歯周病? 誤診? 詐欺?患者様の不安をあおる歯周病治療

2015年 7月27日(月曜日)です。

始めに夏期休診の案内です。
8月12日(水曜日)〜17日(月曜日)まで休診となります。

多くの歯科医院ではお盆休みがありますので、
痛み等問題のある方は、早めに治療開始された方が良いでしょう。

このブログは「大船駅北口歯科 歯周病専門サイト」です。

このところずっと金属アレルギーの話をしていましたが、
久しぶりに歯周病の話になります。

今日のテーマは、
『歯周病? 誤診? 詐欺?患者様の不安をあおる歯周病治療』になります。

今回の話は数年前にもした内容なのですが、
最近も同じようなことが起こっているので
情報発信という意味でも話たいと思います。

最近 歯周病の患者様が多くいらっしゃいます。

当たり前ですが、それは私自身が歯周病の専門医だからです。

もちろんご来院された患者様は、
歯周病を治したいとの希望があります。

当然です。

そこで 患者様の主訴をお伺いし、
歯周病の検査を行ないます。

そこで 患者様の訴えと歯周病の検査結果に
大きな違いがあることが本当に多いです。

患者様の主訴としては、

「他の歯科医院で 顕微鏡で歯周病細菌を見せてもらいました。」
「顕微鏡でみたら細菌がウヨウヨいました。」
「先生は、細菌がいっぱいいるので、歯周病治療が必要です。」
とおっしゃいました。
そして、
「歯周病細菌を殺すのみ薬を服用し、歯周病治療が必要です。」
というものです。

また
「重度の歯周病のため、抜歯が必要な歯があります。」
「徹底した歯周病治療を行なわないと歯が抜けてしまいます。」

と言われた方もいらっしゃいました。

共通していることは、
重度歯周病であったとの診断でした。

しかし、私自身が検査をしてみると
意外なことが分かりました。

当医院では まず歯周病検査 から始めます。

当たり前ですが、どの程度の歯周病があるのかを調べることが基本です。

歯周ポケット検査 と レントゲン検査を行なうことで
歯周病の進行程度は確実に分かります。

他にも噛み合わせの問題がある方や
生活習慣に問題があったり
等 の問題がある方は、さらに詳細な検査が必要になります。

まずは、歯周ポケット検査を行ないます。

歯周病検査の基本中の基本の
歯周ポケット検査 です。

inspection1

そして、レントゲン検査です。
スライド3

(上記のレントゲン写真は参考の写真であり、今回の問題となっているレントゲン写真ではありません)

しかし、こうした歯周病の検査を行ったところ
歯周病の問題がない方が多いのです。

多くの方では
健康な状態でした。

歯周ポケットも正常値ですし、
レントゲン写真からも問題となるような骨吸収は認められません。
(上記のレントゲンは重度歯周病の方の参考資料です)

「ん ?」
「歯周病?」
というような状態です。

ここで問題なのは、
歯周病でない状態の患者様を
なぜ歯周病と診断し、
抗生剤まで服用させて治療が必要であると言ったのか?
ということです。

こうした患者様が数人どころではありません。

またメール相談でも
内科的歯周病治療:飲み薬(抗菌薬)による歯周病治療
についての問い合わせが多くあります。

こうしたことは、
数年前にも同様のことがあり、
その時にも ブログでも警告したことがあります。

なぜ歯周病の検査で問題がない方に
「重度歯周病」と診断したり、
「抜歯が必要」と説明したりしたのでしょうか?

明らかに問題です。

誤診ではすまされません。

これは、過剰診療というレベルではありません。
病名のねつ造ですから…

健康な状態 もしくは 多少の歯周病のある程度の状態 にも関わらず、
顕微鏡で細菌を見せ、患者様の不安をあおり、
本来必要のない治療を強要する行為であり、決して許されることではありません。

実際に検査を行い、
歯周病に問題がないと診断された患者様には、
「歯周病の問題はありませんので、治療の必要性はありません。」
と説明を行ないました。

多少の歯周病のレベルの状態の方には、
通常の歯周病で問題がないことを説明致しました。

当然ですが、
検査結果で問題がない もしくは 多少の問題がある程度ですから…

歯周病は、血圧とは違い、1日の中で変動が大きくある病気ではありません。

例えば、
朝 重度歯周病で、
夜 歯周病が軽減している

ということはありません。

歯周病の検査である 歯周ポケット検査は、
急性的に腫れたりしないかぎり
1日の中で大きく変動することはありません。

さてなぜこのような 誤診(?)
が生じたのでしょうか?

また先ほど説明しました内科的歯周病治療:飲み薬(抗菌薬)による歯周病治療 というのは、
適切な診断と適応を守らないと使用する意味はありません。

適応症についての詳細は、以下のページをご覧になって下さい。
内科的歯周病治療:飲み薬(抗菌薬)による歯周病治療

上記のページを読んでもらえば分かりますが、
「薬を飲めば、歯周病が治る!」
というような魔法の薬はありません。

適応症をきちんと守らないと
効果がないだけでなく、逆に問題も起きてしまいます。

誤った薬の使用方法は絶対に避けなければいけません。

内科的歯周病治療:飲み薬(抗菌薬)による歯周病治療 の適応症を簡単に説明すると
以下のような患者様に対して抗菌療法を行うかの検討をします。

必ず行なうわけではありません。

抗菌療法を行うかの検討をするのです。

a. 通常の歯周病治療を行っても改善が認められない方
(ただし、歯磨きが十分にできていることが前提です)

b. 年齢に対して歯周病が非常に進行している方
(広汎型重度歯周炎、広汎型侵襲性歯周炎)

c. 全身的病気(血糖値不良の糖尿病、免疫機能低下患者、虚血性心疾患)を有する中程度以上の歯周病の方

上記のような歯周病のタイプでは、
通常の歯周病治療では改善されにくい場合があります。

しかし、進行した重度歯周病であっても
通常の歯周病治療で十分改善するケースもありますので
どのような対応になるかは、各ケースによって変わってきます。

通常の歯周病治療では改善が認められない場合等には、
歯周病治療と併用して歯周病抗菌薬を服用することにより
歯周病の効果を高めるのです。

きちんとした適応症が必要です。

それではなぜ歯周病でもない方に対して
歯周病であるという診断があったのでしょうか?

なぜ誤った診断をしたのか?
ということは正確には分かりませんが、
考えられることとして、
医院の利益の問題が考えられます。

当然 歯周病に問題がない方では
治療は必要ありません。

そうなれば治療費はかかりません。

普通の話です。

しかし、それでは歯科医院には利益がありません。

そのため、病気でない方を病気としてしまうのです。

これはあくまで私の考えですので、
正しいかどうかは分かりません。

しかし、歯周病の検査を行なえば
明らかに問題がないということが分かります。

歯肉が腫れて来院される場合で、
患者様が
「歯周病で歯肉が腫れているので 歯周病の検査(治療)を行ないたい」
と言われることがあります。

歯肉が腫れる場合には
歯周病だけが原因ではありません。

根尖病巣という歯の根の中に膿みが溜まってしまう病気もありますし、

歯根破折という 歯の根が折れたり、亀裂が入ることで
歯肉が腫れることもあります。

他にも原因はあります。

そのため、
上記のような病名と診断された場合には、
その病状にあった治療を行なわないと
当然のことながら治りません。

中には、歯周病に問題がないにもかかわらず
歯周病治療に数十万円かかると言われた方もいらっしゃいました。

もともと さほど歯周病の問題がない方なのに
(まったく問題がない方もいらっしゃいました)
高い治療費を払わされて、
効果がないだけでなく、問題が起こることもあるのにです。

必要のない病状に対して内科的歯周病治療 を行うと以下のような問題も引き起こす可能性があります。

1. 薬剤耐性(薬剤に対して抵抗性を持ち、これらの薬剤が効かない、
あるいは 効きにくくなる現象のこと)が起こることがある!
耐性菌については、以下のページを参考にして下さい。
抗生剤と耐性菌の話し

2. 薬物アレルギーが起こる可能性がある!

3. 他の服用している薬との相互作用がある!
例えば、ワルファリン(抗血栓薬)を服用されている方が
ペニシリン系の抗生剤を服用すると作用を増強します。

4. 菌交代現象が起こる可能性がある!
菌交代現象とは、抗生剤の長期投与等により正常細菌が減少し、
通常では存在しない細菌や少数しか存在しない細菌が異常に増殖する現象のこと。

利益を得るための過剰診療としか言えません。

許しがたいことです。

顕微鏡を使用することは、患者様に歯周病ということを知ってもらうために
有効な検査です。

当医院でも必要があれば行います。

ただし、健康な状態の方もで 顕微鏡を用いて検査を行えば、
細菌は見えます。

位相差顕微鏡で唾液 や プラーク(汚れ)を見れば
多くの場合、細菌は認められます。

問題なのでは、
その見えた細菌が問題となる細菌なのか?
口腔内に常在している細菌なのか?
ということです。

患者様が分からなからと言って
歯周病に問題とならない細菌を見せて、
不安をあおることは決して許されることではありません。

また、位相差顕微鏡で細菌が見えることだけで
歯周病と診断するのは間違いです。

もっと簡便で、簡単で
確実性の高い検査方法があるのですから…

そうした検査を行なった上で
位相差顕微鏡を使用することには意味はあると思います。

患者様ご自身も
「おかしいな」
と思われたら、セカンドオピニオンを受けられた方が良いでしょう。

複数の医療機関で同様の診断と治療方針であれば、良いのですが…

このようなおかしな診断は、
時々あることです。

本日のブログは終わりです。

このブログが始まって以来 毎週月曜日にアップしていましたが、
現在 毎週 大学病院で外来診療と講義を行うことになったため、
ブログの更新が不規則になると思います。
毎週ご覧になっていただいている方も多くいらっしゃるかと思いますが、ご理解いただければと思います。
できるかぎり毎週月曜日にアップしたいと考えております。

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