どのような状態が難症例か?:その6

3/6(木曜日)です。

今日も前回の続きで、『どのような状態が難症例か?:その6:全身疾患による難症例とは?』になります。

この話は、以前ブログで書きましたが、重要な話なので、再度紹介したいと思います。

重度の糖尿病や、心筋梗塞、脳梗塞、脳卒中を起こしてから6ヶ月以内、ガン(癌)の治療で現在放射線治療を行っている方は基本的にインプラントは禁忌です。

今日は、その中でも『糖尿病』『高血圧』について解説します。

糖尿病はインプラント治療において難症例か?

糖尿病が進行すると抵抗力や免疫力が低下し、歯周病を引き起こしやすくなります。
また、インプラント埋入後に骨とインプラントが接合しないで失敗に終わるケースもあります。
しかし、全ての糖尿病患者様がインプラントが禁忌ということではありません。
血糖値のコントロールがうまくできていれば、インプラント治療も十分可能になります。

絶対的な基準というのはありませんが、
1 空腹時血糖値が150以下(状況により200以下であれば可能)
2 HbA1-cが7%以下(状態により8%以下であれば可能な場合があります)
3 尿ケトン体(―)
4 重篤な合併症がない
であれば、ほぼ問題はないといえます。
しかし、このような数値でも通常の方よりは感染のリスクは高いため、十分な注意が必要です。
また、現在糖尿病で通院されている場合には必ず内科主治医との連絡をとって行えるかどうか決める必要性があります。
*HbA1-c(過去1ヵ月の平均的な血糖値)

インスリン注射や血糖降下剤を服用されている方の注意事項

インプラント治療の難易度や埋入本数により、治療後に食事の制限がある場合があります。
そのような場合、インプラント手術当日の血糖降下剤の服用やインスリンの自己注射に問題を生じることがあります。
つまり、手術後に腫れ等で食事が十分取れなかった場合、いつも通りに決まった時間に血糖降下剤の服用やインスリン注射を行ってしましますと、血糖値が下がりすぎてしまい低血糖症となってしまいます。
そのため、インスリン注射や血糖降下剤を服用されている方は、インプラント相談の段階で必ず担当歯科医師に申告されることが必要です。
そして、
インプラント治療後に腫れがあるのか?
食事制限があるのか?
等の検討をし、
もし、そうしたことが考えられれば、
事前に内科担当医師との打ち合わせが必要になる場合もあります。

高血圧症をはじめとする循環器系疾患は難症例か?

まず始めに、高血圧ってどれくらいなの?
ということから話したいと思います。

高血圧の定義は難しく、年々変化しています。
なぜ変化するのか?
それは最新の予後調査の結果を取り入れるからです。

予後調査結果とは?

例えば収縮期血圧が150mmHgの人がいたとします。
その人が10年後に脳卒中になる確率が 120mmHgの人より2倍高いという研究調査結果が出たとします。
そうすると 脳卒中を防ぐためにもっと血圧を下げた方が 良いということになります。
つまり、上記のように新たな調査データが出れば、高血圧の定義もどんどん変化するわけです。

また、ご自身が血圧が高いと思っていても 実際に血圧を下げるために治療を受けている人はかなり少ないと言われています。

日本では、高血圧の人は約2600万人いるとされていますが、実際に治療を受けているのは2000万人以下と言われています。
つまり、実際の血圧を正確に把握している方は非常に少ないのです。

また、血圧は1日の中でも変動が非常に大きいものです。
緊張等によってもかなり変化します。
そのため、たまたま1回血圧を計った時に低かったとしても それは たまたま だったのかもしれません。
再度計測したら 高かったということもあります。
そのため、当医院においても 患者様ご自身の自己申告の血圧は 正確なものとは思っていません。

一応参考として一般的に使われるのは、WHO(1993)の定義です。
『正常血圧』 は収縮期140未満 かつ拡張期90未満、
いわゆる 上が140未満、下が90未満 ということです。
『境界域高血圧』 は収縮期140以上160未満 拡張期90以上95未満
それ以上を 高血圧としています。
ただし、これは参考値として考えています。
それは『境界域高血圧』 だったとしても非常に緊張が強い方は治療に際し、簡単に20〜30程度血圧が上昇することがあります。
治療前に安全と思われても いざ治療を開始すると高血圧になることもあるのです。
血圧が高い場合には、その他の病気等の兼ね合いを考えていく必要性があります。
『単に血圧がちょっと高いだけだから大丈夫だろう』というわけにはいきません。
外科処置には総合的な判断が必要なのです。

血圧が高いとインプラント治療はできないのか?

血圧が非常に高い場合、インプラント治療は難しい場合があります。
ただし、血圧が高くても内科で治療を受けていて血圧の症状がきちんとコントロールされており、麻酔が出来る状態であればインプラント治療は受けられます。
血圧が高い場合には、糖尿病とは違い治療後の治癒が悪いということではありません。
問題なのは手術中です。
インプラントは手術を伴うものです。
今まで、行ったことがない治療であったり、手術と聞くと 誰でも緊張するものです。
この緊張が血圧の上昇を起こす原因になります。
緊張で血圧が上昇するケースがありますから、高血圧症であることが事前にわかっていれば、 『静脈内鎮静法』 を行ってインプラント治療を行います。

静脈内鎮静法を行うと 治療中のことはほとんど覚えていない状態になります。
眠っている間にインプラント治療が終了することになります。
『静脈内鎮静法』 は、治療に不安を持っている患者さんには最適な麻酔方法です。
方法としては点滴をするように血管内(静脈内)に麻酔液を入れます(流します)。
麻酔が効くまで5〜10分程度です。
後はインプラント治療が終了するまで寝ている状態です。< br> 『静脈内鎮静法』 は、治療中ほとんど寝ている状態で処置が行えますので、緊張等による血圧上昇を抑える効果的な麻酔方法です。
高血圧だからインプラントができないということではなく、安定していれば、それが上昇しないように手術を行うことが大切です。

現在治療を受けていないが、以前血圧が高かったという人が一番危険!

上記のような方は事前に血圧測定を行い、その際に問題があると思われた場合には内科を受診していただきます。
歯科医院で行う血圧測定は 単に現在の血圧の状態をみているだけで、その原因がわかるわけではありません。
高血圧症の方は他の病気も併発している可能性もあります。
現在の状態がまったく分からないという方が 治療を行うにあたり 一番リスクです。
安全な治療を行うためには 的確な検査が大切です。
また、現在高血圧で通院されている場合には、医科担当医との連携により治療を進めることが大切です。

今日は、話が長くなってしまったので、『今週のインプラント手術報告』は休ませていただきます。
これから、仕事で千葉まで行かなければなりませんので…

次回のブログは3/10(月曜日)になります。
次回は、今日の続きで、『腎臓病は難症例?』です。

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大船駅北口歯科インプラントセンターインプラント 歯周病 専門医

神奈川県横浜市にある 日本歯周病学会歯周病専門医 国際インプラント学会認定医の歯科医院
I.T.Iインプラント認定医でもあり、 GBR法 サイナスリフト 審美インプラント等の難症例も行います。
HPでは 治療費(費用)の説明や インプラント症例 無料相談コーナーもあります。