患者さんに優しいインプラント治療:その6
4/21(月曜日)です。
今日も前回の続きで、『患者さんに優しいインプラント治療:その6』になります。
優しい治療 その6:治療のゴールをきちんと設定する
難症例であれば、あるほど治療は難しくなります。
特に前歯部のように審美性が重要視される場所は、骨の状態によっては、一番難しいケースになります。
骨の幅や高さが少ない場合には、 『GBR法』を行ったり、
(GBR法についてはその1で書いたことです)
歯肉の厚みが薄い場合には、 歯肉結合組織移植等を行います。
ここで、歯肉結合組織移植について簡単に説明したいと思います。
歯肉が薄いと、治療後に歯肉が退縮する可能性が高くなります。
歯肉が下がってくる(退縮する)とインプラントの金属部分が見えてくることがあります。
奥歯の場合であれば歯肉の退縮がある程度起っても審美的に大きな問題を生じることはありませんが、
前歯では問題となります。
歯肉結合組織移植とは、歯肉退縮の予防策として歯肉の厚みをあらかじめ増やす(増大させる)治療法です。
それでは、大変な思いをして、こうした 『GBR法』や 歯肉結合組織移植を行えば、
100%審美的な結果を得られるか? ということですが、そうではありません。
術前の骨の吸収が著しい場合、100%の結果を得ることは難しい場合があります。
もちろん術前の骨や歯肉の状態が良ければ、前歯部であっても、
1回の手術で、腫れも痛みもなく、短時間で、簡単に治療が終了し、
審美的に100%満足できる結果を得ることも十分可能です。
しかし、術前の状態によっては、さまざまな治療方法を行っても100%の審美性を
獲得することはできないケースもあります。
その例えとして、以下のケースがあります。
上顎の前歯を歯周病で抜歯後、同欠損部は長期間 義歯であったとします。
歯周病に加え、欠損状態が長かったために、欠損部は、高さで5ミリ程度の
骨吸収があったとします。
高さ5ミリの骨吸収があるということは、そのままの状態でインプラントを埋入すると、
完成した被せ物の歯の長さは、元々歯があった状態より、5ミリ長くなるということです。
インプラント治療により得られた固定式の前歯は5ミリ長くなってしまたのです。
このようなことはよくあることです。
そのため、インプラント治療前に吸収してしまった5ミリ分の骨を増大するための
治療を行った方がより、審美的だということになります。
しかし、高さを5ミリ高くすることは治療としては非常に大変なことです。
大幅な 骨の移植手術が必要です。
そのためには、最低でも2回、場合により3〜4回以上の手術が必要です。
もちろん、骨の移植手術は大変なことですので、治療後の腫れも起る可能性があります。
また、治療期間は、1回の手術と比較すると何倍も長くかかります。
そうした大変な治療を行えば、100%完全に回復できるかと言えば、
100%元の状態に回復させることは難しいのです。
例えば、そうした治療を行えば、97%まで、審美性を回復できたとします。
しかし、何度も手術を行わなくても1回の手術で90%まで審美性を回復できるとすれば、
あなたならどちらを選びますか?
もちろん患者様の考え方には個人差がありますし、
例え、歯が長くなったとしても、元々笑った時に歯だけが見えて、
歯肉が見えない方は、歯が長い状態でも 笑っても人には見えませんので、
審美性に問題とならない場合があります。
患者様ご自身で唇を持ち上げ見れば、歯が長いことが分かる程度です。
話は長くなりましたが、治療前に術後の状態が分かっていれば、
患者様自身も少ない治療回数で治療を行うか?
大変さはあるが、最大限の治療をするのか?
を決めることができます。
当然のことながら、患者様は治療による大変さや治療結果については正確には分かりませんので、
私達歯科医師から状況の説明を行い、アドバイスをすることになります。
『治療のゴールをきちんと設定する』ことは、
患者様の負担を少なくする大切なことなのです。
治療の方法以外にもこうしたことが『優しいインプラント治療』になるのです。
次回のブログは4/24(木曜日)になります。
次回から新しいテーマになります。
『金具を使用しない審美性の高い義歯:ノンクラスプ義歯』です。
部分入れ歯は、義歯を固定するための金具が付きます。
これが、目立って“嫌”という方がいらっしゃいます。
次回ご紹介するテーマの『金具を使用しない審美性の高い義歯:ノンクラスプ義歯』はそうしたことがない義歯です。
お知らせ
4/25(金曜日)午後、4/26(土曜日)は 日本歯周病学会出席のため休診です。
今週(4/18〜20)のインプラント手術報告
今週(昨日)のインプラント手術の中から、
難しいケース であったり、
特殊なケース 等を抜粋して、紹介するコーナーです。
日々の臨床で、どのようなことを行っているか 知っていただきたいと思い 今年から始めました。
それでは、今週のインプラント手術の中から高度に骨が吸収した上顎にインプラント埋入を行った1症例について解説します。
部位は上顎の奥歯です。
骨の高さには問題ありませんが、幅に大きな問題がありました。
骨が吸収していたのです。
この骨吸収が起った原因は、 歯根破折でした。
歯根破折した状態で、放置していたため、感染を起こし、骨が吸収してしまったのです。
骨の幅は、約2〜3ミリ程度しかありませんでした。
インプラントの幅(直径)は約4ミリ程度ですので、2〜3ミリ程度の骨幅では、
インプラントはできないことになります。
そのため、骨の増大法が必要になります。
今回は、 『スプリッティング法』を行い、骨幅の増大を行い、さらに『GBR法』 も併用しました。
GBR法に使用した材料は 『自家骨』および、『人工骨』です。
使用した人工骨は 『β―TCP』 です。
β―TCPは完全に人工に生成された骨です。
『β―TCP』は人工的に生成された骨なので、それ自体が完全に骨になったりする
ことはありませんが、ご自身の骨や血液中の細胞が混ざることにより、
骨に置換しやすいものです。
また、完全人工生成のため、非常に安全性が高いのも特徴です。
日本において 『β―TCP』は、歯科よりも整形外科等で、
複雑骨折の治療等で普及している材料です。
また、 GBR膜 として吸収性の『コラーゲン膜』を使用しました。
吸収性膜は、歯肉とのなじみも良く、インプラント同時の GBR法 では
世界的に最も使用されている膜です。
吸収性膜なしでは、 インプラント同時GBR法は成り立たない治療法です。
日本人にインプラント治療を行う場合、骨の幅が不十分であることが多く、
多くのケースにおいて GBR法を行います。
当医院においてもインプラント治療の約半数はGBR法を併用しています。
吸収性膜なしでは、インプラント治療は行えないと言ってもくらい重要な材料です。
使用したインプラントは、
ストローマン・インプラント ( I.T.Iインプラント)
SLAタイプ 直径4.1mm 長さ12mmが1本、
直径4.1mm 長さ10mmが1本でした。
麻酔方法は虫歯の治療で行うような普通の歯科麻酔です。
インプラントの埋入本数が少なかったり、
インプラント手術に際し、さほど不安がない方にはこうした簡単な麻酔方法で
インプラント埋入を行います。
もし、インプラント治療に不安がある場合には、
『静脈内鎮静法』 にて麻酔を行います。
手術時間は、約20分程度でした。
今後の治療スケジュール
今後の予定としては、
1. 約7〜10日後に“抜糸”、
2. その後、 約3〜4ヶ月後に型を取り、
3. 型取りの後、 約10日で完成した被せ物を装着し、完了です。
意外に治療回数はかからないものなのです。
治療費
インプラントが1本21万円(税込)×2本、
最終的な被せ物は、
手前がハイブリッドセラミックで1歯105.000円(税込)×2歯分
ですので、合計630.000円(税込)になります。
この中には、治療中のレントゲン撮影や薬代、型を取る費用、被せ物の費用、
今回の 『スプリッティング法』、『GBR法』 の費用も全て含まれています。
先日、毎日新聞にこんな記事がでていましたので、紹介します。
神奈川県:飲食店もパチンコ店もホテルも…全部禁煙??条例提案へ
『神奈川県は15日、飲食店やパチンコ店などの娯楽施設も含め、
不特定多数が出入りするほぼすべての施設を全面禁煙とし、
違反した人や施設への罰則も設ける「公共的施設禁煙条例」案の
概要を明らかにした。
県は今年度中の制定を目指しており、成立すれば全国初だが、
たばこ販売業者らからは反発の声も上がっている。
県が発表した「基本的考え方」は、公共的施設を「不特定多数の人が
利用する施設で、室内またはこれに準ずる環境にあるもの」と定義しており、
飲食店、娯楽施設、学校、病院、百貨店、宿泊施設–など
16種を列記している。
施設内で喫煙した人や、禁煙の徹底を求める県の命令に従わない施設には罰金を科す。
ただ、事務所や共同住宅、施設内の休憩室や倉庫などは適用除外とした。』
どうなるのでしょうか?
喫煙しない私としては賛成ですが…
建物内での喫煙ができなくなると路上で喫煙し、『ポイ捨て』が増えると思いますが…
『禁煙条例』と『ポイ捨て』を同じレベルで考えてはいけませんが、
全ての人が、これを機に『禁煙』する わけではないので、
事実上、路上での『喫煙』は増え、
結果的に、『ポイ捨て』は増えるでしょう。
(毎日掃除している人もいるんだぞ!)
条例も大切ですが、どこで喫煙するかは、
『モラル』(もちろん健康も)の問題
ですから…
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大船駅北口歯科インプラントセンターインプラント 歯周病 専門医
神奈川県横浜市にある 日本歯周病学会歯周病専門医 国際インプラント学会認定医の歯科医院
I.T.Iインプラント認定医でもあり、 GBR法 、 サイナスリフト、 審美インプラント等の難症例も行います。
HPでは 治療費(費用)の説明や インプラント症例、 無料相談コーナーもあります。