患者様から受ける質問特集:その2
8/18(月曜日)です。
今日も前回の続きで、『患者様から受ける質問特集:その2』になります。
今日ご紹介する質問も前回と同様に非常に多いことの一つです。
質問4は、抜歯後の治療方針(ブリッジ、義歯、インプラント)で悩んでいるケース
質問5は、子供の永久歯が抜歯となり、ご両親からの相談です。
質問6は、歯がほとんどなく、食事をするのにも困難な方からの相談です。
質問4
極度の痛みと歯肉が腫れているので、歯科医院に行ったところ、歯を支えている骨が溶けているため、抜歯となりました。
その後の治療方針として、ブリッジ、インプラント、義歯の方法があると説明を受けました。
しかし、骨の吸収が大きいため、すぐインプラントはできず、骨を増骨するための治療を行う必要性があるとのことです。
そして、治療期間も半年以上はかかるとのことでした。
骨を増やす治療も怖いですし、治療期間がかかることも悩むところです。
しかし、歯を削るブリッジは今後のことを考えると避けたいと思います。
また、義歯は嫌です。
どうしたら良いでしょうか?
回答4
歯が1〜3歯程度欠損した場合には、ブリッジ、インプラント、義歯といった選択肢があります。
それぞれの治療方法には利点と欠点があります。
まず、ブリッジですが、
利点
1 固定式であるので違和感がない。
2 審美的な外観を回復できる。(金属式のものを除く)
3 比較的治療期間が短い。
短 所
1 治療のために燐在歯を削る必要がある。
2 土台とした歯の清掃がしづらくなったり、場合によっては過重負担のため、
歯周病を招きやすい。
次にインプラントですが、
長 所
1 固定式であるので違和感がない。
2 治療のために隣在歯を削る必要がない。
3 審美的な外観を回復できる。
4 天然歯とほとんど同じ感覚で噛むことができる。
短 所
1 治療期間が長くかかる
2 保険診療外である。
3 手術を必要とする
4 骨の状態によっては、困難もしくは、できない場合もある
次に義歯(入れ歯)ですが、
長 所
1 治療のために燐在歯を削る必要がない。
2 比較的治療期間が短い。
短 所
1 取り外し式である
2 人により違和感を生じやすい。
3 審美的外観の回復が難しい。
4 長期間経過すると歯肉がやせてくるので修理や作り替えの必要が生じる。
上記は、一般的な利点、欠点です。
骨の吸収がなければ、『インプラントが一番良いでしょう』とお答えしますが、
骨の吸収が非常に大きい場合、骨増大法(GBR法)、インプラント埋入手術と
2回の手術を行う必要性がありますし、どうしても治療期間が長くなります。
将来性を考えれば、インプラントの方が良いですが、ブリッジが決して悪いわけではありません。
ブリッジの土台となる歯が歯周病でない、
土台となる歯が神経がある
噛み合わせが安定している
といった状態であれば、ブリッジでも決して将来性が悪いということではありません。
きちんとしたお手入れ(ブラッシング)、メインテナンスを行えば、将来的に問題を生じず、生涯維持される可能性も十分あります。
ただし、インプラントよりは、ブリッジの方がリスクが高いのは確かです。
リスクを少しでも減らしたいのであれば、インプラントの方が良いと考えられます。
また、欠損の両側の歯が削られていない歯であったり、
ブリッジを行うために、歯を削合するのに抵抗があるのであれば、
インプラントか義歯が良いでしょう。
どうしても決められないのであれば、まずは、義歯にして、その後考えることも一つの方法です。
ブリッジのように一度削ってしまうと元に戻すことはできなくなってしまいます。
先程書きましたように
ブリッジが適しているか
インプラントが適しているかは、
さまざまな条件により違いますので、再度担当医と将来性を考え、治療方法を検討されることをお勧めします。
急ぐことありませんので、十分ご検討の上、お決めになって下さい。
当医院に来院された患者様においても同様な状態で悩まれている方もいらっしゃいます。
最終的には、インプラントを選択される方の方が多いのですが、
ブリッジを選択される方もいらっしゃいます。
もちろん、義歯を選択される方もいらっしゃいます。
また、はじめに義歯にし、その後インプラントを選択される方もいらっしゃいます。
私としても骨の状態や噛み合わせ等から
インプラントの方が断然よければ、インプラントをお勧めしますが、
ブリッジの方が良い場合もあります。
この場合には、もちろんブリッジを勧めています。
インプラント、ブリッジ、義歯がどれだけ保つかについては以下を参考にして下さい。
・3つの治療の平均寿命
質問5
現在、中学生の息子のことですが、転んで前歯を折ってしまい、2本抜歯になってしまいました。
ブリッジかインプラント治療を考えているのですが、どちらの方が良いでしょうか?
回答5
まず、ご年齢から考えるとすぐには、インプラントはできません。
インプラントは、成長が止まる年齢までは、適応となりません。
現時点でどちらかを選択するのであれば、ブリッジになります。
しかし、ブリッジは、他の健康な歯までも削る必要性があります。
前歯2本を抜歯したとのことですが、2歯欠損をブリッジにする場合、
土台となる歯が2本ですと、支えている土台に負担がかかりすぎてしまいます。
そのため、4本分が土台となる場合もあります。(噛み合わせ等によっても違いますが…)
そうなると健康な歯を4歯も削ることになりますので、抵抗があるかもしれません。
将来性を考えると現在は、仮歯の状態で過ごし、成長の止まる、高校生から20歳頃にインプラント治療を開始することも一つの方法です。
質問6
現在、多くの歯がなく、噛むこともできません。
以前に義歯を作製しましたが、違和感があり、食事の際にも外れてしまうため、不自由しています。
現在通院している歯科医院では、
『近いうちにほとんどの歯はダメになり、総義歯になってしまう』
と言われています。
インプラント治療があると聞き、調べてみましたが、全ての歯をインプラントにすると治療費が非常に高額になってしまうことが分かりました。
このままだと、いずれ総入れ歯になってしまうかと思うと毎日不安です。
治療費を抑える他の方法はありますか?
回答6
インプラント治療は保険が適応されませんので、全て自費診療になってしまいます。
そのため、全て歯がない場合に、複数本のインプラントを埋入し、回復させようとすると治療費は高額になってしまいます。
そのような場合、以下のようなことが考えられます。
まず、歯は本来、片顎(上顎もしくは下顎のどちらか一方)で14歯存在します。
総義歯を使用されているような場合(歯が一本もない方)、インプラントで14歯分を作製しようとすると最低でも6〜8本程度のインプラントが必要になります。
つまり、6〜8本のインプラントで ブリッジ とする治療方法です。
こうなるとかなりの費用がかかりますので、費用を抑える方法として、
作製する歯の数を少なくする方法があります。
つまり、14歯ではなく、12歯とか、10歯、場合により8歯分のみ作製する方法です。
これは、奥歯までは歯を作製せず、最低限義歯を使用せず噛めて、審美性も損なわない部分まで、インプラントで回復させる方法です。
この場合、
『噛むことに問題がないのか?』
『奥歯がないのにきちんと食事ができるのか?』
といった不安もあるかと思います。
実際に、歯が全てないケースでは、インプラントで全ての歯(14歯)まで作製しないことがほとんどです。
多くのケースでは、12歯分まで、
費用を抑えることを考えれば、10歯分までしか作製しないこともあります。
この場合、確かに、14歯作製するよりは、噛む能力が劣りますが、
義歯がまったく使用できない状況からすると 十分機能できると考えられます。
また、必要があれば、後から欠損部分にインプラントを追加することも可能です。(インプラントの長さや噛み合わせ等により追加が不可能な場合もあります)
14歯分と10歯分では、確かに噛む能力に差はありますが、
費用の面に問題があれば、作製する歯の数を少なくすることは、現実的な方法になります。
また、他の方法として、インプラントを2〜4本の最小限の数を埋入し、義歯を固定する方法もあります。
最小限の数を埋入したインプラントに『アタッチメント』という金具を取り付けます。
この アタッチメント により 義歯 と インプラントは 強固に固定されますので、義歯が落ちてくるということはありません。
また、固定が強いため義歯を非常に小さくできるという利点があります。
義歯の口蓋の部分を取除くことができ、通常の義歯とははるかに小さくできますので、違和感はかなりなくなるかと思います。
(埋入本数や顎の形により異なります)
この方法は、基本的に義歯にはなりますが、通常の義歯よりは、かなり安定しており、このような方法を行った患者様のほとんどは、義歯が動く、落ちる等の問題がなくなったと言われます。
義歯の安定が悪いといった場合には、治療費も抑えられ、優れた方法です。
歯がまったくない場合、インプラント治療では、上記の2つの方法が考えられますが、インプラントを使用しない方法では、総義歯(総入れ歯)しか方法はありません。
ただし、義歯が外れやすい等だけの問題であれば、義歯の作製を専門としている歯科医師を受診されることも有効です。
義歯の作製は、全ての歯科医院で同じ結果が得られる訳ではありません。
義歯の作製には、熟練が必要で、総義歯を専門(得意)としている歯科医院もあります。
どのような状況かにもよりますが、義歯がどうしても合わない場合には、
まず、担当医に『義歯のこうようなところが合わない』、『しゃべりにくい』等を話、そして、じっくり時間をかけ、新たに義歯を作製 もしくは、現在の義歯を修理してみることが大切です。
それでも無理であれば、先程の方法でインプラント治療を行うことも費用を抑える一つの方法になります。
今まで、義歯を使用していたが、
『どうしても痛くて合わないのでインプラントにしたい!』と来院された方が、
義歯を修理するだけで、
『以前よりかなり噛めるようになった!』
ということもありました。
もちろんこの場合には、インプラントを行う必要性はありません。
義歯で噛めるようになってのですから…
現在の状態に問題がある場合には、まず、担当医にきちんと話をされることが大切です。
次回のブログは8/21(木曜日)になります。
次回は、今日の続きで、『患者様から受ける質問特集:その3』です。
今日は、話が長くなってしまたので、『今週のインプラント手術報告』は休ませていただきます。
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