インプラント症例:81回目
11/22(月曜日)です。
このインプラント症例ブログは毎週 月曜日と木曜日にアップしていますが、暫くの間は 月曜日だけになります。(ちょっと忙しいので…すみません)
『 81回目のインプラント症例』になります。
本日のテーマは、「難症例を簡単に治療する!」です。
本日ご紹介する症例は、上顎の奥歯です。
上顎の奥歯と聞いて上顎洞 を思い出すことができた方は、だいぶこのブログを読まれている方ですね。
上顎洞 は、上顎の奥歯にインプラント治療を行うための大きなポイントになります。
本日は、この上顎洞 に焦点をしぼって解説します。
以下が初診時です。
患者様は、上顎右側の奥歯が欠存しており、噛めないとのことで来院されました。
上顎右側が3歯分欠損していました。
ここでいつものように骨吸収の状態を線で書いてみましょう!
青線が骨吸収を起こす前の骨の位置です。
赤線は、現在の骨の位置です。
なんどかこのブログを見られている方は、この線がだいぶ分かってきたのではないでしょうか?
始めて見られる方は、是非この線を覚えておいて下さい。
赤線まで骨が吸収したということです。
さらに分かりやすくするために 骨吸収した部位を赤い領域で塗りつぶして 見てみましょ!
次に上顎洞を線で書いてみましょう!
この緑線の内側は骨ではありません。
ただの空洞です。
そのため、現状では この空洞(上顎洞)の中にはインプラントを埋め込むことはできません。
上顎の奥歯の上方には、この上顎洞という空洞が存在するため
インプラント治療を難しくしているのです。
上顎洞も先程と同様に緑色で塗りつぶしてみましょう!
先に説明したように この緑色の内部は空洞です。
この上顎洞の状態をご理解していただくために
反対側の左側の上顎洞を見てみましょう!
左右の上顎洞の位置を比べると右側の方が下方に下がっているのです。
右側の上顎洞と左側の上顎洞では、その位置が違うのが分かるかと思います。
歯が欠存したために右側の上顎洞が下がってきたのです。
このように比較すると分かりやすいかと思います。
それではなぜこのようなことが起こるのでしょうか?
この上顎洞は、歯がなくなると下方に下がってきます。
実は、もともとこの上顎洞は、もっともっと上の方にあったのです。
上顎洞は、硬い骨のようなものではなく、布のようなものと思って下さい。
例えれば、ハンモックが垂れ下がっているようなものです。
そして、歯がそのハンモックを支えているのです。
歯が支柱になっているのです。
歯が抜けるということは、ハンモックの支えがなくなるのと同じです。
支えがなくなった布(上顎洞)は、重力にしたがって下がっていくのです。
上顎右側の3歯欠損のうち 手前の欠損はある程度骨の高さがありますが、
奥の2欠損については、骨の高さがほとんどありません。
具体的な骨の高さは、以下になります。
3歯欠損のうち 前歯に近い部分は10ミリ以上の骨の高さが存在します。
しかし、奥の2歯欠損の骨の高さは4ミリ以下です。
上顎の奥歯において、予知性のあるインプラント治療を行うためには、
長さ10ミリ以上のインプラントを埋め込むことが重要です。
そのため、現状では予知性のあるインプラント治療は難しいということになります。
それでは、この患者様の治療方法はどのように行ったら良いのでしょうか?
現在の状態のままでインプラントを行うと以下のようになります。
上顎洞が下方に下がってしまったために短いインプラントしが埋入ができなくなります。
インプラントが安定するためには、可能なかぎり長いインプラントを埋め込むことが最も大切です。
そのための確実な方法は、上顎洞の中に骨の移植を行うことです。
この治療方法をサイナスリフト法(上顎底挙上術) と言います。
サイナスリフト法(上顎底挙上術) は、骨の増大を確実に行える治療方法です。
しかし、結構大変な治療にはなります。
移植する骨をどこかから採取することが必要になります。
一般的には、顎の尖端(顎先)や 下顎枝(下顎の奥歯のさらに後ろ側)から取ってきます。
取ってきた骨を粉砕して 人工の骨 と ミックスさせて上顎洞内部に入れるのです。
下顎から採取した骨 と 人工骨 のミックスしたものが骨になるまで 6ヶ月から1年程度待ちます。
そして、骨の増大が確認できたらインプラントを埋入することができるのです。
私自身もこのような治療法も行うことがありますが、できるかぎり避けたい治療です。
その理由として 治療を受ける患者様にとっては負担が大きいからです。
できるかぎり簡単で、
できるかぎり負担の少ない治療、
ということを行いたいと 考えています。
それは もし私自体がこのような治療を受ける立場であったとすれば
できるかぎり大変な治療は避けたいと思うからです。
サイナスリフト法(上顎底挙上術) を行えば、骨の増大は確実に行えますが、
それに対する治療後の腫れが大きくなったり、
骨移植による治療費の負担があったり、
治療期間が長くなります。
患者様ご自身もそうした治療方法はご希望されませんでした。
そこで最終的な治療方法は以下のようになりました。
上顎洞を避けてインプラントを斜めに埋入することにしました。
これをインプラントの傾斜埋入 と言います。
これにより、骨移植を避けることができました。
また、長いインプラントを埋入することも可能になりました。
長いインプラントを埋入することで インプラントの本数も最小限の2本で行うことが可能になりました。
以下がインプラントを埋入した直後です。
このレントゲンに上顎洞の線を記入したのが、以下のレントゲンです。
上顎洞を避けてインプラントが埋入されているのが分かるかと思います。
以下のレントゲンは治療終了時です。
本日の症例を見ていただくと 歯を失うと上顎洞が下がってくることがお分かりになったと思います。
また、骨吸収と上顎洞が下がっているために、インプラントが埋入できないケースでも
工夫(インプラントの傾斜埋入 )をすることで大変な治療を避けることも可能になりますし、治療費の削減にもなりました。
難症例を簡単に治療する!
これも大切なことなのです。
次回のブログは11/29(月曜日)になります。
次回もまだまだ続く『インプラント症例』です。
さまざまケースを紹介しますので、きっと あなたと同じような症例があるはずです。
先週のインプラント手術報告
先週のインプラント手術の中から、
難しいケース であったり、
特殊なケース 等を抜粋して、紹介するコーナーです。
今週も難しいケースが多かったですね。
今週行った手術の中でも難しかったケースをご紹介します。
まず、1症例目です。
上顎左側の奥歯と下顎右側の奥歯に2本づつの合計4本のインプラントを埋入しました。
下顎はさほど難しいケースではありませんでしたが、
上顎では、骨吸収があり骨の高さが非常に少ない状態でしたので、ソケットリフト法 を行い、インプラントを埋入しました。
使用したインプラントは、
アンキロス インプラント と
ストローマンインプラント(ITIインプラント)
でした。
次の症例は、上顎の右側でした。
骨幅の吸収が非常に起こっており、難しいケースでした。
そのため、インプラントを埋入すると同時に骨幅を増大させるGBR法(骨増大法) を行ったり、
OAM(大口式)インプラントシステム を併用してインプラントを埋入しました。
使用したインプラントは、アンキロス インプラント です。
上記の2ケースとも麻酔は静脈内鎮静法(眠っている間に終了します) で行いました。
1回この麻酔で治療を行うと ほとんどの方が次の治療の際にも静脈内鎮静法 をご希望されます。
それだけ治療が楽だったということです。
今後の治療スケジュール
今後の予定としては、
1. 約7〜10日後に“抜糸”、
2. その後、 上顎では約3〜4ヶ月後、
下顎では約2〜3ヶ月後
に型を取ります。
治療費
インプラントモニターですので、1本168.000円(消費税込)になります。
当医院のインプラント治療費用の中には、
治療中のレントゲン撮影や薬代、
土台(アバットメント) の費用、
仮歯 の費用、
治療経過のレントゲン撮影、
セラミック等の被せ物の費用、
スプリッティング法(リッジエクスパンジョン法) 、
OAM(大口式)インプラントシステム 、
GBR法(骨増大法:インプラント埋入と同時の場合) 、
ソケットリフト法 の費用、
静脈内鎮静法(眠っている間に終了します) の費用も含まれています。
治療計画以上の追加費用はありません。
全て含まれた費用です。
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現在、新規にインプラント症例集のページを作成しています。
さまざまなケースを見ていただくことにより、よりインプラント治療についてご理解していただきたいと思います。
そのため、症例を公開しても大丈夫という方(インプラントモニター)を募集しています。
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今回のモニター募集は、できるかぎり多くの症例を掲載したいと思っているため、1歯欠損も募集しています。
何歯欠損でも大丈夫ですので、ご希望がございましたらご連絡下さい。
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これは、静脈内鎮静法 でインプラント治療を行いたいが、麻酔費用がかかるのがネックと考えられ断念されるケースがでてきたためです。
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