インプラント症例:61回目
7/19(月曜日)です。
始めに今週の休診のお知らせです。
7/21(水)、7/22(木)は休診とさせていただきます。
このインプラント症例ブログは毎週 月曜日と木曜日にアップしています。
『61回目のインプラント症例』になります。
本日の症例は『難症例』になります。
本日はちょっと長い話しになります。
しかし、重度歯周病の方 で インプラント治療を考えられている方は
是非見ていただきたい内容です。
患者様は、非常に進行した重度歯周病の方でした。
上顎の前歯部から左側にかけては歯が欠損している部位が多数ありました。
また、下顎の右側も歯がグラグラしている状態でした。
そのため、左右の奥歯では噛めないため、
『どうにか噛める状態になりたい!』との思いで来院された方です。
前回のブログ や、
前々回のブログ では、
重度歯周病の患者様の症例を紹介しました。
重度歯周病の方のインプラント治療は非常に難しいのです。
その理由には、いくつかあります。
一つは、重度歯周病の患者様の場合、歯を支えている骨がすでにかなり吸収 しています。
インプラント治療は、骨の中にチタンでできたネジを埋め込む治療です。
そのため、骨の吸収が起こっている場合には治療を難しくします。
重度歯周病を放置している患者様の場合には、
抜歯後にインプラントを埋め込むこと自体が難しくなることがあります。
次に重度歯周病患者様の場合、
どの歯を抜歯し、
どの歯を残すのか?
という問題があります。
もちろん可能なかぎり抜歯せずに 残した方が良いのですが、
将来性が非常に低い歯を無理に残した場合には、逆にその後の治療を難しくすることになります。
例えば、歯が1歯欠損していたとします。
患者様は、その欠損部のみにインプラント治療を行い、
他の歯は、触らずに治療を進めたい
との希望があったとします。
しかし、欠損部周囲のほとんどの歯がグラグラ(重度歯周病)であった場合、
無理に欠損部のみのインプラント治療を行っても
すぐに周囲の歯がダメになるたびに
新たにできた欠損にインプラントを埋め込むことが必要になります。
この追加されるインプラントは、歯がダメになるたびに どんどんと増えていきます。
治療に終わりがありません。
当然のことながら そのたびに治療費はどんどんとかかります。
どのような歯科治療もそうですが、
悪い歯や欠損部だけを見て治療を行うのではなく、
口腔内全体を見て治療計画を立てることが重要なのです。
また、歯周病を放置した状態で、インプラント治療を行っても
インプラント自体も歯周病のような状態になってしまいます。
これをインプラント周囲炎(インプラントの歯周病) と言います。
また、重度歯周病になるということは、簡単に言えば
『歯磨きが十分にできていいない!』
ということです。
歯磨きが適切にできていないために 歯周病になったのです。
そうした方が、抜歯後にインプラント治療を行ったとしても
本当に適切に歯磨きができるか?
という問題があります。
多くの方は、インプラント治療前に歯周病についてご理解をされ、
徹底した歯周病治療を受けていただくため、
治療後には、適切な歯磨きを行っていただけます。
また、メインテナンス(定期検査) にもいらしていただいています。
しかし、これは100%の患者様に当てはまることではありません。
インプラント治療後も適切な歯磨きができなかったり、
メインテナンス(定期検査) に来院されない方もいらっしゃいます。
そのため、歯周病が再発してしまいます。
歯周病が再発すると インプラントにも感染を起こします。
結果的にインプラントもダメになってしまうのです。
こうしたことが起こることもあるため、
重度歯周病患者様の治療が非常に難しいのです。
今回ご説明していないことも、重度歯周病の方の治療の難しさは いっぱいあります。
前置きが長くなりましたが、本日の症例を開始します。
以下が初診時のレントゲン写真です。
かなり前のケースですので、レントゲンが見にくくてすみません。
昔のレントゲンは、現在のデジタルレントゲンではなく、
フィルムのレントゲンでしたので、劣化してしまいます。
多くの歯がグラグラでした。
このままであると見にくいので、
いつものように 骨吸収の状態を分かりやすくするために
骨吸収の状態を線で書いたのが以下のレントゲンになります。
青線が骨吸収を起こす前の骨の位置です。
赤線は、現在の骨の位置です。
さらに分かりやすくするために 骨吸収部位を赤色の領域で表しします。
骨吸収が本当に進行しているのが分かるかと思います。
歯周病専門医 でなければ、ほとんどの歯を抜歯と診断されてもおかしくない症例です。
さらに上顎では、上顎洞 の存在が問題となっていました。
緑線は上顎洞という空洞です。
骨ではなく、穴が開いているのです。
いつもこのブログをご覧になっている方はもうすでにご存知のことと思います。
上顎洞の詳細は、以下を参考にして下さい。
上顎洞
これも さらに分かりやすくするために、上顎洞 緑色で表示します。
後で解説しますが、上顎左側の骨吸収 と 上顎洞の存在がこの後の治療を非常に難しくするのです。
初診時本当に大変な状態でした。
先にも書きましたようにグラグラが歯が多くありました。
患者様にはさまざまなお話をしました。
現在の歯周病の状態、
歯周病治療による改善の程度、
将来性、
治療期間、
インプラント治療について
等です。
その結果、以下の歯を抜歯することにしました。
抜歯と判断した以外の歯は、徹底した歯周病治療 を行うことにしました。
このブログは、インプラントのブログですので、歯周病治療については省略します。
インプラント治療ですが、これが困難を極めました。
まず、上顎の左側についてです。
骨吸収が大きいことと、上顎洞の存在により、
残っている骨の高さは、本当に少ない状態でした。
具体的な骨の高さは、
残っている歯の部位で約4ミリ、
その前後では1ミリもない状態でした。
本当に大変な状態です。
通常、上顎にインプラントを行う場合、
最低限必要な骨の高さは、約10ミリです。
この高さ以下であると適切なインプラントが行えません。
今回は、1ミリ以下 と
残っている部位(1カ所ですが…)でも4ミリです。
これでは、とてもインプラント治療が適切にできる状態ではありません。
困ったものです。
こうした骨吸収が高度に起こっている場合には、骨移植を伴うサイナスリフト法(上顎底挙上術) という治療法を行います。
しかし、この治療は、かなり大変です。
治療後の腫れ もかなり起こります。
患者様は、できるかぎり負担の少ない治療法をご希望されました。
そこで以下のような治療計画を立てました。
この治療計画では、さまざまな治療法を併用し行うことが必要です。
GBR法(骨増大法) 、
スプリッティング法(リッジエクスパンジョン法) 、
ソケットリフト法 、
カンチレバー 、
インプラントの傾斜埋入
等です。
以下は、上顎を抜歯した後です。
ここで注目したいのが、上顎左側の抜歯した穴です。
『 穴 』です。
この部分のみを拡大して見てしましょう。
今回の症例は、非常に奥が深い話し(長い話し)になりますので、
続きは次回(7/22:木)にしたいと思います。
次回のブログは7/22(木曜日)になります。
次回もまだまだ続く『インプラント症例』です。
さまざまケースを紹介しますので、きっと あなたと同じような症例があるはずです。
今週(7/16〜18)のインプラント手術報告
今週(昨日)のインプラント手術の中から、
難しいケース であったり、
特殊なケース 等を抜粋して、紹介するコーナーです。
それでは、今週末行ったインプラント手術の中から難しかった症例 と 比較的簡単であった症例を紹介します。
1症例目は、下顎の奥歯にインプラントを4本埋入したケースです。
骨吸収が著しかったことと 下顎の神経が非常に近かったために、短いインプラントを欠損の数分だけ埋入したケースです。
インプラントが短かったために インプラントの安定が悪くGBR法(骨増大法) も難しかったです。
2症例目は、比較的簡単なケースでした。
上後に1本のインプラントを埋入しました。
同様にGBR法(骨増大法) を行いましたが、骨吸収はさほど大きくなかったため、その難易度は低いケースでした。
同じGBR法(骨増大法) と言っても 骨吸収の程度によってその難易度は大きく変わってきます。
難易度が高ければ 高いほど 手術時間は長くかかります。
その結果、治療後の腫れ も起こる確立が高くなります。
骨吸収が大きくならないうちにインプラント治療を行うことが
重要なポイントです。
これらの症例もインプラントモニターですので、治療が完了しましたら
このブログでご紹介したいと思います。
今後の治療スケジュール
今後の予定としては、
1. 約7〜10日後に“抜糸”、
2. その後、上顎は 約3〜4ヶ月後
下顎は 約2〜3ヶ月後
に型を取ります。
治療費
インプラントモニターの場合、1本168.000円(消費税込)になります。
当医院のインプラント治療費用の中には、
治療中のレントゲン撮影や薬代、
土台(アバットメント) の費用、
仮歯 の費用、
治療経過のレントゲン撮影、
セラミック等の被せ物の費用、
スプリッティング法(リッジエクスパンジョン法) 、
OAM(大口式)インプラントシステム 、
GBR法(骨増大法:インプラント埋入と同時の場合) 、
ソケットリフト法 の費用、
静脈内鎮静法(眠っている間に終了します) の費用も含まれています。
治療計画以上の追加費用はありません。
全て含まれた費用です。
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さまざまなケースを見ていただくことにより、よりインプラント治療についてご理解していただきたいと思います。
そのため、症例を公開しても大丈夫という方(インプラントモニター)を募集しています。
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