インプラント症例:65回目
8/2(月曜日)です。
このインプラント症例ブログは毎週 月曜日と木曜日にアップしています。
『65回目のインプラント症例』になります。
本日は始めに夏期休暇についてのお知らせです。
8/9(月)〜8/16(月)まで休診となります。
緊急の場合には、メールでご連絡下さい。
info@sugiyama-d.sakura.ne.jp
本日の症例は、前回の続きになります。
前回のブログを読まれていない方もいらっしゃるかと思いますので
始めに前回のブログから始めたいと思います。
前回のブログを読まれた方は飛ばして見て下さい!
このブログで多い症例の一つとして、上顎の奥歯に骨吸収を起こしているケースがあります。
インプラントは、チタンでできたネジを骨の中に埋め込む治療です。
そのため、骨の状態(骨吸収程度)によって
インプラント治療が 適しているか?
インプラント治療が 適していないか?
があります。
骨吸収が大きく起こっている場合には、インプラント治療は困難になります。
本日ご紹介するケースは、上顎の左右奥歯に非常に進行した骨吸収があった方です。
骨の高さは、1〜2ミリ程度しか存在しておらず、
通常のインプラント治療では不可能だったケースです。
本日の症例の話しを紹介する前に 骨吸収 と 上顎洞 という話しからしたいと思います。
これが分からないと今回の症例をご理解するのは難しいのです。
( 現在基礎ブログでもこのようなケースの話しをしています )
上顎の奥歯の上方には『上顎洞』という空洞があります。
上顎の奥歯の上に存在する骨の空洞になっている部分のことです。
多くの場合、歯が存在すると この上顎洞 と 上顎の骨の距離は一定の幅がありますが、
歯周病等で骨が吸収してしまうと 上顎 と 上顎洞との距離が薄くなってしまいます。
その結果インプラントを行えないことがあります。
以下は、上顎洞の図です。
A 歯がある状態で上顎洞までの距離があり、十分な骨の高さがある。
B 歯を失った後でも上顎洞までの距離があり、十分な骨高さがある。
インプラントを行うのに問題はない。
C 歯周病等で骨が吸収してしまったために上顎洞までの距離がなくなり、
インプラントを行うのに十分な骨の高さがない。
上顎にインプラントを希望する患者さんの多くは(60%以上)このような状態である。
このように歯を抜いた場所は年々やせて、場合によっては1〜2mm程度の幅しかない方もいます。
それでは、参考例のレントゲンを見てみましょう!
まず、骨吸収がさほどなく、上顎洞まで十分な距離があるレントゲンです。
以下のレントゲンの赤線は、骨の吸収状態を表しています。
緑線は、上顎洞です。
赤線と緑線の間に一定の幅(距離)があります。
次に骨吸収があり、上顎洞も下がっている状態です。
この場合、赤線と緑線の間にはほとんど隙間がありません。
こうなると治療は難しくなります。
それでは、どの程度骨吸収があると問題なのか?
という具単的な数値について解説します。
一般的に骨吸収が少ない状態とは、上顎洞と骨との距離が10ミリ以上の場合です。
骨の高さが10ミリ以上あれば、
長さ10ミリのインプラントを埋入できるということです。
これ以下の長さのインプラントでは、上顎で安定したインプラントは行えません。
骨の吸収と上顎洞の存在により治療は大きく変わってくるのです。
骨の吸収が大きい場合には、骨移植という治療法を行います。
この治療をサイナスリフト法(上顎底挙上術) と言います。
この治療法を行えば、骨吸収が大きくても ほとんどのケースでインプラント治療が可能になります。
しかし、こうした方法は非常に大変なのです。
それでは、上顎の奥歯において骨吸収が大きく、骨の高さが10ミリ以下の場合には
必ず骨移植を伴うサイナスリフト法(上顎底挙上術) が必要かと言いますと
そうではありません。
5ミリ程度骨の高さが存在すれば、骨移植を伴うサイナスリフト法(上顎底挙上術) を行う必要性はありません。
骨の高さが5ミリ程度残っていれば、ソケットリフト法 という比較的簡単な治療法で行えます。
骨の移植もありません。
今回ご紹介する症例は、上顎の左右奥歯が欠損しており、
骨吸収が著しく起こっていました。
骨の高さも1〜2ミリ程度しかありませんでした。
1〜2ミリですよ。
大変なことです。
それでは、今回の症例の初診時レントゲン写真をみましょう!
上顎の右奥歯が3歯欠損、
上顎左側の奥歯が4歯欠損していました。
長い間欠損のままになっていました。
義歯(入れ歯)は、作製したことがありましたが、
違和感が強いため、使用できませんでした。
こうした方は多いですね。
最近になり、上顎右側の奥歯がグラグラしてきたため、
さらに歯を失うことに不安を持ち インプラント治療を希望して来院しました。
いつものように 骨吸収の状態を分かりやすくするために
骨吸収の状態を線で書いたのが以下のレントゲンになります。
青線が骨吸収を起こす前の骨の位置です。
赤線は、現在の骨の位置です。
さらに分かりやすくするために 骨吸収部位を赤色の領域で表しします。
奥歯では、骨の吸収が非常に進行しているのが分かるかと思います。
次に本日の最初にも解説しました上顎洞です。
以下の緑線は上顎洞という空洞です。
緑線の内側は空洞なのです。
骨ではありません。
ただの 穴 です。
これも さらに分かりやすくするために、上顎洞 を緑色で表示します。
骨吸収の状態、
上顎洞の存在から
上顎の奥歯では、インプラントを埋入するための骨の高さがほとんどないことが分かると思います。
具体的には、上顎の右側では骨の高さが1ミリ程度、
上顎の左側では骨の高さが2〜3ミリ程度しか存在しません。
この状態では とてもインプラントを行うことはできません。
いつも このブログでは、骨吸収が起こっている症例の場合、
骨が存在する部位にインプラントを斜めに埋入するインプラントの傾斜埋入 や
カンチレバー 、
ソケットリフト法
等で対応することが多いのですが、これほど骨吸収が進行している場合には こうした方法ではインプラントを埋入すること自体が無理になります。
奥歯にインプラント治療を行うためには、上顎の右側に3本、左側に4本のインプラントが必要になります。
しかし、そのためには どうしても骨移植が必要になります。
先にも解説しましたサイナスリフト法(上顎底挙上術) です。
そしてインプラントを埋入するのです。
患者様は どうしても義歯は嫌であり、
どうにかインプラント治療を行いたい
との強いご希望があったため、
サイナスリフト法(上顎底挙上術) を行うことになりました。
しかし、ここでさらに問題があります。
骨移植といっても 今回の症例のように これだけ骨吸収が起こっていると
移植する骨の量も ものすごい量が必要です。
通常 骨移植を行う場合、移植する骨は、口腔内から採取します。
一般的には、
顎の尖端 とか
親知らず周囲 とか
です。
しかし、口腔内からとってこれる骨の量には限界があります。
今回の症例のように骨移植する量が多い場合には、
腰骨から採取します。
しかし、腰から骨をとってくる場合には、入院が必要であり、
患者様の負担も大きいのです。
また、先程のように
上顎右側に3本、
上顎左側に4本
のインプラントを埋入することは、費用的にも高額になってしまいます。
患者様のインプラント治療の希望、
治療費の削減、
治療負担の軽減
等を考えて最終的なインプラントの計画は以下のようになりました。
最終的には 奥までインプラントを行わない計画になりました。
こうすれば、治療費の負担軽減になるだけでなく、
治療に対する身体的な負担も可能なかぎり少なくなります。
次に問題となったのが、上顎左側の奥歯です。
以下のレントゲン写真の歯がグラグラしていたのです。
将来性のないこの歯は、抜歯が必要です。
そして、以下のように上顎右側の奥歯には3本のインプラントを埋入します。
しかし、患者様のご希望としては、
上顎右側のこの歯を抜歯すると 審美的に問題が生じるため、すぐには抜歯したくないとの希望がありました。
そのため、現時点ではこの歯は抜歯しないことにしました。
後で抜歯するのです。
しかし、これが 後から問題となったのです。
最終的には、最小限の範囲でサイナスリフト法(上顎底挙上術) を行い、
最小限の範囲でインプラントを埋入することになりました。
以下は、骨移植を行った後です。
少し分かりづらいと思いますので、術前と比較してみましょう。
もっとわかりやすくするために、さらに拡大します。
まず、上顎右側です。
治療後には、移植した骨が白っぽく見えると思います。
以下の白い矢印が 今回移植して骨が増えた部分です。
このレントゲンに上顎洞と骨(吸収した状態)の線を書いたのが以下です。
骨が大幅に増大したのが分かると思います。
次に上顎左側です。
奥の方に移植した骨が白く見えると思います。
同様に 以下の白い矢印が 今回移植して骨が増えた部分です。
このレントゲンに上顎洞と骨(吸収した状態)の線を書いたのが以下です。
ここまでが前回の内容でした。
以下は、その続きになります。
サイナスリフト法(上顎底挙上術) を行い、
骨ができる(増骨する)まで約半年待ちました。
そして、インプラントを埋入したのです。
インプラントを埋入したのが以下のレントゲンになります。
さて、次に行うことは上顎右側の奥歯の抜歯です。
この歯は始めの時点でグラグラしていたからです。
最初に抜歯しなかったのは、抜歯してしまうと 見た目に問題が生じるため、
患者様が抜歯をご希望されなかったためです。
今回のサイナスリフト法(上顎底挙上術) は、治療期間が非常に長くかかるため(予定では半年から1年近くの予定でした)、審美的に問題があったので抜歯は避けていました。
インプラント埋入後、約4ヶ月した時点で、
骨とインプラントが結合(くっつく)したため、抜歯となったのです。
抜歯と同時にインプラントに仮歯を装着します。
これにより歯がない期間がなくなります。
次に行う治療は、抜歯した部位にインプラントを追加埋入することです。
しかし、ここで問題が起こったのです。
これから抜歯した部位が治るまで待って、
さらにインプラントを追加埋入すると
時間(期間)がかかることと
追加のインプラントの費用がかかること
こうしたことから インプラントを追加しないで治療が行えないか
ということになりました。
最終的な治療計画として、上顎右側は以下のようなプランになりました。
抜歯部位にはインプラントを埋入せずに
歯を1歯分延長させる方法です。
これはカンチレバー という方法です。
こうした方法で問題がないか ということを 仮歯で経過観察を行い、
最終判断を行いました。
以下が治療後です。
全ての治療には、同じ計画にならないのが臨床です。
理想的には、奥までインプラントを埋入する治療計画が最も優れています。
以下のようなプランです。
しかし、正しい治療計画というのは、私達歯科医師だけが考えるものではありません。
患者様のご希望を含め考えていかなければ、
実際に実行できる計画にはなりません。
今回は最終的に必要最小限のプランになったのです。
本日ブログはこれで終わりです。
ブログのシステム上、これ以上の文字数はアップできないようです。
始めてです。
今回のブログはだいぶ長い話しになりました。
次回のブログは8/5(木曜日)になります。
次回もまだまだ続く『インプラント症例』です。
さまざまケースを紹介しますので、きっと あなたと同じような症例があるはずです。
今回のブログはだいぶ難しい症例になりましたので、
次回のブログは、できるかぎり簡単なケースを紹介します。
文字数制限があるため、今週のインプラント手術報告はお休みさせていただきます。
今週も多くの手術がありましたが、アップはまた次回にします。
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