インプラント治療
インプラントにおける麻酔
極力無痛で治療を行うために!
歯科治療において嫌なこととして『痛み』があります。誰しも痛いことは嫌なもので、どうしても足を遠ざけてしまいます。
例えば虫歯はそのまま削ると痛みがありますので、麻酔をします。この麻酔が嫌なものです。
しかし、麻酔はその仕方により痛みはほとんど感じない状態で行うことができます。
麻酔の痛みには2つあります。
一つは針を刺す時です。
『チクッ』とする痛みです。
この痛みに対しては『表面麻酔』の使用が有効になります。
これは麻酔をする前に歯肉に麻酔薬が入った塗薬をつけます。塗薬をつけ、30秒~1分程度すると歯肉の表面が麻痺してきます。
この段階で麻酔を行うと針の痛みはほとんどなくすことができます。次に麻酔液を注入(入れる)時の痛みです。これに対しては、麻酔を2回に分けて行うことにより軽減できます。
以下実際に痛みをなくす麻酔方法について解説します。
できるだけ痛みをなくす麻酔方法
歯肉には痛みを感じる部分が大きく分けて2ケ所あります。
一つはほっぺたに近い部分です。
歯の根の先にあたる部分で歯肉の軟らかいところです。
専門用語で歯肉頬移行部(しにくきょういこうぶ)といいます。
この部分は粘膜が過敏な部分です。
針をチクッと刺すと非常に痛みを感じます。
しかし、麻酔液を入れる時にはあまり痛みを感じません。そのため先程説明したようにまずこの部分に表面麻酔を行います(歯肉の表面が麻痺するため針の痛みはなくなります)。しかし、この部分への麻酔だけではインプラントの治療はできません。
麻酔効果が低いからです。
そのため再度、他の部分への麻酔が必要になります。これは歯の周りの部分になります。
この項ではインプラントの話しですから、元々歯があった部分になります。(顎の一番高い土手の部分になります)専門用語で歯槽頂部(しそうちょうぶ)と言います。
歯槽頂部の歯肉はチクッと刺す痛みは先程の歯肉頬移行部よりありませんが、麻酔液を入れる(注入する)痛みが強い場所です。 そのため最初の麻酔(歯肉頬移行部への麻酔)でおおまかに麻酔を効かせ、1~2分程度待ち、この部分(歯槽頂部)に麻酔を行います。 この部分は麻酔が非常に効く場所です。
このように2段階で麻酔を行うと痛みも少なく、麻酔効果も得られます。
笑気麻酔
歯肉に直接麻酔を行う以外にも併用する麻酔があります。
その一つが『笑気麻酔』です。
笑気麻酔は麻酔のガスを鼻から吸うものです。
ガスですからもちろん痛みはまったくありません。
笑気麻酔(無臭のガス)を吸ってから5~10分程度すると頭が『ぼーっと』してきます。
人によっては眠たくなることもあります。
『ぼーっと』してくると治療に対する緊張や不安が減少され、リラックスした状態で治療が受けられます。
ただし、この笑気麻酔のみでは歯肉への麻酔効果はないため、通常の歯肉への麻酔も追加します。
笑気麻酔の良い点は他にもあります。
笑気ガスを中断(終了)するとすぐ麻酔が醒めます。
そのため麻酔後に効果が切れるまで病院で待たなくても良いことになります。
静脈内鎮静法
歯科治療が怖い方必見、眠っている間に治療が終了します
静脈内鎮静法とは(intravenous sedation)、簡単に言えば、寝ている間に治療を終了させる麻酔方法です。
静脈内鎮静法を行うと治療中のことはほとんど覚えていない状態になります。
眠っている間にインプラント治療が終了するのです。
治療に不安を持っている患者さんには最適な麻酔方法です。
方法としては、点滴をするように血管内(静脈内)に麻酔液を入れます(流します)。
麻酔が効くまで5~10分程度です。
後はインプラント治療が終了するまで寝ている状態です。
非常に楽だったため、人間ドックの際に行った『大腸カメラ』では、もちろん静脈内鎮静法で行いました。
インプラント治療がご心配な方は、確実に楽な方法です。
また、高血圧等の御病気がある方にも適しています。
インプラント手術と聞くと、それだけでドキドキするものです。
緊張すれば、血圧も高くなります。
高血圧の方や、治療がご心配な方は、静脈内鎮静法で麻酔を行った方が確実かと思います。
先程、ご説明したように静脈内鎮静法で麻酔を行うと寝ている状態になります。
簡単に言えば、夜間就寝している状態と同じようなことです。
そのため、不安や緊張がなくなりますので、血圧も安定します。
欠点として麻酔が終了しても完全に切れるまで時間がかかります。
通常、静脈内鎮静法は、麻酔を終了すると5分程度で麻酔はきれます。
しかし、個人差もありますので、麻酔が完全にきれるまで時間がかかることもあります。
麻酔により目覚めた後はぐっすり寝て起きた状態に似ています。
すっきりとした状態です。
患者様によっては『ひさしぶりにぐっすり眠った』という方もいらっしゃる程です。
しかし、麻酔が効きやすい方はその後にも若干"ぼーっと"することがまれですが、あります。
患者様により麻酔終了後、1時間程度効いている場合もあります。
そのため、静脈内鎮静法を行った時には車やバイク、自転車での運転(帰宅)はできません。
できれば付き添いの方がいらしていただいた方がよろしいかと思います。
一度静脈内鎮静法でインプラント手術を行った患者様は次にインプラントを行う時にはほとんどの方がまた静脈内鎮静法による麻酔をご希望されます。
それだけ楽だったということです。
最後に
通常はインプラントを行う部分のみに局所麻酔を行う(もしくは笑気麻酔を併用)ことが多いのですが、治療自体に御不安がある場合には静脈内鎮静法は有効な麻酔です。
ちなみにインプラント治療の95%は局所麻酔(もしくは笑気麻酔を併用)のみで行っています。