CAD/CAM:(コンピューターによるインプラント補綴自動作製器械)

はじめに

『CAD/CAM』の話は患者様が直接役立つ臨床的な話ではないので、歯科治療をもっと知りたい!
とご興味のある方はどうぞ御覧になって下さい。
ちょっとマニアックな話ですが…

なぜ、審美歯科の内容に入っているのかということは見ていただくと分かるかと思います。
従来、歯科で作製する被せ物(クラウン、セラミック、ハイブリッドセラミック等)や義歯等は全て歯科技工士による手作業でした。
これら歯科技工士が作製する物を『補綴物』と言います。
補綴物全てが人間の手によるフルオーダーメードなのです。

器械で大量生産する現代においても歯科での『補綴物』はどうしても人の手で作製しなければ、ならないのが現状でした。
その理由として先程書きました『補綴物』は患者様個人個人に合わせた、完全なフルオーダーメードだからです。

今まで器械で『補綴物』を作製する試みはありました。
臨床にも応用されています。
しかし、ほとんど普及していません。
『補綴物』の精度は1/100ミクロンの精度を有する物であり、1歯、1歯、その形態はまったく違うものだからです。
人間の作製する精度にはどうしてもかなわなかったのです。

しかし近年、『補綴物』を器械で作製する方法の技術的な向上があり、臨床でも十分使用できる物になってきました。
それが、『CAD/CAM』というものです。
『CAD/CAM』とはComputer aided design / Computer aided manufacturing millingの略で、コンピュータ支援によって歯科の被せ物(補綴物)の作製を自動的に行うシステムです。

話はずれますが、なぜ『CAD/CAM』が『インプラント審美』の中に入っているかと言いますと、ジルコニアというオールセラミックを作製する場合、この『CAD/CAM』を使用して作製するからです。
現在、『ジルコニア:オールセラミッククラウン』は審美歯科の革命と言ってもいいほど注目されている素材です。

その『ジルコニア:オールセラミッククラウン』を作製するのが、『CAD/CAM』なのです。
このテーマである『CAD/CAM』を御覧になる前に、ジルコニア:オールセラミッククラウンを見て下さい。 審美歯科の革命:『ジルコニア』オールセラミッククラウン

今までのセラミックと新しいセラミック(オールセラミック)の違いと歴史

CAD/CAM で作製されるオールセラミッククラウンですが、今までのセラミックとはどこが違うのでしょうか?
その違いと歴史について解説したいと思います。
ジルコニアはオールセラミッククラウンです。
『オールセラミッククラウン』とは金属をまったく使用しない被せ物(補綴物)です。
それでは今までの『セラミック』はどうなっていたのでしょうか?
今までのセラミックは『メタルボンドクラウン(メタルセラミックス)』と言います。
『メタルボンドクラウン(メタルセラミックス)』は1960年代から使用され始め、現在のセラミック治療の主流となっています。

この『メタルボンドクラウン(メタルセラミックス)』の作製方法ですが、一度金属のフレームを作製し、その上にセラミックを盛り足し、焼成し、形態をつけていくものです。
つまり、セラミックの白い色の下(中)には金属が使用されていたのです。
このセラミックの下(中に)金属を使用していたことにより、透明感がない歯になっていました。
そのため、天然歯と同様な透明性をもった明るく白い歯が求められるようになってきました。
それが金属をまったく使用しない『オールセラミック』です。

『オールセラミック』は1980年代に臨床に使用され始めました。
しかし、『オールセラミック』は審美性に優れているのですが、金属を使用していないため、強度に大きな問題がありました。

噛む力に耐えきれず、欠けたり、割れたりしていたのです。
そうしたことから 当時『オールセラミック』は臨床ではあまり普及していなかったのです。

その後、1990年代になると強度が向上した『オールセラミック』が登場しました。
『IPS Empress』と『In Ceram』という商品です。
この2つは審美性と強度が格段に向上したのですが、作製時間が非常に長くかかり、作製自体も複雑で難しいものでした。(この2つは優れた特性を持っているため、現在でも使用されています)

そして2000年代になるとコンピューターを使用し作製する『CAD/CAM』による『オールセラミック』が登場したのです。
『CAD/CAM』により作製された『ジルコニア』を代表とする新しい『オールセラミッククラウン』は非常に高い強度を持っています。

そして 金属の裏打ちがなくてもまったく問題がない状態に改善されました。
現在(2005年)、『オールセラミック』の治療普及率はアメリカで22%、ヨーロッパで16%と言われています。(修復治療に対する割合)
これからはこの普及率はどんどんと上昇し、金属を使用した『メタルボンドクラウン』を完全に追い越すとされています。
日本ではどうでしょう。
日本における『オールセラミック』の普及率は2%とされています。(2005年)
その理由の一つとして日本ではいまだ『オールセラミックは破折しやすい』という考え方をもっている歯科医師が多いことが挙げられます。
そしてもう一つ大きなこととして日本では『CAD/CAM』の普及が非常に遅れているからです。
この『CAD/CAM』の普及が今後の日本の歯科医療を大きく変えていくことになります。

オールセラミック

『CAD/CAM』の利点と欠点

今までのセラミックは作製するのに非常に時間がかかり、作製する歯科技工士の技術差も大きいものでした。
これは最初に書きました従来のセラミックは全て人の手で作製するフルオーダーメイドだったからです。
しかし、『CAD/CAM』はコンピューターにより制御された器械により作製されるため、精度のエラーが非常に少なく、短時間にセラミックの補綴物の作製が可能になりました。
『CAD/CAM』による『オールセラミック』の利点は以下のようになります。

  • 金属を使用しないため、審美性に優れる
  • 今までのセラミックと比較すると強度は比べ物にならないくらい強い
  • 今まで、何時間もかかっていた作製時間が数分になった
  • コンピューターで作製するため、作製者の技術的なエラーが非常に少ない
  • 金属を使用しないため、金属アレルギーの患者様にとっては有効な治療となる。

等です。
欠点として

  • 『CAD/CAM』という器械自体がまだ高価なものであるため、どこの歯科技工所にもあるわけではない。
  • 『CAD/CAM』自体が高価な器械のため、今までのセラミックよりもCAD/CAMによって作製された『オールセラミック』の方が費用がかかるため、患者様の負担がある。
  • 現時点ではまだ全ての症例に適応できない。

等があります。
しかし、将来的には費用も下がり、症例の適応範囲も向上する結果、『CAD/CAM』を使用した『オールセラミック』が主流となるでしょう。
下の写真は『CAD/CAM』の器械により、セラミックを削りだしているところです。

RPの生成方法 ステップ1および ステップ2