最新インプラント症例:217回目
2014年 7月 3日(木曜日)です。
始めに休診案内です。
以下日程を日本口臭学会出席のため休診とさせていただきます。
• 7月 4日(金曜日)16:30まで
• 7月 5日(土曜日)
• 7月 6日(日曜日)
このブログはインプラント症例を紹介するブログです。
『217回目のインプラント症例』になります。
本日ご紹介する症例は、治療することが多く、
本当に大変なケースでした。
なにが大変であったかと言いますと
単に欠損部位が多いというだけでなく、
現在残っている歯の状態が悪かったのです。
初診時歯は16本残っていましたが、(全て残っている方は28歯です)
全て神経がない歯であり、
大きく虫歯 になっていたり、
歯根破折 していたり
噛み合わせが大きくズレていたり、
欠損部も骨吸収が非常に大きかったり、
全体的に問題が多くある患者様でした。
それでは早速みてみましょう!
かなり長い話しになりますが…
以下は初診時です。
先にも説明しましたように さまざまな問題ありました。
患者様の主訴としては、
上顎右側の歯に穴があいており、物が詰まり、腫れている状態でした。
下顎の左側の奥歯も歯肉が腫れており、歯自体がグラグラな状態でした。
どのような治療でも同様なことを考えるのですが、
歯が悪くなった(ダメなった)ことには原因があります。
この原因を考えることが治療計画の第一歩なのです。
例えば、歯周病 で歯がグラグラしていれば、
単にグラグラの歯を抜歯するだけでなく、
残っている歯の歯周病の検査 を行い、
歯周病の治療 が必要になります。
今回の患者様はどのようなことが原因だったのでしょうか?
問題点を列挙します。
まず、第一に歯が多く欠損していることです。
左右の奥歯が欠損しているために 残っている歯に負担が加わり
問題が大きくなっているのです。
次に全ての歯が神経がないことです。
今回の治療計画で最も問題が大きいところです。
神経がない歯の問題点については、
このブログでも良く解説することです。
何回かこのブログを見られている方にとっては、
神経のない歯は本当に問題が大きいことが分かるかと思います。
神経のない歯についてはこのブログでもよく紹介してきました。
始めてこのブログを読まれる方のために
簡単に神経のない歯について解説します。
神経のない歯は もろく 通常の咬む力でも割れてしまうことがあります。
こうした状態を患者さんに説明する時に”木”に例えてお話しすることがあります。
生き生きとした木はたたいたり、蹴ったりしても折れたりすることはありませんが、
枯れた木は折れる可能性があります。
神経を取った歯も枯れた木と同じような状態になります。
神経のない歯は血液供給がなくなるためもろくなってしまうのです。
また、単に神経がない歯が多いということだけではありません。
ほとんどの歯が虫歯になっているのです。
神経がないということは、虫歯になっても
熱い、冷たい
という症状がありませんので、知らないうちに 虫歯が進行していることが多いのです。
そして、被せ物が取れた時に始めて 虫歯が進行していることが分かるのです。
今回の患者様は、多くの歯が虫歯になっていましたが、
ほとんどの被せ物は連結(つながっている)ために、
被せ物自体が取れてこなかったのです。
患者様ご本人は そんなに虫歯が進行しているとは 思ってもいなかったのです。
次の問題点は、噛み合わせです。
長年にわたり、何度も治療を繰り返してきた結果、
噛み合わせが大きくズレていたのです。
以下の黄色線は、正しい(本来の)噛み合わせです。
以下の緑線は、現在の噛み合わせです。
現在の噛み合わせは湾曲しており、問題が大きくあります。
また、基本的に長い年月の間には、噛み合わせは低下してきます。
この患者様も噛み合わせが大きく低下(低くなっている)していたのです。
高さを含め 正しい噛み合わせに修正することも今回の治療の大きな目的です。
先にも説明しましたように現在の状況に戻りますが、
上顎の右側は、虫歯 と歯根破折 、
下顎左側は歯根破折 を起こしていました。
この2歯は抜歯になります。
それぞれの部位を拡大して見てみましょう!
まず、上顎右側です。
黄色丸の部分を拡大したのが以下のレントゲンになります。
右側(レントゲン写真なので反転してあります。図で右と書いてある方です)は、歯根破折 しています。
しかし、他にも問題がありました。
右側から2番目と3番目は、虫歯が大きく進行している状態でした。
左側は根の先に膿みが溜まっている状態です。
この患者様は本当にさまざまな問題を大きく抱えていたのです。
次に下顎左側です。
この黄色丸部分を拡大してみましょう!
レントゲン上で黒っぽくなっている部分は、
歯根破折 により感染したことによって、
歯の周囲の骨が吸収(溶けてしまった)したのです。
本当は、これほど骨吸収を起こす前に抜歯が必要なのです。
骨吸収を起こすと 抜歯した後の治療が大変になるのです。
今回 歯がダメ(抜歯)になった理由をまとめます。
1.神経がない歯があまりにも多いこと!
これは、将来的に大きな問題を残します。
2.噛み合わせが低かったり、曲がっている!
こうしたことは、さまざまな問題を引き起こします。
ただし、現実問題として 噛み合わせを改善させることは
難しいことがあります。
基本的に噛み合わせは、口腔内全体の問題であるため、
全ての被せ物を撤去したりすることが必要な場合があります。
また、歯を削っていないような天然歯の場合には、
矯正治療によって歯の移動を行うことが必要になる場合もあります。
3.左右の奥歯が欠損している!
現在は、義歯(入れ歯)を使用していますが、
このままでいると残っている歯に負担が加わり、
さらに多くの歯を失うでしょう。
現在義歯を使用している方で、
残っている歯が神経がない歯がある場合には、
注意が必要です。
ダメになったのは、当然の結果だったのです。
神経がないことは、今後悔しても しかたがないことです。
もう一度神経が蘇るわけではありません。
それよりも 今後被害を拡大させないことです。
治療計画は、患者様のご希望も含めて以下のようになりました。
1.×印の歯は抜歯!
2.欠損部は、インプラント治療を行う!
3.噛み合わせの治療と虫歯の治療のため、全ての被せ物を撤去し、
新しく作成する。
こうなるとかなり大掛かりな治療になります。
どこまで治療を行うかは、患者様のご希望をふまえ決定されますが、
もし、今回欠損部の治療のみを行った場合には、
近い将来にはさらに多くの歯を失うでしょう。
ここでようやくインプラント治療の話しになります。
インプラント治療を行うにあたり さらに大きな問題がありました。
まず、上顎右側です。
いつものように 骨吸収の状態を分かりやすくするために
下顎の 骨吸収の状態を線で書いたのが以下のレントゲンになります。
青線が骨吸収を起こす前の骨の位置です。
赤線は、現在の骨の位置です。
さらに わかりやすくするために、
骨吸収部位を赤色で表示します。
さらに骨吸収が大きいのが分かるかと思います。
骨吸収以上に問題があったのが、上顎洞という存在です。
上顎洞という空洞は、骨ではなく、穴が開いているのです。
いつもこのブログをご覧になっている方はもうすでにご存知のことと思います。
上顎洞の詳細は、以下を参考にして下さい。
上顎洞
上顎洞という空洞をさらに分かりやすくするために緑色で塗りつぶしてみましょう!
赤線と緑色の間が骨の存在する部位です。
ほとんど骨が残っていません。
この状態ではインプラントを埋め込むことはできません。
インプラント本体が上顎洞の中に突き抜けてしまいます。
もし、上顎右側の奥歯にインプラントを埋入するためには、
この上顎洞の中に骨移植を行うことが必要です。
この治療法をサイナスリフト法(上顎洞底挙上術) と言います。
この治療はかなり大変です。
とくに今回の患者様の場合、移植する骨の量が非常に多く必要になりますので、負担もかなり大きい治療になります。
サイナスリフト法(上顎洞底挙上術) が必要になること や 治療の大変さ等の説明を患者様に致しました。
その結果、大変な治療は避けたいとのご希望もあり、以下のような治療計画になりました。
骨吸収の大きい部位には、無理をしてインプラントを埋入することは止めました。
そのため、欠損部の手前に2本のインプラントをソケットリフト法 とスプリッティング法(リッジエクスパンジョン法) 、GBR法(骨増大法) を併用してインプラントを埋入する計画を立てました。
そして、その奥には、歯(セラミック)を1歯分延長させる形で被せ物を行いました。
つまり、2本のインプラントで3歯分を支えるのです。
こうした治療法をカンチレバー と言います。
次に下顎左側です。
ここも問題点が多かったのです。
本当に大変な症例でした。
先程と同じように 骨吸収の状態を分かりやすくするために
下顎の 骨吸収の状態を線で書いたのが以下のレントゲンになります。
青線が骨吸収を起こす前の骨の位置です。
赤線は、現在の骨の位置です。
これも骨吸収部位を赤色で表示します。
骨吸収が本当に大きいのが分かると思います。
この骨吸収が大きい部位は、抜歯後にインプラントを埋入しない計画にしました。
つまり、下顎左側の5歯欠損については、
3本のインプラントを埋入し、5歯分の被せ物を作製する方法です。
これもカンチレバー という方法ですね。
通常は、このような治療計画を立てます。
なぜかというと骨吸収が大きい部位にインプラント治療を行う場合、
やはり大変だからです。
また、骨吸収が大きい部位に無理にインプラントを行うと
治療後にもリスクを抱えることが多いのです。
そのため、私はいつも無理しないで、骨がある部位にインプラントを埋入するような治療計画を立てることが多いのです。
しかし、今回は違いました。
抜歯後に歯肉の退縮がかなり起こり、
もし、このままこの部分をカンチレバー にした場合、
審美的に問題が起こったり、
清掃が難しくなることが考えられたのです。
そこで骨吸収の大きい部位にGBR法(骨増大法) を行うことにしました。
最終的な下顎左側のインプラント治療計画は以下になりました。
治療計画だけでも大変な状態の症例です。
最終的には、以下のようなプランになりました。
噛み合わせの改善と虫歯治療のため、全ての被せ物は撤去しました。
話しが長くなってしまったので、ブログの文字数制限になってしまいましたので、次のレントゲンは治療終了後になります。
これから重要なことは、神経がない歯をどれだけ管理できるかです。
治療費
上記の症例をインプラントモニターで行った場合の治療費は以下になります。
インプラント 1本 160.000円(消費税別)
被せ物(白い歯) 1歯 100.000円(消費税別)〜 になります。
治療費をさらに抑える方法として 被せ物を金属製にする方法があります。
金属製の被せ物は、1歯 70.000円(消費税別)になります。
当医院のインプラント治療費用の中には、
治療中のレントゲン撮影や薬代、
土台(アバットメント) の費用、
仮歯 の費用、
治療経過のレントゲン撮影、
セラミック等の被せ物の費用、
スプリッティング法(リッジエクスパンジョン法) 、
OAM(大口式)インプラントシステム 、
GBR法(骨増大法:インプラント埋入と同時の場合) 、
ソケットリフト法 の費用、
静脈内鎮静法(眠っている間に終了します) の費用も含まれています。
治療計画以上の追加費用はありません。
全て含まれた費用です。
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