プラットホーム・スイッチング:platform switching:その5

1/28(月曜日)です。
プラットホームスイッチングの5回目になります。
今日のテーマは、プラットホーム・スイッチングの利点と欠点
になります。
前回までの話の中で、プラットホーム・スイッチングを応用するとプラットホーム(インプラントとアバットメントの接合部)位置での骨が吸収しないことがわかりました。
それでは、プラットホーム・スイッチングが どの程度 プラットホームでの骨の吸収を防止できるかという 論文を 結論のみ 簡単に紹介したいと思います。
研究対象は、世界4大インプラントの一つで、
最も歴史の長いインプラントである ブローネマルク・インプラント と
プラットホーム・スイッチングの先駆けである アンキロス・インプラント を比較するという研究です。
結論として、埋入6ヶ月後のプラットホーム周囲の骨の吸収は、
ブローネマルク・インプラント 平均1.88ミリ
アンキロス・インプラント 平均0.77ミリ
でした。
プラットホーム・スイッチングを応用した アンキロス・インプラント がいかに骨吸収を防止するインプラントであることが分かります。
それでは、この骨吸収がどのように審美性に影響を及ぼすか ということですが、
骨の吸収があるとそれに伴い、歯肉も退縮していきます。
歯肉が退縮した場合、
歯が長く見えたり、
場合によってはインプラントの接合部の金属が見えてくることがあります。
あまり、見えない奥歯であれば、さほど大きな問題となることはありませんが、
前歯部の場合、問題となることがあります。
先程の研究において ブローネマルク・インプラントと アンキロス・インプラント では骨の吸収には約1ミリ程度の差がありました。
1ミリというと さほど違わないように感じますが、これは大きな差です。
特に、元々骨の幅がないような場合にはプラットホーム・スイッチングは有効な方法です。
また、プラットホーム・スイッチングは骨の吸収を防止するだけでなく、
歯肉の厚み自体を 厚く保つことが可能です。
下図にあるようにプラットホーム・スイッチングは、
土台(アバットメント)自体が細くなるため、
その周囲の歯肉の厚みを確保できます。
インプラント本体(フィクスチャー)より上方に出来る
歯肉の量は、幅の1.5倍とされているので、
細いアバットメントの周囲にできる厚い歯肉のため、
歯肉の高さも高く維持されることになります。
歯肉の高さが維持されれば、
歯肉の退縮も少なくなります。
また、歯肉の厚みが確保できるため、血流量を確保できるという利点もあります。
血液循環が良くなることにより、歯肉退縮も防止できるのです。
puratto5
クリックすると拡大されます。
それでは、プラットホーム・スイッチングの欠点はどのようなことでしょう?
まず、プラットホーム・スイッチングの歴史が浅いということです。
プラットホーム・スイッチングの歴史は、この後で解説しますが、偶然から生まれた方法です。
そのため、基礎研究が若干遅れています。
また、臨床的評価(研究)もまだ完全であるとは言えません。
そうした研究には今後期待したいと思います。
私自身もプラットホーム・スイッチングについては非常に興味を持っていましたが、私が主に使用している
ストローマン・インプラント(I.T.Iインプラント)
には、まだ対応していなかったことと
まだ、十分納得できる臨床データがなかったために、経過を見ていたということです。
しかし、多くの臨床家達が使用を始め、良い結果を得てきていることから私自身も使用を始めました(2008より)。
次回のブログは1/31(木曜日)になります。
次回のテーマは『プラットホーム・スイッチングの歴史 と まとめ』です。
今週(1/25〜27)のインプラント手術報告
今週(昨日)のインプラント手術の中から、
難しいケース であったり、
特殊なケース 等を抜粋して、紹介するコーナーです。
日々の臨床で、どのようなことを行っているか 知っていただきたいと思い 今年から始めました。
それでは、今週のインプラント手術の中から傾斜埋入インプラントを行った1症例について解説します。
治療部位は上顎の奥歯です。
奥歯に3歯分の欠損がありました。
通常、3歯分の欠損がある場合、3本のインプラントを埋入するのではなく、
2本のインプラントを埋入し、ブリッジとします。
ブリッジについてお分かりにならない方は こちらを参考にして下さい。
インプラントが安定するためには、できる限り長いインプラントを埋入することが必要です。
長さの短いインプラントでは、しっかりとした安定は得られません。
今回のケースでは、上顎奥歯の骨の状態はかなり悪く、欠損状態(歯がなかった期間)が長かったため、骨の吸収が起っていました。
歯がないと骨が吸収してしまう現象は以下をご覧下さい。
歯がないと顎の骨はどんどんと吸収していきます!
上顎の奥歯において骨の吸収が大きい場合、 サイナスリフト法 『ソケットリフト法』を行うのですが、
そのような方法を行わないでも骨が少ない場所に長いインプラントを埋入する方法があります。
それが、今回のケースで行った インプラントの傾斜埋入です。
傾斜埋入方法の詳細は以下を参考にして下さい。
今回は省略させていただきます。
・インプラントの傾斜埋入
下の写真は傾斜埋入を行った症例(今回の症例ではありませんが、傾斜埋入が非常に良く分かる典型的なケースです)です。
yamasina
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レントゲン写真の真ん中にあるインプラントの上には上顎洞という空洞が存在しており、インプラントを埋入するための高さがほとんど存在していません。
つまり、長いインプラントを埋入することができないということです。
そのため、両端のインプラントは上顎洞を避け、骨が存在する部位に斜めにインプラントを埋入したケースです。
それでは、斜めにインプラントを埋入することの問題点はあるのでしょうか?
傾斜埋入の欠点はないのでしょうか?
ブリッジ等の複数のインプラントを埋入する場合、基本的に、 インプラントの傾斜埋入の問題はありません。
ただし、術者(歯科医師)の技術的な難しさがあります。
インプラントの傾斜埋入は難易度が高いのです。
つまり、インプラント手術自体の難しさです。
適切な位置に傾斜させて埋入することはきちんとした術前の診査と技術力が必要です。
また、最終的な被せ物の作製時(型を取ったりする過程も…)でも通常の治療よりは難しくなります。
このブログでも良く書きますが、上顎の奥歯にインプラントを行う際、
骨の高さや幅がしっかりしていることは少なく、
多くの場合、骨の吸収が高度に起っていることが多いのです。
そのような場合、さまざまな治療方法を組み合わせて行うことが必要です。
今回の インプラントの傾斜埋入もそうしたテクニックの一つです。
今回使用したインプラントは、
ストローマン・インプラント   ( I.T.Iインプラント)
SLAタイプ  直径4.1mm 長さ12mmが2本でした。
麻酔方法は虫歯の治療で行うような普通の歯科麻酔です。
特にご心配されるようなものではありません。
インプラントの埋入本数が少なかったり、
インプラント手術に際し、さほど不安がない方にはこうした簡単な麻酔方法でインプラント埋入を行います。
もし、インプラント治療に不安がある場合には
『静脈内鎮静法』
にて麻酔を行います。
また、埋入方法はドリル(骨に穴を形成する器具)をほとんど使用しない 『スプリッティング法』を行いました。
ドリルをさほど使用せず、骨の幅を押し広げながらインプラントを埋入するこの方法は骨にダメージが加わりにくく、術後の腫れが少ない治療法です。
手術時間は2本のみでしたので、約10分で終了でした。
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大船駅北口歯科インプラントセンターインプラント 歯周病 専門医
神奈川県横浜市にある 日本歯周病学会歯周病専門医 国際インプラント学会認定医の歯科医院
I.T.Iインプラント認定医でもあり、 GBR法 サイナスリフト 審美インプラント等の難症例も行います。
HPでは 治療費(費用)の説明や インプラント症例 無料相談コーナーもあります。