インプラント症例:33回目

3/25(木曜日)です。
今日も『インプラント症例(33回目)』になります。

本日の症例は、抜歯即時インプラント です。

通常 ダメな歯を抜歯してインプラントを埋入する場合、
抜歯後に一定の期間を待ってからインプラントを埋め込みます。
具体的には、抜歯後に約3ヶ月程度待ちます。
場合によっては、半年程度待つこともあります。
そして、抜歯部が治っていからインプラントを埋入するのです。
これが一般的な治療方法です。

しかし、抜歯後に一定期間待つと トータルの治療期間が長くかかってしまいます。
そのため、抜歯と同時(同日)にインプラントを埋入する方法があります。
これを抜歯即時インプラント と言います。

抜歯と同時(抜歯当日)にインプラントを埋入することにより、
治療期間が短くなるだけでなく、
抜歯とインプラント治療を1回で終了できるため、
麻酔を行う回数も1回になります。
患者様への負担も減少できるのです。

しかし、こうした抜歯即時インプラント はどのような方でも適応されることはありません。
適応基準(適応症)もあります。
ただし、この適応基準さえ守れば 非常に良い治療方法と言えます。

本日ご紹介する症例は、抜歯即時インプラント になります。

通常こうした症例をご紹介する場合には、良い結果を得られたケースをお見せすることになります。
しかし、それであると抜歯即時インプラント の難しさが分かりづらいので、以下の症例はあえて問題点を提示したいと思います。

当然のことながらネットでは、良い結果の症例のみが掲示されています。
しかし、これでは本当の結果(状況)が分かりません。
実際の臨床では、さまざまなことが起こります。
例えば、
治療期間(治療回数)に制限があるとか、
治療費に制限があるとか、
骨吸収があり、インプラントができない場合もあったり、
骨吸収が大きい場合には、骨の増大治療を行います。
ケース(骨吸収の程度)によっては、治療が非常に大変になることもあります。

抜歯即時インプラント を行うにあたり 最も重要な点は、骨吸収の有無です。
骨吸収が起こっている場合には適応症ではありません。
特に切開をしないで、抜歯した穴にインプラントを埋入するだけの治療法であると 骨吸収の程度をきちんと把握することは難しいため、
『切開しないで、抜歯当日にインプラントが行えるから 簡単だ!』
と思っていると大きな問題に直面します。

今回の抜歯即時インプラント の症例は、初診時の診査の結果、多少の骨吸収がありました。
骨吸収の原因は、歯根破折 です。

それでは、骨吸収が起こっている状態で抜歯即時インプラント を行うとどのような結果になるのかを紹介します。

抜歯即時インプラント の症例は、いつものようにレントゲンではなく、口腔内の状態をそのまま見ていただいた方が分かりやすいので、口腔内写真を中心に解説します。

症例は、10年程度前になります。
患者様は、突然前歯が取れたとのことで来院されました。
痛みはありませんでしたが、取れた歯は大きく虫歯になっていました。
以下の口腔内写真は初診時になります。
スライド1

また、歯の根には、亀裂 が入っていました。
スライド2

診断は抜歯です。
その理由として、
1.虫歯を除去すると歯自体がほとんどなくなってしまう!
2.根には、亀裂(歯根破折 )がある!
ということです。
患者様は、抜歯自体には同意していただけました。
抜歯後の治療方針として、
1.両側の歯を削除し、ブリッジとする
2.義歯(入れ歯)
3.インプラント
という話をさせていただきました。

ブリッジ、義歯、インプラントの違いについては、以下を参考にして下さい。
   ブリッジ、義歯、インプラントの比較
   ブリッジ、義歯、インプラントの平均寿命

患者様は、歯を削除する治療は避けたい とのご希望がありました。
そのため、インプラント治療をご希望されました。
ただし、ここで問題となったのが、治療期間です。
10年程前は このような症例の場合、抜歯を行い 3ヶ月程度抜歯部が治るのを待ってから インプラントを埋入することが一般的でした。
まだまだ抜歯即時インプラント は一般的な治療方法ではな
かったのです。
患者様には、インプラント治療の場合
抜歯も含めて半年以上の治療期間がかかることをお話しまし
た。
もちろん治療期間中には、仮歯がないということはありません。
仮歯 はきちんとあります。
しかし、どうしてもこの治療期間がかかることがネックになっていました。
そこで、その当時はまだまだ一般的ではありませんでしたが、抜歯即時インプラント を行うことになりました。
もちろんさまざまな検査を行なった結果、歯根破折 を起こしていたため、歯の周囲の骨吸収が多少起こっていました。
そのため、抜歯後には多少の歯肉退縮(骨吸収)が起こる可能性があることを説明しました。
具体的には、抜歯即時インプラント を行うと治療後にインプラントの被せ物が周囲と比較すると長く見えるということです。
通常のインプラント治療(抜歯して一定期間待つ治療法)と抜歯即時インプラント の利点、欠点をご説明した結果、患者様は治療期間を短縮する抜歯即時インプラント を選択されました。
以下の写真は、抜歯直後です。
スライド3

抜歯した穴の中には、汚れ(細菌)が存在しているため、内部を徹底してきれいにすることが重要です。
その後、インプラントを埋入します。
抜歯した穴があるので切開等もまったくしません。
スライド4

以下の写真は、インプラント埋入後に 蓋 をした状態です。
スライド5

この後仮歯 をしますので、この金属の蓋が見えることがありません。
仮歯は、インプラントの両側の歯にプラスチックでできた仮の歯を接着剤で固定します。
審美的に問題となることはありません。
以下の写真は、インプラント埋入後約3ヶ月後の仮歯を撤去した状態です。
スライド6

金属の蓋を取った状態が以下の写真です。
スライド7

現状を細かく言えば、抜歯後に骨吸収が若干起こったために、歯肉が多少退縮しています。
以下が最終的な被せ物を装着した写真です。
スライド8

写真が少しピンぼけしてしまっています。
術前に骨吸収があったために、歯肉の退縮が若干認められますが、患者様は最短期間での治療結果に満足されています。
抜歯即時インプラント は、全ての症例に適応されるわけではありませんが、適応症さえ守れば有効な治療方法です。
以下は、治療終了後のレントゲンです。
スライド9

以下は、同様(虫歯と歯根破折)な状態でインプラントを行った 別の症例になります。
患者様は、上の前歯が取れたとのことで来院されました。
以下のレントゲンは、取れた被せ物をそのままご自身で付けた状態でのレントゲン写真です。
*印が取れた被せ物です。
スライド1

差し歯を取り診査をした結果、虫歯もありましたが、歯根破折 が起こっていました。
スライド2

診断としては、抜歯になります。
歯根破折 を起こした場合、できるかぎり早急に抜歯を行うことが大切です。
抜歯が遅れると根の周囲の骨が吸収します。
骨吸収が進行すると先の症例のように治療後の審美性に問題が生じることもあります。
今回の患者様の場合、歯根破折 してからさほど時間が経っていなかったので、さほど骨吸収はありませんでしてた。
以下が治療後になります。
スライド3

スライド4

このように インプラントの治療には、さまざまなことが考えられます。
どのような治療方法が良いのかは、
骨吸収の状態、
患者様のご希望、
噛み合わせ、
全身状態…
等を考え決定されます。

次回のブログは3/29(月曜日)になります。
次回も『インプラント症例』です。

今週(3/23〜24)のインプラント手術報告

今週(昨日)のインプラント手術の中から、
難しいケース であったり、
特殊なケース 等を抜粋して、紹介するコーナーです。

それでは、今週のインプラント手術の中から下顎にインプラント埋入を行った1症例について解説します。

昨日行ったインプラント手術は、『インプラントによるアタッチメント義歯』という治療方法でした。
歯が多数欠損している場合、インプラントを使用した治療方法には2つの治療法が考えられます。
一つは、欠損数に対して半数程度の数のインプラントを埋入し、インプラント ブリッジ とする治療法です。
インプラントブリッジは、完全固定式になりますので、元々歯があった状態のようになります。
最も違和感が少なく快適な治療方法です。
しかし、欠損が多数存在する場合、インプラントの埋入本数が多くなってしまうため、治療費が高額になってしまうという欠点があります。
例えば、歯が1本もない場合 完全固定式にする場合には、6本程度のインプラントを埋入してインプラントブリッジとします。
かなり治療費がかかります。
そのため、治療費を抑えるために2本のインプラントのみ埋入し、
義歯(入れ歯)を固定させる方法があります。
これを『アタッチメント義歯 』と言います。
義歯とインプラントを結合させるための アタッチメント を装着することにより義歯は、落ちたり、動いたりすることが少なくなります。
義歯が取れたりする方に対しては、非常に有効な治療方法です。

高齢者の方で、総入れ歯をご使用されている方の中には、
義歯が動いたり、
取れたりして
食事に不自由を感じている方がいらっしゃいます。
アタッチメント義歯 は、こうした方に非常に有効な方法です。

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