Full Mouth Disinfection:歯周病細菌除去療法 その2
4/18(月曜日)です。
このブログは、歯周病に関するブログです。
毎週 月曜日 にアップしています。
始めにゴールデンウィークの休診のお知らせです。
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今日のテーマは、『Full Mouth Disinfection:歯周病細菌除去療法 その2』になります。
前回と前々回のブログを読まれていない方は、是非先に過去2週のブログをご覧になって下さい。
•4/11のブログ(Full Mouth Disinfection:歯周病細菌除去療法 その1)
前回のブログでは、
歯周ポケット
ルートプレーニング(歯周病細菌除去療法)
について解説しました。
このルートプレーニング(歯周病細菌除去療法) の進め方として
1回の治療で4〜7歯程度を行うため、
口腔内全体が歯周病の場合には 治療回数は4〜6回になります。
通常、『SRP:スケーリング・ルートプレーニング』は、1週間に1〜2回程度行うペースが最適です。
もし、これが、1ヶ月に1回というようなペースで行った場合には、問題が生じる可能性があります。
つまり、『SRP:スケーリング・ルートプレーニング』によって歯肉の内部がきれいになった(除菌)されたとしても、
他の部位がまだ汚れていれば、『SRP:スケーリング・ルートプレーニング』した部位にも 再度新たな感染が生じてしまう可能性があります。
ある程度短期間で行う必要性があることが『SRP:スケーリング・ルートプレーニング』にとって重要なのです。
これが欠点でもあります。
ここまでが前回のブログの話しです。
本日の話しを始めます。
そこで、1日で 全ての歯周病に感染した歯に対してルートプレーニング(SRP、スケーリング・ルートプレーニング、歯周病細菌除去療法) を行えば、新たな感染を生じないという考え方が このテーマである
『フルマウスSRP法』です。
また、『Full Mouth Disinfection』とも言います。
『フルマウス(Full Mouth)』とは『口腔内全体』という意味で、
『Disinfection』とは『殺菌』という意味です。
口腔内全体を 1日で殺菌しましょうということです。
理論的には優れた治療法です。
しかし、現実的な問題点として 治療時間があります。
先程書きましたように7歯程度のルートプレーニング(SRP、スケーリング・ルートプレーニング、歯周病細菌除去療法) で約30〜60分の治療時間がかかるわけですから、
口腔内全ての歯を行うとすると 120〜240分かかることになります。
こんなに長時間は口を開けていられませんよね!
ただし、考え方としては 優れた方法だと思います。
そのため、60分程度で全体的にルートプレーニング(SRP、スケーリング・ルートプレーニング、歯周病細菌除去療法) が行えるような場合にはこうした方法を行います。
また、インプラントが既に埋入してある患者様で、歯周病が再発して場合には感染防止のため、歯周病に感染している歯は一度に全て行うことにしています。
さて ここで問題となるのが、前々回のブログで紹介したテーマの歯周病治療と菌血症 の話しです。
このブログをご覧になっていない方のために簡単にルートプレーニングと菌血症について解説します。
歯科治療における菌血症とは、
汚れ(細菌)が歯周病治療(抜歯 等の他の歯科治療でも起こります)を行うことにより、身体の中(血管内)に侵入することを言います。
歯周ポケット内部(歯肉の内部)には当然のことですが、血管が存在します。
特に歯周病で歯肉が腫れている方は出血が起こっていることが多いため、歯周ポケット 内部に存在する汚れ(歯石)と血管が触れていることになります。
他の言い方をすれば、汚れ(歯周病細菌)が血管に触れている状態といってもいいでしょう。
こうした汚れ(細菌)が一時的に血管内部に侵入することを菌血症と言います。
特に歯周病治療等の歯科治療を行うとこうした菌血症が起こることが報告されています。
ルートプレーニング では、報告に差はありますが、8〜79%の確立で菌血症が生じると報告されています。
事実ルートプレーニング を行った後(6分後)に採血して調べると血液中から歯周病細菌が発見されることが報告されています。
しかし、このような菌血症は、健康な方であれば1時間もしないうちにいなくなるため、問題となることはありません。
そのため、さほどご心配になることはないのです。
しかし、注意が必要な方もいらっしゃいます。
それは心疾患の方や 糖尿病の方など 全身的にご病気を持っていられる方や 抵抗力が低下している方です。
『フルマウスSRP法:Full Mouth Disinfection』を行うと大量の細菌が粘膜に触れることになるので、通常のルートプレーニングよりも菌血症の確立が高くなります。
こうしたことも『フルマウスSRP法:Full Mouth Disinfection』の問題点と言えます。
つぎに『フルマウスSRP法:Full Mouth Disinfection』を効果的に行うための治療方法について説明します。
『SRP:スケーリング・ルートプレーニング』をさらに効果的に行う方法として
1 『局所的薬物送達療法:LDDS(Local drug delivery system)』
2 『抗菌性グルコン酸クロルヘキシジン含嗽剤の使用』
3 『経口的抗菌薬の投与』
が考えられます。
順番に説明します。
『局所的薬物送達療法:LDDS(Local drug delivery system)』とは、
歯肉の内部(歯周ポケット )に 抗菌作用のある薬を直接注入し、
歯周ポケット 内部の細菌を直接除菌するという方法です。
日本の歯科界では、『塩酸ミノサイクリン』という 薬 が良く使用されています。
『塩酸ミノサイクリン』は、 テトラサイクリン系 の抗生物質で、細菌の発育を抑制する作用があります。
歯周ポケット内部 に薬を入れるだけの治療です。
痛みもありません。
しかし、『局所的薬物送達療法:LDDS』は、歯周ポケット 内部の細菌の数を減らすことはできても、
それ自体が 歯根表面 に付着した『歯石』そのものを取り除くことはできません。
次に『抗菌性グルコン酸クロルヘキシジン含嗽剤の使用』です。
『グルコン酸クロルヘキシジン』という 含嗽剤 は 歯周病細菌 に対して効果が高いものです。
『抗菌性があるクロルヘキシジン』を治療中に使用していただくことにより 口腔内の 歯周病細菌 の 繁殖 を防ぎます。
さらに『経口的抗菌薬の投与』です。
歯周病細菌に効果がある『抗生剤』をある程度の期間(2〜4週間程度)服用していただきます。
抗生剤の効果により、歯周病細菌を少なくするのです。
歯周病の進行程度によりこの抗生剤の効果は非常に高いと言えます。
しかし、全ての抗生剤が歯周病に効果があるのではありません。
効果がある抗生剤は決まっているのです。
有効性の高い薬を使用しなければ意味はありません。
次回のブログは、4月25日(月)になります。
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