審美 [オールセラミック/金属アレルギー外来]
金属治療の問題点その1:なぜ金属の詰め物は取れるのか?
虫歯治療で行う 金属製詰め物の問題点!
金属の詰め物が 取れたり、
金属の詰め物を行っている歯が欠けてしまったり
という経験がある方は、非常に多いのではないでしょうか?
また、金属製の詰め物が取れた時に
「中で大きく虫歯になっていた!」
「神経を取ることになるまで虫歯が進行していた!」
という経験をされたことがある方も 多くいらっしゃるかと思います。
一度虫歯の治療を行った歯が 再度虫歯になることを
「2次カリエス」と言います。
実際の2次カリエスについて見てみましょう!
以下の写真では、
金属製の詰め物を行っている歯が欠けたり、
歯と金属製の詰め物の境目から黒くなっており、
明らかに内部で虫歯が進行していることを疑わせる状態が分かります。
なぜこのようなことが起こるのでしょうか?
なぜ金属製の詰め物の下(中)で
虫歯が進行(2次カリエス)してしまったのでしょうか?
こうした原因 および 金属治療の問題点について解説したいと思います。
金属製の詰め物の問題点
まず金属製の詰め物の問題点について解説していきます。
もちろん 金属製の虫歯治療には利点もあります。
保険が適応される、
材料自体の強度が強い
等 の良い点もあります。
しかし、金属製の詰め物の治療は、過去の治療であり、
問題点があるのも事実です。
金属製の虫歯治療を行った後、患者さんにとって問題として大きいのが、
詰め物の脱離(取れてしまうこと)です。
始めに記載した
「金属製の詰め物が取れる!」
「取れた詰め物の中で虫歯が進行している!」
といったことは
一度治療を行った歯が 再度治療が必要になるだけでなく、
さらに歯を削る量が増えたり、
神経を取ることになったりする可能性もあります。
虫歯治療は、虫歯になった感染部分を取り除き、
削った穴を 歯以外の修復材料(金属製 等)で埋めることです。
当然のことながら 削った歯は再生しませんので…
そのため、削った穴を埋めた修復材料が取れてしまったりすることは
当然のことながら 良いことではありません。
現在の歯科医学では、一度虫歯になった歯を治療する方法で
絶対(100%)に再度虫歯にならないという治療法はありません。
そのため、現時点で可能なかぎり再度虫歯(2次カリエス)にならないようにするための治療が大切になります。
そのためには、今まで行われてきた金属性の詰め物の問題点についてきちんと理解していくことが必要になります。
もちろん 再度虫歯にならないためには、治療方法だけでなく、
患者様自身の食生活、口腔清掃管理 等
患者様ご自身で改善しなければいけないことも多くあります。
また 歯並び 被せ物の精度 改善しなければならない問題もあります。
金属製の素材を使用した 虫歯治療には 大きく分けて以下の問題点が考えられます。
従来の治療法では 金属製の詰め物は、歯とくっついているわけではない!
金属と歯は、まったく違う物質である!
a.熱膨張係数が違う
b.硬さが違う
まず1番目の問題点から解説します。
従来の金属材質を使用した虫歯治療は、セメントという素材でつけていますが、
厳密に言えば、歯と金属が接着しているわけではありません。
従来の虫歯治療に使用する金属製材料は、歯と合わさっているだけなのです。
これを「合着」と言います。
また、後で解説しますが、歯と詰め物がしっかりとくっついている状態を「接着」と言います。
金属を合着するセメントを大雑把に解説すると
家の周囲にある外壁を作る時に
ブロックを積み上げる行為と同じです。
ブロック と ブロックの間に セメントという泥をはさみ込み、
固めてブロックを維持させる行為と同じようなことです。
ブロック間のセメントが固まることで、壁を維持しているのです。
歯科で使用する金属の詰め物 や 被せ物も同様であり、
金属と歯との隙間にセメントを介在させ、
セメントが硬化することで、金属性の詰め物が取れないように
維持しているのです。
決して金属と歯がくっついているわけではありません。
歯を削った穴に 金属性の詰め物を入れ、
セメントという泥で固めているのです。
固まったセメントが崩壊すれば、取れてしまうのです。
このことを理解すると
なぜ 金属製の詰め物が取れるのか?
なぜ 一度行った虫歯治療が再度虫歯になるのか?
金属製の詰め物 等が取れた時、中で虫歯が進行しているのは何故か?
ということが分かります。
金属製の詰め物の脱落過程
以下では、金属製の詰め物の脱落過程の一つを図説します。(一つの例です)
図1は歯の基本的な構造です。
図2は虫歯になった状態です。
むし歯になっている部分を削りとることで、感染をこれ以上進まないようにします。
図3は、虫歯を取り除き、詰め物を装着するための穴を削った状態です。
穴に金属製の詰め物を行うため、便宜上 下図のような四角い形に削ることが
必要になるのです。
従来の金属製の詰め物の治療は、セメントという材料を歯と金属の隙間に介在させて外れないようにする必要性がセメントは接着力がないので、詰め物が外れないようにするためには 歯を「はめ込み型」に削る必要がありました。
図4は、型を取り、後日 削った穴に金属の詰め物を装着している状態です。
図5は、金属製の詰め物をセメントでつけたところです。(合着:従来の治療方法)
この治療法は、金属製の詰め物をセメントという泥のようなもので動かないように固めた状態です。
金属製の詰め物の周囲の赤色が歯と金属の隙間に詰めたセメントとお考え下さい。
金属と歯では構造、性質とにも大きく違うため、さまざまな問題が起こります。
その一つが「熱膨張係数の違い」です。
金属は熱膨張係数が大きいので、飲食による温度差で膨張 収縮を繰り返します。(図7、図8) また咬合力によっても歯や金属に変化が起こります。
図9:金属が膨張収縮を繰り返すことでセメントが崩壊し、セメントが溶け出し、隙間ができる。(セメントが砕けて、口腔内に流失する)
図10:隙間にばい菌(虫歯菌)が入り込む。
図11:詰め物の中ではばい菌が増え、虫歯になってしまう。金属製の詰め物の下では虫歯菌が増殖する。
図12:ついに 詰め物が取れてしまう。
こうしたことが詰め物が取れてしまう一つの原因と言えます。