重度歯周病(侵襲性歯周炎)
2015年11月2日(月曜日)です。
このブログは「大船駅北口歯科 歯周病専門サイト」です。
始めに休診案内です。
11月14日(土曜日)
11月15日(日曜日)
は休診となります。
CAD/CAMという器械の学術セミナー参加のためです。
当医院では、3〜4年程前から
院内でコンピューターを使用したオールセラミック作製を実施しています。
これにより、今までのオールセラミックより
圧倒的に治療費を下げることが可能となりました。
半額以下です。
通常は、オールセラミックは型を取り、
それを歯科技工所という場所に作製を依頼するのですが、
当然のことながらオールセラミックを作製するために
コストがかかります。
こうした作業を院内で行なうことで
格段にコストを下げることが可能となったのです。
また、従来のセラミックは、
その作製自体が非常に熟練される作業であり、
作製する歯科技工士の技術レベルに依存されます。
技術レベルの高い歯科技工士が作製するセラミックは、
当然のことながらコストも高いです。
コストの安いセラミックは、
まだまだ熟練されていない若い歯科技工士であることもあります。
また、稀ではありますが、
人件費の安い海外に
セラミックの作製を依頼することもあるようです。
セラミック作製は、完全なるオーダーメイドであり、
その精度は、作製する技術者に完全に依存します。
こうしたセラミック作製に関して、
近年大きく変わってきています。
先に説明しましたCAD/CAMという装置が普及しているからです。
CADとは、
Computer Aided Design
のことで、
コンピュータ支援設計と言われます。
従来全て手作業で作製されていたセラミックですが、
歯を削った状態をスキャナーで読み込み、
それをコンピューター上で設計する方法です。
コンピューターで設計する作業は非常に簡単です。
スキャナーで読み込まれた歯型は、
PC上に記録された莫大な歯のデーターを元にして
自動的にセラミックのデザインが決定されます。
その間 数秒です。
今までの手作業で作製されるセラミックは、
このデザインをを決めるまで(ワックスアップ)数時間かかることもあります。
このステップがわずか数秒で完了です。
実際にコンピューターがデザインしたセラミックの外形を
若干修正することもありますが、
これも簡単であっという間で作製できます。
技術レベルの差もほとんどありません。
これがCADです。
また、このCADで作製されたデータを
実際のセラミックにする行程が
CAMです。
Computer Aided Manufacturing
の略です。
日本語では、コンピュータ支援製造と言われます。
簡単に言えば、
CADで作成された形状データを
ミリングマシンという器械がセラミックのブロックを削り出して
作製する行程のことです。
近年では、3Dプリンター というものを聞いたことがあるかと思いますが、
それと似たものです。
セラミックのブロックを削り出すことで多くのメリットが生まれます。
今までのセラミックの作業は、
職人が瀬戸物の お皿 や 壷 等を作製することと似た作業で、
一つ一つ手作業で作製するため、
品質に多少の差がでます。
しかし、セラミックのブロックは品質のバラツキがほとんどないのが特徴です。
そのため、歯科技工士の技術レベルに差が生まれません。
人の手が必要な行程は、ミリングマシンというCAMが
削り出したオールセラミックをきれいに研磨するだけです。
本当に簡単にできるようになりました。
小さなセラミックですと
コンピューターの設計(CAD)から
ミリングマシンでのセラミックの削り出し(CAM)まで
15分程度です。
従来のセラミック作製では、
完成まで
早くても1日から3〜4日はかかる作業が
わずかに15分です。
これが院内で完了するわけです。
また、ばらつきが少ないので
精度が非常に高いことも優れた点です。
時代は完全に
従来の手作業のセラミック作製から
CAD/CAMに以降しています。
もちろん患者様にも
治療費を格段に下げることが可能となりますので
非常に大きなメリットです。
話は長くなりましたが、
11月14日(土曜日)と11月15日(日曜日)は、
こうしたCAD/CAMのさらに向上のため、
2日間の勉強会に参加するのです。
当医院では、現在年間で
約600〜700歯のオールセラミックを
作製しています。
これにさらに
新しい技術の導入 や
新しいセラミックブロックの導入
さらに精度が高く、品質向上のためのセミナーに参加してきます。
11月からオールセラミックの価格も改正になりました。
今後、大きく拡大する ジルコニアセラミックの価格も下げることが可能になりました。
こうした技術の進歩により
品質の向上がはかられ、
治療費は安くなります。
また、セミナーで得られた情報は、HP や ブログ でアップします。
今日のテーマは、
『重度歯周病(侵襲性歯周炎)の患者様』になります。
ここ1〜2ヶ月間
重度歯周病について解説しています。
本日もそうした内容の続きです。
最近 重度歯周病患者様が非常に多く来院されています。
歯を指で軽く触るだけで グラグラ で取れてしまいそうな状態の方が本当に多いです。
重度歯周病の患者様です。
歯周病に患者様に対しては、
初診時に歯周病検査 を行い、
診断結果を説明し、治療方針について説明させていただきます。
もちろん 私は、歯周病専門医 ですので、
可能なかぎり グラグラの歯 であっても徹底した 歯周病治療 を行い、
保存することを行います。
しかし、全ての歯を残すことはできません。
当然のことですが…
そのため、完全に保存が不可能は歯は 抜歯の必要性があることを説明します。
ほとんどの患者様は、診断結果を理解していただけますが、
患者様の中には、抜歯と聞いただけで 強い不信感をもつ方がいらっしゃいます。
そうした患者様の考えには、
抜歯 = 悪いこと
という図式があるのです。
そのため、抜歯という言葉は、絶対に聞きたくない言葉なのです。
本日は、実際にあった症例についてお話します。
進行した歯周病を治療するためには、
まず現在ご自身の歯周病の状態をきちんと理解していただくことから始めます。
ご自身の病気の状態が分からないのでは、
治療を進めることはできません。
この病状をきちんとご理解していただくことが
治療の最初のステップなのです。
A さんのケースを紹介します。
Aさんは、初診時 多くの歯がグラグラ している状態でした。
Aさん は、グラグラしている歯をなんとか残したいというご希望がありました。
しかし、あまりにも骨吸収が進行しすぎているため、
多くの歯は、抜歯になってしまう状態でした。
ただし、すぐに歯周病治療を開始すれば、
何本かの歯は歯周病の進行を停止させることが可能な状態です。
そのため、Aさん には、
『完全にダメな歯は抜歯をして、残る可能性がある歯を徹底して治療しましょう!』
とお話させていただきました。
しかし、Aさん は、
『絶対に1本も抜歯したくない!、抜歯するくらいなら このままにしたい!』
また、『ダメもとで歯周病の治療を行ってほしい!』との希望もございました。
私は、 歯周病専門医ですから、毎日のように重度歯周病の患者様が来院されます。
そして、進行した歯周病であっても治療を行うことにより、改善させることも可能です。
しかし、先程も説明しましたように
全ての歯周病が治療できるわけではありません。
あまりにも進行しすぎてしまった状態では、治療は不可能です。
この場合には、抜歯になります。
もし、治療を行っても治せない状態の歯を 無理に治療しても 治らないだけでなく、
歯周病の感染は、他の歯へも転移してしまいます。
その結果、さらに多くの歯を失うことになります。
歯周病の治療で大切なことは、
治療可能な歯 と 治療不可能な歯 をきちんと判断することです。
もし、適切な判断がでずに、
患者様の『抜きたくない!』という希望のみで治療方針を決定すると
さらに多くの歯失う結果になってしまいます。
どの歯が治療が可能で、
どの歯が治療が不可能なのか
を適切に診断することが重要なのです。
その上で、歯周病の治療が開始されます。
残る可能性がある歯は徹底して歯周病の治療を行うことにより、
歯周病を改善させることが可能ですし、
歯周病細菌が他の歯へも感染することを防ぐこともできるのです。
このような適切な判断ができるからこそ、 歯周病専門医と言えるのです。
『ただ単に 抜かない!』というだけでは、本当の治療には、ならないのです。
例えば、ガン(癌)という病気が発見された時に、
薬(抗ガン剤)で治療するのか?
放射線療法で治療するのか?
外科的に切除するのか?
という判断がでてきます。
外科的に切除する必要性があると診断された場合、
患者様に外科的切除の必要性をご説明します。
早期に外科的に切除しないと
他の臓器に転移してしまうからです。
進行を停止させないと結果的に、手遅れになってしまいます。
歯周病も細菌感染ですから、口腔内から歯周病細菌を排除し、感染を防ぐことが重要です。
話は、先程の患者様の話しに戻りますが、
完全に保存することができない歯が何本かありましたが、
患者様は、
『絶対に1本も抜歯したくない!』
と強い希望をお持ちでした。
現時点で、ダメな歯はダメとして、きちんと治療すれば、
ある程度の数の歯は残すことが可能です。
歯が何本か残れば、残った歯を土台として、固定式のブリッジにすることも可能な症例です。
固定式のブリッジになれば、食事に困ることもありません。
この時点が大きなポイントになるのです。
しかし、このまま単に抜歯をしない ということのみであれば、
あと数年でほとんどの歯を失う結果になります。
いわゆる総入れ歯になってしまいます。
また、歯周病が進行して、抜歯となれば、歯を支えている骨が吸収しますので、
その後の治療(義歯)が難しくなってしまうのです。
顎の骨が吸収すると義歯自体も合わなくなってしまいます。
数年後には、ほとんどの歯を失うだけでなく、その後の食事も困難になってしまいます。
義歯(入れ歯)が合わないのですから…
この時になって始めて
『あの時治療をしていれば良かった…』と思うのです。
義歯(入れ歯)をしていて、義歯が合わず、困っている患者様のほとんどが
『もっと歯がダメになる前に治療をしていれば、良かった』
と後悔しているのです。
歯を失って始めて気がつくのです。
歯周病であっても十分治せる段階はあるのです。
重要なのは、このポイントを間違えないことです。
Aさん も
「歯周病専門医 だから どのようなダメな歯であっても きっと治すことができる!」と期待して来院されたはずです。
しかし、私の「抜歯が必要な歯があります!」
という説明を受けた結果、次回の予約を取らずに
未来院となってしまいました。
この方は、このまま抜歯を拒めば
確実に数年後には、
感染はさらに進行して、
ほとんどの歯を失うことでしょう。
先にも説明しましたように
重度歯周病であった場合には、
状況により全ての歯を100%残すことはできない可能性があります。
重度歯周病の場合、抜歯になることもあるのです。
この時にどれだけ 歯周病について理解されるかが大きなポイントなのです。
ご自身の病気の内容をきちんと理解することができないために
「きっと抜歯しないで治療を行ってくれる歯科医院がきっとあるはず…」
と考え、歯科医院を転々とします。
全ての歯を治せない状態もあるのです。
しかし、早い段階で適切な治療を行なえば、
十分残せる歯もあるのです。
時間をかけて、歯科医院を転々とした結果、
さらに歯周病は他の歯へも転移し、
さらに多くの歯を悪化させてしまうことになります。
Aさん も本当に残念な結果であると思います。
Aさん はおそらく後 数年すると多くの歯を失う結果になってしまいます。
今治療すれば、最小限の範囲での抜歯で済むはずなのです。
本当に残念なことです。
これは、先にも書きました
癌という病気を考えていだければ
お分かりになることと思います。
病気は早期発見、早期治療が大切です。
重度歯周病患者様の中には、
ご自身の考えが最優先であり、
「ご自身の考え以外は、絶対に悪いこと!」
と考えられている人がいらっしゃいます。
本日の話しはちょっと厳しい話しになってしまいましたが、
重度歯周病の患者様の来院が途絶えるたびに
「あのままにしておけば、もっと悪化してしまうのに…」
「今 きちんと治療すれば、十分治るのに…」
「ダメな歯を抜歯することにより 他の歯への感染を防げるのに…」
と思うのです。
今回の話しは、当然のことながら
我々歯科医師側は、
患者様に治ってほしいと思うからこその
警告なのです。
「専門家の意見をきちんと受け入れて 理解すること」
これも重要なことなのです。
私は歯科医師ですが、
内科 や 外科の先生の中にも
「もっと早く治療していれば、十分治ったのに…」
と考えられる患者様を多く見られると思います。
どのような病気もそうですが、
早期発見、早期治療が重要です。
次回も重度歯周病について解説します。
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