インプラント症例:77回目

10/25(月曜日)です。
このインプラント症例ブログは毎週 月曜日木曜日にアップしていますが、暫くの間は 月曜日だけになります。(ちょっと忙しいので…すみません)
『77回目のインプラント症例』になります。

毎回、さまざまな症例をご紹介していますが、
本日のケースは、インプラントの症例としては 簡単な治療でした。
最も簡単なケースと言ってもいいでしょう。

毎回このブログで紹介する症例は、
骨吸収が大きかったり、
歯周病の問題があったり、
残っている歯に問題があったり
等 さまざまな問題があるようなケースです。

しかし、本日の症例は 歯周病の問題は大きくありましたが、
インプラントを行った部分に関しては、骨吸収もさほどなく
簡単なケースでした。

本日ご紹介する症例は、
「患者様にとって有効な治療法とはなにか?」
というテーマで話しを進めていきたいと思います。

患者様は、下顎の歯がグラグラすることと、歯肉の腫れ…等で来院されました。
以下が初診時のレントゲンです。
スライド01

下顎の前歯部は、グラグラです。
指で引っ張れば、とれそうな状態でした。
スライド02

多くの歯が欠損しており、
上顎は、義歯をご使用されていました。
下顎の奥歯は、左右とも欠損していました。
スライド03

先程説明しましたように 下顎の前歯部は、グラグラしていました。
歯周病による骨吸収 があったからです。
骨吸収が非常に大きかったのです。
いつものように 骨吸収の状態を分かりやすくするために
骨吸収の状態を線で書いたのが以下のレントゲンになります。
青線が骨吸収を起こす前の骨の位置です。
赤線は、現在の骨の位置です。
何度かこのブログをご覧になっていられる方は、この青線赤線が分かってきたのではないでしょうか?
スライド04

さらに分かりやすくするために 骨吸収部位を赤色の領域で表します。
スライド06

下顎の前歯部では、骨吸収が非常に大きいのが分かるかと思います。
スライド07

下顎前歯部の動揺のある4歯は、抜歯と判断しました。
スライド08

上記の4歯を抜歯した後の治療方法として、
1.義歯(入れ歯)
2.ブリッジ
3.インプラント
が考えられます。
今回 選択した治療方法は、ブリッジです。
この理由として、以下のことがあります。

1.患者様は、義歯を使用することはご希望ではありませんでした。

2.インプラント治療を行うには、欠損数が多く、治療費の問題があります。

3.インプラント治療を選択したとしても 骨吸収が大きく 治療が大変になるため、
現状ではインプラントは適していない。

4.今回抜歯しなかった歯も決して良い状態ではなく、
今回抜歯した部位にインプラントを行ったとしても 残っている歯がダメになった場合、
新たにできた欠損部をどうするか?という問題もでてきます。
歯が欠損(抜歯)するたびに インプラントを追加埋入することは
費用といったことを考えても けして良い方法とは言えません。

5.残っている歯自体も多少の動揺があるため、
残っている歯同士を連結させることにより 動揺の減少をはかることが必要であり、
そのためには、ブリッジとした方が良い!

上記のような理由から下顎前歯部は、4歯を抜歯した後 徹底した歯周病の治療 を行い、ブリッジで対応することに決定しました。
ちなみに 今回のブリッジは、保険が適応されるケースですので、
保険を使用すれば、治療費はもっとも抑えることが可能です。
以下の●印の歯を土台として、ブリッジを作製するのです。
スライド09

スライド1

ブリッジを行うとにより、抜歯当日から歯がないことはありません。
抜歯と同時にブリッジの仮歯を作製します。
この仮歯のまま、 歯周病治療 を行い、歯周病の状態が改善した後に型を取り、ブリッジを装着します。
残っている歯の動揺も抑えることができますし、
患者様のご希望である義歯を使用しないことにもなります。
また、抜歯部の骨吸収が大きいため、複雑なインプラント治療は避けることができました。

上顎は、現在使用されている義歯のままで良いとのことでした。
スライド11

上顎は、多数の欠損があります。
義歯が嫌ということであれば、インプラントを埋入し、固定式になることも可能です。
しかし、そのためには、治療も大変になりますし、治療費も高額になります。
どのような治療をご希望されているかは、患者様のご希望によります。

ただし、最も 重要なことは、残っている歯の将来性です。
残っている歯がダメになれば、さらに大きい義歯(入れ歯)を使用することになります。
義歯が大きくなれば、義歯の違和感がさらに大きくなります。
食生活も大きく変わる可能性もあります。
もちろん 歯がなくなることの 患者様のお気持ちも重要なことです。
残っている歯をどれだけ、長く維持させるかが大きな 治療の大きなポイントになるのです。
そのためには、「今 なにをした方が良いのか?」
ということを考えなければいけません。

将来性を考えると 下顎の奥歯の欠損を そのままにしておくことは 良いことではありません。
患者様は、下顎の奥歯の欠損は、義歯を希望されていませんでした。
スライド12

下顎の左右の奥歯は、2歯づつ欠損しています。
スライド13

ここで問題となるのが、欠損部の手前の歯です。
神経がないのです。
スライド1

このブログでも良く解説しますが、神経がない歯は、非常に将来性が悪いです。
前回のブログでも書きましたが、重要な話しですので、今回も解説したいと思います。

神経のない歯はもろく通常の咬む力でも割れてしまうことがあります。
こうした状態を患者さんに説明する時に”木”に例えてお話しすることがあります。
生き生きとした木はたたいたり、蹴ったりしても折れたりすることはありませんが、
枯れた木は折れる可能性があります。
神経を取った歯も枯れた木と同じような状態になります。
神経のない歯は血液供給がなくなるためもろくなってしまうのです。
この続きは、以下をご覧になって下さい。
歯根破折

下顎の左右の奥歯が欠損していると どうしても噛む力の負担は、欠損の手前の歯が加わります。
その手前の歯が神経がないのですから 将来的には問題が起こりやすいことが考えられます。
将来性を考えれば、下顎の奥歯に負担をかけないことが重要なのです。
もし、下顎の左右の神経がない歯が歯根破折 した場合には、義歯なしでは十分に噛むことはできなくなります。
将来性を考えた上でも下顎の左右の欠損部にインプラントを行うことは有効な治療方法です。

理想的には、以下のように下顎の左右奥歯に合計4本のインプラントを埋入することが良いでしょう。
スライド14

しかし、インプラントの本数が多いと治療費が高額になってしまうことが欠点です。
スライド15

そこで最終的なインプラント治療計画は、以下のようになりました。
スライド16

下顎の左右の奥歯に1本づつ行うのです。
これにより、その手前の神経のない歯に負担が加わるのを少なくできます。
もちろん義歯を使用しないで、奥歯で噛めることにもなります。
スライド17

以下が治療が終了した状態です。
スライド18

上顎は、義歯で対応!
下顎の前歯部は、固定をかねてブリッジで対応!
下顎の奥歯は、最小限の範囲でインプラントで対応!
スライド19

これにより下顎の神経がない歯の負担を最小限にできたことが
将来性を高めることにつながるのです。
スライド20

インプラントは単に欠損に埋め込めば良いということではありません。
患者様のご希望(治療費負担 等)や
将来性を考えた上で 最も有効な選択肢があるはずです。

次回のブログは10/31(月曜日)になります。
次回もまだまだ続く『インプラント症例』です。
さまざまケースを紹介しますので、きっと あなたと同じような症例があるはずです。

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治療中のレントゲン撮影や薬代、
土台(アバットメント) の費用、
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