重度歯周病が治りにくい方の原因について:その3

2017年 5月22日(月曜日)です。
このブログは「大船駅北口歯科 歯周病専門サイト」です。

今日のテーマは、
『重度歯周病が治りにくい方の原因について:その3』になります。
本日は「TCH」という話をしたいと思います。
上下顎の歯が接触する時間は、1日の中で20分以下と言われています。
通常 上下顎の歯が接触するのは、
物を噛む時(咀嚼(そしゃく))と
飲み込む時(嚥下(えんげ)) 、
会話時等に 瞬間的に触れるだけなのです。
それ以外の時間帯では、上下顎の歯が触れることは基本的にありません。
しかし、上記以外でも上下顎の歯が接触することがある場合があります。
その一つが 噛みしめ や 歯ぎしり 等の習癖です。
また、本を読んだり、パソコン 等 下を向く動作が多い方では、
上下顎の歯が自然に接触する機会が多くあります。
他にもスポーツ、車の運転、料理、洗髪、
「黙って集中して作業する行為」や
趣味に没頭する時 等でも
歯を接触させる機会があります。
さらに 緊張状態が続く方では、日常から歯を接触させる行為が続くことがあります。
上下顎の歯が触れない状態を「安静位」と言います。
本来 咀嚼時、嚥下時、会話 等で上下顎が瞬間的に触れる以外には、
この「安静位」を保つことが重要です。
例え 強く噛んでいなくても
上下顎の歯が触れると 口を閉じる筋肉(閉口筋)は働きます。
上下顎の歯が触れている間は、筋肉が働き続けるのです。
こうした歯の接触時間が長くなれば、なるほど筋肉は疲労してきます。
また、口を閉じる筋肉(閉口筋)が働くと、
顎の関節は上方に押さえつけられるので、顎関節の血流循環が悪くなります。
このことを例えると 
正座を長時間すると足がしびれることと同じようなことが起こっているのです。
こうした無意識中の歯の接触を
「TCH(Tooth Contacting Habit):歯列接触癖」と言います。
TCHは、東京医科歯科大学の木野先生らのグループが発表したことです。
東京医科歯科大学の顎関節治療部は、顎関節症で悩む患者さんが
年間2,000人以上来院する世界でも有数の顎関節治療医療機関であり、
長年の臨床研究から
多くの顎関節症状のある方にTCHの改善治療を行った結果、
非常に高い効果があったことが実証されています。
また、TCHが生じると 顎関節部に問題が起こるだけでなく、
歯は摩耗(歯がすり減る)し、
知覚過敏症が起こったり、
歯自体にダメージが加わりダメ(咬合性外傷)になったり、
神経のない歯では折れる(歯根破折)ことが起こりやすくなります。
食いしばり や 歯ぎしり 等 のことを専門用語で「ブラキシズム」と言います。
TCHも ブラキシズムの一種ですが、
食いしばりとの大きな違いは、噛む力の大きさ(強さ)と自覚の有無です。
最大咬合力の約70~80%の力で噛む(食いしばる)ことで
「噛んでいる」と自覚します。
通常 自覚のある 食いしばり の場合には、自覚した時点で噛むことを止めます。
また、筋肉自体も疲労するために、あまり長時間におよぶことはありません。
それに対してTCHは、単に歯が接触するだけですので、
噛む力の大きさ(強さ)は弱いです。
弱い力のために、自覚することが非常に少ないのです。
しかし、弱い力でも長時間作用すると顎関節部 や 歯 に問題が起こります。
こうした長時間の弱い力の方で問題が起こっている方が多いことが分かっています。
TCHの治療(改善方法)として、
認知行動療法を応用したリマインダー法
(TCHを行っているが確認する合図を設定する方法)が有効とされています。
治療方法については、患者様の症状によっても違ってきますので、
担当医にお聞きになって下さい。
臨床研究では、認知行動療法を応用したリマインダー法を行うことで、
数ヶ月から半年程度で多くの方でTCHが軽減してくるようです。
次回のブログでは実際の治療法について解説します。
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