細菌の話し:その1

2012年 1/ 9(月曜日)です。
今年最初の歯周病ブログです。

このブログは、歯周病に関するブログです。
毎週月曜日 にアップしています。

今日のテーマは、『細菌の話し:その1』になります。

今日から始まる話しは、少し難しい内容です。
細菌の話しです。

なぜこのような話しをするのかと言いますと
虫歯 や 歯周病 は、細菌がいなければ起こらない病気であり、
この細菌をコントロールすることが予防につながるのです。

それでは いくつかの項目に分けて始めます。

1.私達の身体は細菌だらけ!
人間は一生の中で無菌の状態でいられるのは胎内で過ごす期間だけです。
出生するとすぐに細菌感染を起こし、生体の各所で菌の増殖が始まります。
一度細菌感染した部位は一生排除されずに定着するものも少なくないのです。
つまり 私達の生体は細菌と共存している状態なのです。

2.歯周病は感染症!
歯周病細菌はどこから感染すると思いますか?
例えば、侵襲性歯周炎(しんしゅうせいししゅうえん)の原因菌とされる
Aa菌(Aggregatibacter actinomycetemcomitans)は、
大人から大人へと感染することはなく、
まだ 永久歯が生えそろわない 10歳頃に大人から子供へ感染することが研究により分かっています。
                             * Slos J:Scand J Dent Res,1976

これは子供の口腔内は まだ細菌のグループが安定していないため、外来から感染を起こします。
また、抗生剤を長期服用していた場合などは、口腔内の健康な細菌グループがいったんいなくなるため、新たに細菌の環境がそろう前に細菌に感染する可能性があります。

 * 細菌の名称はよく変わります 上記は2011年時点での名称です。
   旧名は、Actinobacillus actinomycetemcomitansです。
 * 1999年以前に思春期前歯肉炎、若年性歯周炎、急速進行性歯周と
  呼ばれていたものを まとめて侵襲性歯周炎と分類しています。

その他の歯周病細菌についても夫婦間 や 親子間 で感染していることが
多くの研究で明らかにされています。
                       * Greenstein G, et al:J Periodontol,1997
                       * Petit M D A,et al:J Periodont Res,1993

唾液を介した感染が主なルートであれば、歯周病治療後の再感染を防止したり、歯周病細菌を持っている人が そうでない人に移さないようにすることは重要です。
歯周病治療を行う場合には、ご本人の治療を行うだけでなく、生活を共にしている家族全ての人の治療が必要ということになります。

3.口腔内には細菌がいっぱい!
人間の身体にはさまざまな部位で細菌が生息しています。
口腔内に生存する細菌の種類500〜700種類と言われています。

口腔内に存在するデンタルプラーク中の細菌はものすごい数です。
デンタルプラーク1mg当たりの細菌の数は1億個も存在します。
デンタルプラークは細菌の塊なのです。
「えーそんなに細菌がいるの?」
と思われるかと思います。
しかし、口腔内に生息する細菌が全て問題なのではありません。
正常細菌叢(せいじょう さいきんそう)と言われる細菌は、健康な身体に住み着く細菌です。
これらの正常細菌叢は、外部からの絶えまなく侵入してくる病原微生物からの攻撃を防御しているのです。
細菌が存在することは決して悪いことではないのです。

外出から帰ってきたり、食事の前に手を洗うことは非常に有効です。
しかし、これにより細菌がいなくなるわけではありません。
その理由について解説します。
例えば、皮膚に存在する常在細菌は、1 cm2当 たり10.000個存在しています。
これらの常在細菌は、適切な手洗い(水、石けん等の使用)で90%以上 除去されます。
しかし、除去される細菌は表層のみであり、毛嚢(もうのう)や汗腺(かんせん)の深部に定着している細菌は容易に除去できないため、数時間経つとこれらの細菌が増殖し元の状態に戻ってしまいます。

ただし、これが悪いわけではありません。
常在細菌は常にバランスを保っており、特定の細菌が増えないようにコントロールされているのです。
しかし、衛生面を極度に意識し、過剰な消毒を繰り返すことによりそのバランスが崩れて悪影響を及ぼすこともあります。

口腔内の細菌もそうです。
先程説明したように 口腔内の歯垢(しこう)には、1mg当たりの細菌の数は1億個も存在します。
唾液には、1ml当たり1.000.000〜10.000.000.000個 存在しています。
これは正常な状態なのです。
問題となるのは、細菌のバランス種類 なのです。

少し難しかったですね。
しかし、細菌を知ることが、虫歯 や 歯周病 を知ることになります。

次回のブログは、1月16日(月)になります。
次回も本日の続きです。

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