リアルタイムPCR法:細菌検査によるリスク診断:その5
リアルタイムPCR法の5回目です。
今日はちょっとマニアックな話になりますが、歯周病細菌の種類とその性質について解説したいと思います。
ここでは歯周病細菌の種類とその性質について解説します。
かなり難しい話しですので、かなりな『歯科マニア』以外の方はこの項目を飛ばして次の項目から御覧下さい。
歯周病細菌検査で調べる細菌は以下のものがあります。
1 A a菌 : Actinobacillus actinomycetemcomitans
グラム陰性 通性嫌気性 桿菌
侵襲性歯周炎の病巣から比較的高率に検出されます。
健康な方からはあまり検出されません。
若年者で重度の歯周病の場合、歯周病ポケットからこの細菌が効率に検出
されます。
若年者で部分的に歯周病が進行した患者様から検出されたため、以前は
A a菌が検出された若年者を『限局型若年性歯周炎』と言っていました。
高度に検出された場合、通常の歯周病治療と併用して薬物療法が選択され
ます。
2 P g菌 : Porphyromonas gingivalis
グラム陰性 嫌気性 短桿菌
黒色色素産生性バクテロイデス属です。
血液中で繁殖すると黒っぽく見えることからこのような名前になっていま
す。
歯肉の中にある歯石が黒っぽいのはこのためです。
重度の歯周病(侵襲性歯周炎)から検出されます。
重度歯周病の診断に最も重要な細菌の一つです。
逆に健康な状態のポケットからは検出されることはありません。
3 P i 菌: Prevotella intermedia
グラム陰性 嫌気性 短桿菌
P G菌 と同様に黒色色素産生性バクテロイデス属です。
P G菌と一緒に分離され、単独に存在することは稀です。
歯肉炎(軽度の歯周病)や健康な歯肉のヒトの半数以上に存在しています。
思春期性歯肉炎や妊娠性歯肉炎ではこの細菌が増加します。
4 T f 菌: Tannerella forsythus ( Bacteroides forsythus )
グラム陰性 嫌気性 紡錘状菌
歯周病組織の破壊が激しい部位で高率に検出されます。
特に歯周ポケットの浅い部分よりは深い部分で検出されることが多い菌で
す。
難治性歯周炎症の指標として重要な菌種です。
5 T d菌: Treponema denticola (スピロヘータ)
グラム陰性 嫌気性 らせん菌
歯周病に対するスピロヘータの役割についてはまた完全には分かっていま
せんが、最も頻繁に検出される T d菌についてはかなり研究が進んでお
り、歯周病の活動度や重症度と関連しています。
またこの菌が免疫抑制作用に関わっているという報告もあります。
T d菌が多いと歯周病治療後にも再発するリスクが高いとの報告もありま
す。
6 F n 菌: Fusobacterium nucleatum
グラム陰性 嫌気性 紡錘状菌
ヒトの口腔内に常在する菌です。
食べかす(プラーク)の内部に含まれており、他の細菌とともにバイオフ
ィルムを形成します。
また、糖分解能がなく悪臭(口臭)の原因となる酪酸を産生します。
上記6種の細菌が主な歯周病に関連する菌です。
ここで、グラム陰性 嫌気性 桿菌が多いのに気づかれたと思います。
『嫌気性』とは『酸素の無いところを好む』細菌のことです。
この菌種は細胞壁に内毒素(エンドトキシン)であるリポ多糖(リポポリサッカライド=LPS) を含んでいます。
簡単に言うと、『内毒素』は急性炎症や骨吸収に関与しています。
歯周病で骨が吸収するのは『嫌気性菌』が原因だったのです。
そのため、A a菌やP g菌を検査することは歯周病の診断にとって重要であるとされています。
ちなみに、歯周病のハイリスクの基準値(University of California)とは
A a菌が 0.01%以上、
P i 菌が 5%以上
P g菌が 0.5%以上
とされています。
歯周病をご心配の方は調べてみてはどうでしょう?
数字で表されるため、簡単に分かります。
明日から私は学会で熊本に行きますので、日曜日のブログは休みます。
明日は朝、ブログを書いてから出かけます。
朝5:00起きですが…
それではまた明日!
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大船駅北口歯科インプラントセンターインプラント 歯周病 専門医
神奈川県横浜市にある日本歯周病学会歯周病専門医 国際インプラント学会認定医の歯科医院
I.T.Iインプラント認定医でもあり、GBR法、サイナスリフト、審美インプラント等の難症例も行います。
HPでは治療費(費用)の説明やインプラント症例、無料相談コーナーもあります。