歯周病はいつからなるの?(若くても歯周病になることがある!!):その5

2018年12月24日(月曜日)です。
始めに年末年始の休診案内です。
12月29日(土曜日)〜1月4日(金曜日)まで休診となります。
12月28日(金曜日)の診療は午前中までとなります。
休診中の予約は当院ホームページ より
24時間インターネットオンライン予約
をご利用下さい。
昨日は3名の先生での講演でした。

主催者から参加された方からも好評との意見を伺いました。
講演の提案者である三辺教授からも続きの講演も行いたいとの意見をいただきました。
さて今日も前回の続きで
歯周病はいつからなるの?(若くても歯周病になることがある!!):その5です。
今年(2018年)最後のブログです。
このブログは「大船駅北口歯科  歯周病専門サイト」です。
本日は侵襲性歯周炎(しんしゅうせいししゅうえん)について解説します。
今日はちょっと難しい話しです。
侵襲性歯周炎とは、
若い年齢でも歯周病になってしまう方のことです。
具体的には35歳以下でも歯周病が進行している方です。
歯周病は、歯周病細菌による感染症です。
細菌感染であるということを認識することが歯周病治療の第一歩です。
それでは歯周病細菌はどこから感染するのでしょうか?
歯周病細菌は唾液感染の可能性が高いことが多くの研究により報告されています。
以下は、「夫婦間ので歯周病細菌の伝播」の研究です。
夫婦間で歯周病細菌は移るのか?
ということですね。
怖いですね。
夫から妻へ、
妻から夫へ
歯周病細菌が移るのか?
という研究です。
研究概要
重度歯周炎に罹患し
悪性度の高い歯周病細菌の代表的な細菌であるP.g.菌の感染がみられる
18名の被験者 と その配偶者の歯周ポケットから
P.g.菌を分離し そのDNAパターンを調べました。
研究結果/考察
18名中 10名は 配偶者からも同様のP.g.菌が検出された。
そのうち8組の P.g.菌 の DNAを解析したところ
6組の P.g.菌 は同一のDNAパターンをもっていた。
配偶者間で P.g.菌 の伝播が起こっていることが考えられる。
Van Steenbergen et al
: Transmission of Porphyromonas gingivalis between spouses.
J.Clin.Periodontol.,20(3):340〜345,1993.
やっぱり歯周病細菌は移っているのですね。
それでは、夫婦間以外でも移るのでしょうか?
当然恋人同士であれば移りますよね。
唾液感染ですから。
それではそれ以外の人からは移らないのでしょうか?
歯周病細菌はどこからでも移ります。
口腔内には何百種類もの細菌が存在していますが、
歯周病細菌を大きく分類すると3つに分けられます。
以下は歯科医師なら誰でも知っている図です。
細菌のピラミッドという図です。
1999年にソクランスキー先生が報告したもので、
数ある歯周病細菌をピラミッドのように
積み重ねたもので
ピラミッドの頂点に君臨する細菌が
現在最も悪性度が高い細菌とされています。

Socransky,SS,et al.
Ecological considerations in the treatment of Actinobacillus actinomycetemcomitans
And Porphyromonas gingivalis periodontal infections.
Periodontol 2000 1999;20:341-362.
今日はちょっと難しい内容ですよね。
最も若い年齢であると
小学校低学年頃から感染が起こります。
歯周病細菌の初期感染です。

通常の生活でも
大皿料理を箸でつまんだり、
くしゃみでも移ります。
次に中学生から高校生頃に以下の歯周病細菌が感染してきます。

そして歯周病にとって最も悪性度の高い細菌とされているのが
ピラミッドの頂点にいるレッドコンプレックス(Red Complex)と言われる細菌です。
18歳以降に感染します。

そして20歳第後半で口腔内の歯周病細菌が完成します。
口腔内歯周病細菌は長い年月をかけて構築されるのです。
そして、
患者さんがお口の清掃管理が悪いと
歯周病細菌が増えていき、
歯周病が進行していきます。
ただし、歯周病は1年、2年で急激に進行するわけではありません。
抜歯するような状態にまで歯周病が進行するには、
10年、20年、30年という長い年月がかかります。
歯周病が初期の段階では出血が認められることが時々あるだけで
大きく腫れたり、痛むことはありません。
自覚症状は少ないのです。
歯周病が進行するには長い年月がかかるため
一般的な歯周病の場合、40歳代、50歳代、60歳代以降に
歯周病が進行することで
歯がグラグラしたり、痛み、腫れといった自覚症状が生じ始めて
歯科医院を受診されることが多くなります。
これは一般的な歯周病の進行状況です。
しかし、本日のテーマである
侵襲性歯周炎(しんしゅうせい ししゅうえん)は、
一般的な感染時期より早い段階での歯周病細菌が起こっていることが考えられています。
最初に歯周病細菌の中でも
ピラミッドの頂点にいるレッドコンプレックスという
悪性度の高い3種類の歯周病細菌は18歳以降で感染が生じることを解説しました。
この3種類は、
P.g.菌( Prophyromonas gingivalis )
T.f.菌( Tannerella forsythensis )
T.d.菌( Treponema denticola )
です。
実際に歯周病が進行した患者様からは、P.g.菌、T.f.菌、T.d.菌が多く検出されます。
その中でもP.g.菌は最も悪性度の高い細菌とされ、
年齢に比較して骨吸収が大きく この菌の比率が高い場合
侵襲性歯周炎と診断されます。
P.g.菌は「やばい菌!」ですね。
小学生の口腔内細菌を調べた研究によると
「100人以上の小学生からのP.g.菌の検出率は1%以下であった」
Ooshima T,et al.
Occurrence of periodontal bacteria in healthy children:2-year longitudinal study Community.
Dent Oral Epidemiol 2003;31:417-425.
とされています。
このデータから読み取れることは、
小学生でも1%以下ではあるが、
悪性度の高いP.g.菌が検出されています。
つまり、非常に少数ではあるが、
若年の時点ですでに悪性度の高いP.g.菌に感染している子供がいるのです。
このような子供は、将来的に歯周病の進行が早く、
若い年齢で歯周病によって抜歯する歯が出てくるのです。
お父さん、お母さん、お爺ちゃん、お婆ちゃんが歯周病で問題があったり、
若い頃から歯を失うことがあって
義歯となっている場合には、
悪性度の高い歯周病細菌による感染が起こっている可能性があります。
こうした場合には、日常の生活の中で唾液による感染が子供に移っていくことが十分に考えられます。
今日はかなり難しかったですね。
また来年も歯周病について勉強していきましょう。
P.g.菌を含めた歯周病細菌は
当院でも調べることができます。
ご希望の方は、担当歯科医師にお知らせ下さい。
歯周病細菌遺伝子検査(DNA検査)

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