歯周病は治るのか?:その3

2012年9月 3日(月曜日)です。

このブログは、歯周病に関するブログです。
毎週月曜日 にアップしています。

今日のテーマは、『歯周病は治るのか?:その3』になります。

今までの2回で
歯周病の原因

中程度の歯周病
重度の歯周病
について解説しました。

重度の歯周病になると状況によっては抜歯が必要なことを説明しました。

以下の写真は、このブログで良く紹介するものですが、
重度歯周病のため、抜歯した後に写真を撮ったものです。
スライド1

こんな汚れが歯肉の中についているのです。
考えられますか?

多くの歯周病では、この汚れを取りきれれば、
歯周病の進行を停止させることができます。
この回の始め(1回目)でも解説しました歯周ポケット も改善します。
例えば、歯周ポケット 8ミリ、9ミリあったとしても 歯周病治療 により歯周ポケット が3ミリ以下に治る(改善する)こともあります。
しかし、元に戻らないものもあります。
それは 骨 です。
ご存知かと思いますが、歯周病になると歯を支えている骨が吸収 します。
この吸収した骨は、100%元の状態に改善することはありません。
そのため、骨吸収が進行した重度歯周病の場合、 歯周病治療 により歯周病の進行が停止したとしても 噛む力にどれだけ耐えきれるかが問題になります。
この話しは本日のメインになりますので、また後で解説します。

それでは、歯周病治療を行うとどこまで改善するのでしょうか?

どこまで治るかを説明する前に 以下のことは患者様ご自身で徹底して管理することが重要です。
以下の自己管理ができなければ、歯周病治療以前の問題です。

1. 徹底した歯磨きを行う
これは基本中の基本です。
現在 歯周病で悩んでいられるの中には、
「私は歯磨きは十分できている」
と思われているかもしれないでしょう。
私が歯周病の治療する方のほとんどは このように考えていらっしゃいます。
ほとんどの場合、ご本人が考えられている以上に磨けていません。
磨けていないからこそ歯周病になった可能性が高いのです。
もちろん 歯周病の原因中には、歯磨き(汚れ)以外の原因もあります。
しかし、できること(歯磨きを徹底した行う)は行うべきです。
毎食後、10分以上は、時間をかけ、
歯科衛生士による適正な指示にしたがい 行って下さい。

2 生活習慣をきちんと見直す
何度も書きますように歯周病は、生活習慣病です。
喫煙者は歯周病が治らない! と思って下さい。
禁煙は歯周病治療の第一条件と言えます。
また、口腔内も身体の一部ですから 健康な身体こそ 健康な口腔内になります。
食生活、睡眠、適度な運動、ストレスの少ない生活をできるかぎり心がけて下さい。

それでは、歯周病治療によりどこまで治るのかを解説します。
まず、歯周ポケット ですが、これは、治療によりほとんど治ります。
先にも解説しましたように もともと歯周ポケットが7〜8ミリあっても、
徹底して歯周病治療を行うことにより2〜3ミリ程度に改善します。
これは、歯周病治療により歯周ポケット内部に存在した
汚れ(歯周病細菌)を除去したことにより改善するのです。
しかし、治らないものもあります。
これは、吸収してしまった骨です。
吸収した骨は、基本的には元の状態には戻りません。
患者様から 以下のご質問を受けることがあります。
『骨再生治療のGTR法 や エムドゲイン法 を行うと骨が再生するのでは?』
GTR法 エムドゲイン法 は魔法の治療ではありません。
どのような状態の歯でも再生治療を行えば骨が再生するのではありません。
再生するための適応基準に当てはまれば 骨が再生することは可能です。
しかし、それでも100%元に戻るわけではありません。

基本的には、歯周病治療により吸収した骨の量は、増えません。

しかし、歯周病治療の目的は、歯周病の進行を止めることにあります。
歯周ポケット内部の細菌を取り除き、歯周病の進行を食い止めることにより、
悪化を阻止することが最も大切なことです。

次にグラグラした歯です。
歯周病の治療を行うとこの“ グラグラ ”は治るのでしょうか?

答えとしては、基本的には 歯のグラグラは治りません。

基本的には というのは、歯がグラグラする原因は、骨の吸収だけではなく、噛み合わせ 等 が原因になっている場合もあるからです。
こうした場合には、噛み合わせを治すことにより、グラグラがなくなることもあります。
また、吸収した骨も感染物質 を取り除く ルートプレーニング 『歯周外科処置(フラップ オペレーション)』 を行うことにより、回復(再生)することもあります。

問題なのは、グラグラした歯をそのままにしておくことです。
骨吸収により グラグラした歯 をそのままにしておくと、歯には負担がかかってしまいます。
このようなグラグラしている状態を『咬合性外傷』と言います。
簡単にお話すると『打撲』です。
歯周ポケットが改善しても『咬合性外傷』改善しなければ歯はダメになってしまいます。

そこで、グラグラしている歯 と そうでない歯 を 連結することが有効です。
ただし、グラグラしている歯同士を固定しても効果はありません。

問題となるのは、全体的にグラグラしていた場合です。
この場合には、全体的に固定することが有効です。
前歯のみ、奥歯のみだけで固定すると 固定した部分ごと グラグラ と動いてしまいます。
固定の具体的な方法としては、前歯部 と 奥歯 を連結することです。
こうした治療法を専門用語で“クロスアーチスプリント法”といいます。

歯周病の治療というのは、単に汚れを取れば治るのではありません。
このブログでも何度も話しがでている
「歯周病に効く薬」です。
よくコマーシャル や 雑誌の広告 等で
「歯周病に効く薬」という宣伝があります。
あのような薬を使用したからといって
以下の写真のような歯肉の中の汚れが取れることはあり得ません。
スライド1

ましてや 噛み合わせがなったり、骨吸収が回復することはありません。
早期に発見、早期に治療すれば、歯周病は十分治ります。
そのため、科学的根拠のない薬を使用したり、
自己判断を行うと結果的に歯周病は進行してしまいます。

歯周病専門医 でも全ての歯周病を治すことは不可能です。

歯周病を治したい人は、
まず適切な検査を行うことです。
治療はそこからになります。

次回のブログは、9月10日(月)になります。

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