金属アレルギーは治るのか?

まず、金属アレルギーが治るのか?
という答えから説明したいと思います。
金属アレルギーが完治することはありません。
しかし、治らないということでもありません。

まず金属アレルギーについて簡単に説明します。
口腔内金属がアレルギーの原因となっている場合、口腔内で使用された金属から溶け出したイオン(金属イオン)が生体内に入り込み、それを生体が異物と認識します(感作)。
そして、次に侵入してくる金属イオンに対して身体を守るために働く機能が「免疫」なのです。
金属アレルギー反応とは、身体に侵入してくるイオン(金属イオン)から生体を守る「防衛監視システム」なのです。

それでは、金属アレルギーは治らないのでしょうか?
いいえ、
金属アレルギーの症状が治ることもありますし、軽減することもあります。
事実、パッチテスト 等で金属アレルギーに陽性反応が認められた場合で、口腔内金属を撤去することでアレルギー症状が治る方もいらっしゃいます。
現在金属アレルギーと最も因果関係の高いと言われているのが「掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)」という皮膚疾患です。
しかし、金属アレルギー と アレルギー疾患 を確実に結びつける根拠は少なく、口腔内金属を撤去した結果、アレルギー症状が治ったとか軽減したということしかいえないのも事実です。
しかし、口腔内金属を撤去することで症状の悪化を防ぐことにつながります。
「なぜ歯科金属はアレルギーを起こすのか?(金属がイオン化しやすい条件)」で詳しく解説してありますが、ここでも簡単に解説します。

金属アレルギーの症状を患者様に説明する際に、以下のように説明をすることがあります。
「コップ」を人間の身体、「水」をアレルギーとなる物質(金属)とします。
「コップ」に「水」を注ぎます。
コップが小さいと 水を少し入れただけでも「水」はすぐに溢れてしまいます。
この溢れた状態が「金属アレルギー」が発症した状態です。
「コップ」が大きければ、ある程度「水」を入れても溢れません。
しかし、「コップ」がいくら大きくても注ぐ「水」の量が 大量に注がれた場合には、「水」はすぐに溢れてしまいます。
「コップ」が非常に小さければ、注ぐ「水」の量が極端に少なくても「コップ」からすぐに「水」が溢れてしまいます。
金属アレルギーが発症する方は、もちろん金属に触れることが前提となりますが、「コップ」つまり、生体の許容量の大きさにもよります。

「コップ」の大きさは、人によって大きく変わります。
子供 と 大人でも違いますし、全身的な状態や生活環境によっても変わってきます。
体調が不良であったり、睡眠不足が続いたり、ストレスが続いたり、食生活が乱れたり、等 さまざまなことで「コップ」の大きさは変わってきます。
もちろん「コップ」を大きくすることも大切ですが、「コップ」に入れる「水」の量を少なくすることが大切です。
「水」を「コップ」に入れない、「コップ」に入れる「水」の量を少なくすることが大切なのです。
つまり、金属アレルギーの原因を身体に入れないことが重要なのです。
そのため、口腔内金属を徹底して少なくすることが症状の改善、軽減になりますし、今以上の悪化を防ぐことにもなります。

金属アレルギーの症状の代表的なこととして「ピアス」の使用による金属アレルギー反応があります。
ピアスは、皮膚を貫通して皮下組織に直接金属部分が触れるため、指輪 や ネックレス といった装飾品によりも起こりやすいです。
もし、ピアスによる金属アレルギーが疑われた場合には当然のことながら「ピアス」の使用を止めますよね。
ピアスから流出する金属イオンが生体内に入り込まないようにすることが最大の防御だからです。
口腔内金属も同様であり、コップ(生体)に注がれる水(金属イオン)を少なくしないと金属アレルギー症状がどんどんと起こってしまうのです。

また、口腔内の金属を除去しても すぐに効果が現れないことがあります。
治療の効果がどれくらいで現れるかということは難しいですが、通常 半年から1年くらいかかります。
中には、口腔内金属を撤去して、1~2ヶ月で改善してくる場合もあります。
もちろん、口腔内に使用されている金属の種類や治療してある歯の数、被せ物の古さ、口腔内にあった期間によっても変わってくるでしょうし、体調不良があったり、睡眠不足が続いたり、ストレスが続いたり等の生活習慣も大きく影響してきます。
また、金属を多く含む食品の摂取によっても その効果は変わってきます。
金属アレルギー検査により高頻度で陽性反応が起こる「ニッケル」は、チョコレート や コーヒー に多く含まれています。
そのため、金属アレルギー症状の改善のためには、口腔内金属の撤去だけでなく、生活習慣、食生活習慣ともに見直すことが必要になるのです。

金属アレルギーを治すためには、口腔内金属を撤去し、オールセラミック や レジン 等を使用した「ノンメタル治療」を行うことは非常に有効ですが、食生活 等の生活習慣を見直すことも必要なのです。
ちなみに 金属アレルギーの方は、タバコは禁止です。
タバコには4000種以上の物質が含まれています。
その中でも ニコチン や タール、一酸化炭素などは、有害物質としてご存知のことと思います。
タバコにも「ニッケル」をはじめ金属アレルギーの原因物質が含まれているため、禁煙が必要です。