こうして歯は失われる(歯周病の謎を解く):第1回目

2020年 6月15日(月曜日)です。
このブログは「大船駅北口歯科  歯周病専門サイト」です。
今日のテーマは、『こうして歯は失われる(歯周病の謎を解く):第1回目』になります。
今日からシリーズで始めていきますシリーズの第1回目です。
テレビ広告で知られた方もいらっしゃるかと思いますが、
日本人の7割が歯周病とのこと。
えっ
本当なの?
歯周病専門医である私がその事実を解説していきます。
そもそも
「日本人の7割が歯周病」
というのは本当なのでしょうか?
その数値はどこからでてきたのでしょうか?
この7割という数値は、
厚生労働省が実施している
歯科疾患実態調査からでています。
2016年に歯周病に関する調査が行われました。
その際に検査された項目が以下です。
1.歯周ポケットがある
2.歯石が沈着している
3.歯周ポケット検査時に出血がある
結果から報告します。
上記の3つがある人の割合を調査したところ
20〜34歳の方では、約60%
35〜59歳の方では、約70%
ということでした。
ちなみに
60歳以上になると
歯がなくなる人の割合が増えてきて
歯が1歯もない
いわゆる総入れ歯の方もいらしゃることもあり、
歯周病の割合は若干さがってきます。
こうした厚生労働省の歯科疾患実態調査をもとにして
日本人の7割が歯周病としています。
臨床の場で毎日診療を行なっている歯科医師の立場からすると
このデータは間違っているとしかいえません。
私は、歯周病専門医ですから
当医院を受診される方の中には、
歯周病が進行している方も多くいらっしゃいます。
それは、
歯周病で悩んでいたり、
他歯科医院で歯周病治療を行なっているが、治らない。

様々な理由があり、
インターネットで「歯周病専門医」を検索されて来院されるからです。
また当医院は「小児歯科」は標語していませんので
成人が主体です。
さらに「インプラント」も専門としていますので
歯周病で歯を失った方も
その欠損部の治療を希望されて来院される方も非常に多いです。
そのため、
一般の歯科医院よりは、歯周病の方の割合は当然多いと考えられます。
そでは実際には、歯周病の患者様は70%になるのでしょうか?
そんなにはいません。
また歯周病と言っても
非常に軽度の方もいらっしゃいますし、
中程度の方、
重度の歯周病の方もいらっしゃり、
すべて同じに考えることはできません。
そして、歯周病の方が70%となる最大の理由があります。
それは日本の保険制度にあります。
日本の保険制度では、
基本的に病気に対して保険が適応されます。
人間ドックによる検査が
保険が利かないのと同じです。
*注意:人間ドックの検査結果から病気がわかった場合には
一部検査適応になる場合もあります
歯科で言えば、
痛いとか
腫れたとか
穴があるとか
歯が欠損しているとか
そうしたことです。
そのため、
歯科医院を受診して
「痛み等なんも問題がないけど 検査してほしい」
という場合には基本的に保険は適応されません。
歯周病も同じです。
歯肉の腫れ や 痛み 等なにかの問題がないかぎりは
基本歯周病の検査も保険が適応されません。
そのため、
保険でクリーニングを行う際には、
歯石が付着していたり、
歯周ポケットがある
検査時に出血がある
等の問題点がある場合には、
「歯周病」という病名をつけます。
保険上、
歯周病の進行程度を分類することはありません。
単に歯石が多少付着しているだけでも
非常に歯周病が進行している場合でも
同じ歯周病です。
日本の歯科医療に対する保険では、
この病名をつけることが必ず必要になります。
*疑いという診断名もあります。
そのため、クリーニングの際には、
「歯周病」という病名がつきます。
*歯肉炎という歯周病の進行前の段階の病名もあります。
結果的に
日本人の成人の7割が歯周病ということになってしまうのです。
もちろん
定期的に歯石を除去したり、
歯を滑沢に研磨する行為は、
予防という点では非常に優れています。
メインテナンスの有効性も数多く報告されています。
*今後 このシリーズでもメインテナンスの重要性について解説予定です。
こうしたクリーニングが保険で行われるということは
日本の健康保険のすばらしいことです。
海外の保険が適応されない地域では、
歯周病の検査なしで
クリーニング(歯石除去)だけで約2万円するのが普通です。
本日のまとめです。
日本人の7割が歯周病というのは、
日本の保険診療では
歯石除去等のクリーニングの際には、
歯周病の検査(歯周ポケット検査)を行い、
歯周ポケットに問題があったり、
出血があったり、
歯石の付着があったりした場合には
歯周病という病名をつけて
クリーニングを行っているため、
軽度の歯周病の方でも
重度の歯周病の方でも
同じ歯周病となってしまい、
結果的に日本人の7割が歯周病ということになっているのです。
けして7割の方が
歯周病の本格的な治療が必要な状態ではありません。
歯周病専門医の当院でも
歯周病の本格的な治療が必要となる患者様は、
全体の30〜40%程度であると思います。
しかし、年齢とともに
歯周病は悪化傾向が高くなりますので
40歳以降の方は、
歯周病に問題がない方でも半年に1回、
実際に歯周病治療を受けれた方では、3ヶ月に1回程度、
非常に再発リスクの高い歯周病患者様では1ヶ月に1回程度
のメインテナンスを受けていただいた方が良いでしょう。
歯周病にまったく問題がなく、
虫歯のリスクも低い方では、
1年に1回のメインテナンスでも良いかもしれません。
次回のテーマは、
「汚れがついていると必ず歯周病になってしまうのか?」
という話です。

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