SimPlantの導入 (コンピュータによる最先端インプラントシュミレーションソフト)

はじめに

インプラント治療において大切なことはきちんとした診査を行うことです。
特に骨の『高さ』や『幅』が少ない場合には骨を増大させるGBR法やソケットリフト法、サイナスリフト法、スプリットクレスト法(リッジエクスパンジョン法)等が必要になります。
こうした場合、どうしても通常のレントゲン診査だけでは骨の状態を詳細に知ることはできません。
通常のレントゲンとは専門用語で『オルソパントモグラフィー』や『デンタルレントゲン』と言われる撮影方法です。
こうしたレントゲンは最近ではデジタルレントゲンとなり、撮影被爆量も従来のレントゲンと比較してかなり少なくなっており、画像の鮮明度も高いものです。
ただし、こうしたレントゲンでもできないことがあります。
『オルソパントモグラフィー』や『デンタルレントゲン』は『平面』でしか、表すことはできません。
『平面』というのは私達が使用する『カメラ』と同じことです。
『カメラ』で撮影した写真はプリントしますが、もちろんそれは『平面』です。
『立体』ではありません。
骨の状態は『山』のようです。
つまり、凸凹しています。
山もあれば谷もあります。
骨も山のようにかなりの凹凸があります。
特に歯周病で抜歯した場合には骨はかなりの凹凸があります。
しかし、どんなに精度の良い『オルソパントモグラフィー』や『デンタルレントゲン』でも『平面』でしか表すことができないため、骨の吸収が多くあると考えられる場合にはどうしても診断が確実ではありません。

そこで模型のように『立体的』であり、また必要な部分が『輪切り』になっていれば、インプラント手術を行う際にはかなりの情報になります。
『CT撮影』は今までの通常のレントゲンでは診査できなかった状態を見れるものです。

CTについてさらに詳しく!

CTとは(Computed Tomography)の略で、レントゲン情報をコンピュータ処理し、撮影した部位を『立体的』や『輪切り』状態で見ることができる装置です。
『立体的』とは3D画像であり、『輪切り』とは野菜等を薄くスライスするようなことです。
薄くとはものすごく薄く撮影することができます。
約0.1ミリまでも薄くスライスできます。
インプラント治療においてはそこまで薄くスライスして撮影する必要性はありませんが、0.5~1.0ミリ程度まで薄くスライスした画像を使用しています。

また『CT撮影』は骨の情報以外にも『神経の位置』を確認することもできます。
特に下顎にインプラントを埋入する際にはこの情報は役立ちます。
安全にインプラント手術を行うためにはこの神経の位置を立体的に把握することは大切です。
骨の『高さ』や『幅』が十分ある場合には特に問題となることはありませんが、骨の状態が悪い場合には『CT撮影』は必要です。

『CT撮影』で骨密度の検査

上記では『CT撮影』により『立体的』で『輪切り』状態のレントゲン情報を得ることができることを書きました。
『CT撮影』ではインプラント治療においてさらに重要な情報を得ることができます。
その一つが『骨密度』です。
簡単に言えば、『骨の硬さ』です。
インプラントは骨に中にチタンでできたものを埋め込む治療です。
これは骨折した部位をチタンのプレートで固定するのと同じです。
骨には『硬い骨』と『柔らかい骨』があります。
『どちらの骨がインプラントに適しているか?』ということは難しいことですが、『硬い骨』と『柔らかい骨』のそれぞれの特徴を簡単にお話します。
基本的に『硬い骨』はインプラントにとっては良いことです。
それはインプラントの安定が良いからです。
良く患者様にお話する『例え』はインプラントは家を建てるための基礎の『柱』で、骨は柱が立つ、『土』です。
やはり、硬いしっかりとした『土』の上に柱を打ち込みたいですよね。
基本的にはインプラントもそうです。
『CT撮影』ではこのような『骨密度』の情報を得ることができます。

インプラントを行う際には骨の硬さがインプラントの治癒を大きく左右します。
上顎の骨は多くの場合軟らかいことが多く、インプラントの安定には適しているとは言えません。
しかし、軟らかい骨の方が血液の循環が良いことが多く、治りとしては良いということになります。
一方下顎は骨の質としては硬く、インプラント埋入直後の安定は良いのですが、硬い骨は血液の循環が悪いことがあり、治癒としては良くない場合があります。
しかし、硬いといってもその差はあり、非常に硬い骨でなければ得に問題は起りません。
『CT撮影』ではこの骨の状態を1ミリ以下の範囲で評価することが可能になります。
これは通常のレントゲン撮影では絶対に得ることのできない情報です。
骨の状態が悪いインプラント治療を行う際には大変役立つ情報です。

コンピュータによる最先端インプラントシュミレーションソフト

『CT撮影』はだいぶ前からあったもので、だいぶ前からインプラント治療の際にも使用されてきました。
しかし、実際に『CT撮影』したデータをインプラント治療のために処理するソフトはほとんどありませんでした。
2000年頃からそうした『CT撮影』したデータを処理する『インプラントシュミレーションソフト』のレベルが向上してきました。
また2005年頃から臨床においても十分利用できる『インプラントシュミレーションソフト』ができてきました。
これはインプラントの普及とともに向上してきました。
その先駆けが当医院でも使用している『SimPlant(シンプラント)』というインプラントシュミレーションソフトです。
この最先端インプラントシュミレーションソフトを使用するとさまざまなことができます。
例えば写真のように『顎の立体模型』を作製することも可能です。
写真の模型は下顎です。
模型自体を透明な樹脂で作製します。中に見える赤いものは神経です。
透明なことにより、神経の走行まではっきりと確認ができます。
この模型は原寸大ですので、担当歯科医師が、実際に治療前にシュミレーションでインプラントの埋入ができます。
あらかじめ患者様に行うインプラント治療を同じ条件でできるため、非常に有効な検査です。
これ以上の検査はないと言っても良いでしょう。
患者様とまったく同じ状態が再現できるのですから

最後に

『CT撮影』は全てのインプラント治療において行う必要性はありません。
その理由は少量ですが、『レントゲン被爆』があるからです。
私達が通常 虫歯や歯周病で行うレントゲン撮影による影響は非常に微量なもので、人体に影響を及ぼすようなものではありません。
こうしたレントゲン撮影を『デンタル撮影』や『オルソパントモ撮影』と言います。
どこの歯科医院でも通常行っている撮影方法です。
しかし、『CT撮影』はそうしたレントゲン撮影と比較すると何十倍以上のレントゲン被爆をします。
もちろん1回、2回こうした撮影を行っても直接人体に影響はありませんが、必要がなければ、わざわざ『CT撮影』を行う必要性はありません。
『CT撮影』が必要な場合は、骨の吸収がひどく、GBR法を行う必要性があったり、事前に骨の状態を把握する必要性があったり、上顎洞底挙上術を行うために上顎洞の形態を把握するためや、下顎の場合で、インプラント埋入予定部と神経(下顎神経)が近接している場合等です。
特に下顎では神経の走行状態や骨の形態をきちんと把握できないと大きなトラブルになります。
大きなトラブルとは『下顎神経の損傷』や『血管の損傷』等です。
『下顎神経の損傷』を起こすと、知覚がなくなったり、しびれが残ることがあります。
『血管の損傷』は最も重大なことで、出血多量を引き起こす可能性があります。
もちろんこうしたことは通常起ることではありませんが、安全第一ですから、通常のレントゲン撮影では診断が確実でない場合には『CT撮影』を行う必要性があります。
また『CT撮影』だけでなく、先程あった『シュミレーション模型』があれば、もっと良いでしょう。
ただし、こうした『シュミレーション模型』の検査は通常のインプラント診査のオプションであり、別途診査料金がかかるのが一般的です。
また『CT撮影』自体もほとんどの歯科医院では院外での検査となります。
CTレントゲン装置は非常に高価なもので、歯科用の小さなもので、3,000~4,000万円程度、医科用の通常のCTレントゲン装置となれば、1~3億円はします。
インプラント治療において必要となるデータの違いにより歯科用と医科用を使い分けています。
例えば、『骨密度』を知りたい場合には医科用CT装置でないとダメです。
しかし、とても個人では購入できる範囲の装置ではありません。
1億円以上のレントゲン装置なんて一生かかっても購入は無理ですから…
そのため、通常は『CT撮影』が行える施設(病院)に行っていただき、データのみを病院から歯科医院に郵送してもらいます。
そのデータを歯科医院で解析します。
このような解析ソフトはいくつかのメーカーにより発売されており、まだ少ないですが、個人の歯科医院でも解析ソフトだけは持っているところもあります。
2004年にCTレントゲン装置を販売しているメーカーと話をしたことがありました。
その時に神奈川県で3~4件の歯科医院ではCTレントゲン装置を購入しているという話を聞きました。
すごいですね。
もちろんそうした設備投資費用は治療費にもかかってきます。
私なら莫大な設備投資をして、治療費の値上げをするのなら、院外で『CT撮影』をしてもらい、治療費は変えないもしくは安くする方を選びます。
莫大な設備投資は医院経営を圧迫します。
あまりリスクを負っての診療は嫌ですからね。
余談が長くなりましたが、『CT撮影』は現在のインプラント治療においてなくてはならない診査の一つになってきました。
必要であれば、ためらわず行うことが必要です。

また歯科用小型X線CTについてはこちらを御覧になって下さい。 CTレントゲン撮影とは