インプラントモニター:その11

2010年 1/7(木曜日)です。
今年最初のブログです。
今年最初のブログも『インプラント症例』からになります。
本日の症例は、初診が15年程前の患者様です。
私がまだ大学病院の歯周病科に勤務していた頃の患者様です。
私が始めて担当した時には、すでに 非常に大きな問題を抱えていました。
なにが問題であったかと言いますと、
噛み合わせ です。
患者様は、長年 歯科治療を繰り返してきた方です。
ほとんどの歯は 神経がなく、
ほとんどの歯は 被せ物を行っている歯 でした。
何度も治療を繰り返すうちに 噛み合わせが低くなり、問題を生じていました。
それでは、いつもどおりにレントゲン写真から見ましょう。
以下は、初診時のレントゲン写真です。
15年前の大学病院時代は、現在使用しているようなデジタルレントゲンではなかったため、
フィルムのレントゲンを使用していました。
フィルムのレントゲンは、劣化するので 写りが悪いですが、ご覧になって下さい。
スライド01
このレントゲンを解説します。
患者様は、噛み合わせに大きな問題がありました。
レントゲンで分かる範囲で説明します。
先にも解説しましたように 患者様の口腔内は
多くの被せ物を装着してありました。
その被せ物自体に問題があったのです。
問題点は多くありますが、最も大きな問題として、
奥歯の被せ物の高さです。
高さが低いのです。
奥歯の高さが低いため、噛み合わせがどんどんとズレてきていたのです。
以下のレントゲンは、現在の噛み合わせを赤線で表したものです。
赤線の奥歯付近が、下がっているのが分かるかと思います。
噛み合わせが低いのです。
スライド02
本来の噛み合わせは、以下のレントゲン写真のように
青線のように真っ直ぐになります。
スライド03
上のレントゲン写真のように
噛み合わせが低くなっているため、さまざまな問題が起こっています。
上顎の前歯には ブリッジが装着してあります。
奥歯が低くなっているため、前歯の噛み込みが強くなり、負担がかかっているのです。
また、他にも問題は多くあります。
神経がない歯が多いのです。
神経のない歯については、このブログでも良く解説しますが、神経のない歯は脆く ダメになる確立が非常に高いのです。
この詳細は以下をご覧になって下さい。
神経のない歯は、歯根破折しやすい!
以下のレントゲンでは、神経がない歯を●印で書いてあります。
また、ブリッジの部位、義歯(入れ歯)の土台となっている歯も書いてあります。
スライド04
まず、右下の奥歯に注目して下さい。
右下の歯は、神経がない歯でブリッジを行っています。
これは、本当にリスクが高い治療です。
ブリッジは、土台となる歯に負担が加わる治療です。
土台となる歯が健康な状態であれば、問題は起こりにくいのですが、
ブリッジの土台となる歯が 神経がない歯であった場合には、
かなりのリスクとなります。
初診から数年して 右下の神経のない歯は、歯根破折 したのです。
歯根破折した場合には 抜歯です。
抜歯後の治療方針として、患者様はインプラント治療を選択されました。
抜歯後にインプラントを埋め込んだのが以下のレントゲンです。
スライド05
右下にインプラントを埋入後は、同部分は暫く仮歯で経過を見ました。
その理由として、インプラント部分に早急に被せ物を作成しても良いのですが、
噛み合わせに大きな問題があったため、
可能であれば 口腔内全体の噛み合わせの改善を行いたいと考えたのです。
また、今回抜歯した歯以外にも ダメになるリスクが高い歯があったため、
そうした歯をどうするのかを決める必要性もあったためです。
右下にインプラントを埋入後に仮歯で経過をみているうちに
問題が起こったのです。
先程説明した歯根破折 が次々に起こったのです。
スライド1
まず始めに上顎左側の奥3歯が歯根破折しました。
スライド1
次に下顎左側の奥1歯が歯根破折しました。
スライド01
その後、上顎の右側奥2歯が歯根破折しました。
以下は、先に歯根破折した上下顎左側にインプラントを埋入した後です。
スライド1
この段階で噛み合わせの改善を行っています。
元々低かった奥歯は、インプラントの被せ物で高さを回復させて治療しました。
この後、上顎右側のインプラントになります。
スライド07
このレントゲンは、デジタルレントゲンです。
その前のレントゲンと比較するとかなり違うのが分かります。
デジタルレントゲンは、現在の大船駅北口歯科で撮影したものです。
噛み合わせは、真っ直ぐになりました。
また、下顎左側の奥2本のインプラントは、初診時にすでに治療をしてあったインプラントです。
他歯科医院で行ったものですが、そのインプラントもそのまま利用しています。
下顎左側のインプラントは、私が使用しているストローマンインプラント(ITIインプラント) と同じメーカーですが、かなり古いタイプであり、現在は使用されていません。
以下のレントゲンは、
上が治療前の奥歯が低い状態です。
赤線が噛み合わせを表しています。
下が治療後の高さを回復させた状態です。
青線が噛み合わせを表しています。
治療によりだいぶ改善されたことが分かるかと思います。
スライド08
さて レントゲンで見ると簡単に見えるかもしれませんが、
ここまで治療を完了するまで非常に長い治療期間がかかりました。
正確には、治療期間が長かったのではなく、
初診時にすでに多くの問題を抱えていたため、一度に治療したのではなく、
経過を見ながら治療を追加していき、現在に至ったということです。
理想的に言えば、
初診時から一気に現在の状態まで治療を行うことも可能ですが、患者様の負担 等もあるため、現実問題として 全てを一度にまとめて行うことは難しいことです。
今回ご紹介した患者様は、私が手がけたインプラント治療の中で治療完了までに最も長い期間がかかっています。
しかし、その治療期間中は 歯がなかったりするわけではなく、仮歯を利用しますので、食事や審美的なことに問題は生じません。
初診が15年前で、
始めてインプラントを行ったのがその5年後、
その後次々に歯根破折を起こし、
最終的に現在の状態になったのが、5年程前です。
現在は、半年に1回のメインテナンスにきちんと通院していただいています。
メインテナンス期間も5年になりました。
現在の状態は非常に安定しており、
まったく問題はありませんが、
今後問題が起こるとすれば、上顎左側の前歯です。
この歯は神経がないため、折れたりする可能性があるからです。
神経を取らないこと
これが歯を長く保たせる一つの条件なのです。
今週(1/5〜6)のインプラント手術報告
今週(昨日)のインプラント手術の中から、
難しいケース であったり、
特殊なケース 等を抜粋して、紹介するコーナーです。
今年初日(最初)のインプラント症例は、下顎の奥歯でした。
下顎の奥歯に2本のインプラントを埋入したケースです。
他歯科医院にて奥歯を抜歯された方です。
ただし、できれば 当医院で抜歯していただきたかったのが実情です。
その理由として、
インプラント治療をご希望されている場合、抜歯時点ですでに治療が始まっているのです。
抜歯すると、歯があった『穴』があきます。
時間の経過とともに、この『穴』はふさがってくる(閉じる)のですが、骨が吸収して ふさがってくるのです。
つまり、抜歯した部位(顎の骨)は 時間の経過とともに 吸収していく傾向にあります。
骨が吸収すると その後に行うインプラント治療に大きな問題を生じます。
そのため、抜歯と同時に骨が吸収しない方法を行うことが重要なのです。
この方法をソケットプリザベーション と言います。
この方法を抜歯と同時に行っておくことが その後のインプラント治療を大きく左右します。
今回の患者様の場合、単に抜歯のみ行っていたため、どうしても骨の回復程度に問題がありました。
そのため、インプラントを埋め込むための 骨幅 や 骨の高さ がかなり少なくなっている状態でした。
今回は、インプラントを埋入と同時に骨増大治療(GBR法)を行いました。
それでは、骨増大治療(GBR法)を行えば、骨はいくらでもできるかと言いますと そうではありません。
GBR法(骨再生治療)には限界 があるのです。
今回使用したインプラントは、ストローマンインプラント(ITIインプラント) が2本です。
今後の治療スケジュール
今後の予定としては、
1. 約7〜10日後に“抜糸”、
2. その後、 約3ヶ月後に型を取ります。
今年も可能なかぎり インプラント手術報告も行いたいと思います。
次回のブログは1/11(月曜日)になります。
次回も『インプラント症例』になります。
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