インプラント治療の『リスク(危険度)』『禁忌症』『デメリット』その13
禁忌症は昨日で終了し、今日から新しいテーマになります。
『インプラント治療のリスク(危険度)』になります。
まず、第一回目の今日は『リスク(危険度)その1:神経麻痺』
神経麻痺とは?
インプラント手術を行う際に最もリスクが高いことの一つです。
この神経麻痺の多くは下顎で起ります。
ただし、神経麻痺という言葉は正確な表現ではありません。
麻痺は運動神経に使う用語なので正しくは、『下歯槽神経の知覚異常』もしくは『下歯槽神経の鈍麻』になります。
しかし、『知覚異常』や『鈍麻』というよりは『麻痺』という言い方の方がわかりやすいので、この項でも便宜的に『下顎神経麻痺』とさせていただきます。
インプラント手術の際に下顎神経に触れた もしくは近かった 等により、神経自体が損傷したり、圧迫されると下歯槽神経の麻痺が起ります。
先程書きましたように下顎神経は運動神経ではありません。
知覚神経です。(ちなみに顔等を動かす神経は顔面神経になります)
そのため、下顎神経が損傷しても顔を動かす等の機能麻痺は起こりません。
しかし、人間が筋肉を動かす場合は、感覚を参考にして動かしますので、下顎神経が麻痺しますと、顔面神経を動かす為に参考になるデータが少なくなりますので、水を飲む時にうまく唇を動かすことができず、水をこぼしてしまうことがあります。
下顎神経麻痺はなぜ起るのか?
インプラント手術の際に下顎神経麻痺が起る理由として以下のことが考えられます。
レントゲン診査が不十分であったため、下顎神経とインプラントの位置関係をあやまってしまった。
通常、歯科医師がインプラント手術の際に使用するレントゲンは『オルソパントモグラフィー』と言われるものです。
ほとんどの歯科医院に設置してあります。
歯から顎まで一通り写り、非常に便利なレントゲン写真です。
インプラント治療においても有効な撮影方法です。
しかし、このレントゲン写真の欠点として平面でしか分からないことです。
神経の走行は当然立体的ですので、平面でしか分からないオルソパントモグラフィーでは正確に診断できないことがあります。
論文学的にはインプラント埋入の際に下顎神経から2ミリ以上の距離があれば、問題はないとされています。
しかし、先程書きましたように平面でしか写らないオルソパントモグラフィーですとギリギリの距離であった場合、若干の誤差があると神経に触れてしまう もしくは 近接してしまう可能性がでてきます。
そのため、インプラントと下顎神経の距離が近い場合には後で説明するCT撮影というレントゲン方法を行った方が無難です。
この撮影方法は画像を立体的に表すことができるからです。
次に、直接下顎神経に触れていなくてもインプラントを埋入する器具で骨の穴を開ける際に器具の圧迫により、一時的に神経麻痺が起ることがあります。
この場合の対処法は後に記載してありますが、神経に直接触れなくても起ることがあります。
次にインプラントを埋入する際の出血によって神経麻痺が起ることがあります手術の際に起った出血が治療後に内部で溜まってしまい、それが、下顎神経を圧迫するため、起ります。
明日も『神経麻痺』についての続きになります。
1 下顎神経麻痺の経過
2 下顎神経麻痺の治療法
3 下顎神経麻痺が起ならないために!
明日(10/28)は学会(日本口腔インプラント学会)のため、休診になります。
明日(10/28)はブログを書きますが、明後日(10/29:月曜)は、学会から帰っていないので、休みになります。