歯科医師の視点からみる喫煙
喫煙の口腔内への害
1. カタル性口内炎
カタル性口内炎タバコの煙は強い刺激性を持ち粘膜を刺激するため口蓋粘膜が腫れ、口の中全体が厚みをまします。
2. 白板症
粘膜の刺激が続くと粘膜の細胞が異常をきたし、白い板のような形態をとるようになります。白板症の5~10%が口腔癌になります。
3. 口腔内カンジダ症・歯周病
タバコの煙は口の中の免疫機構を破壊して病原体の繁殖を助けます。
通常は病原性を持たないカンジダとカビの異常繁殖を招き、白色斑やびらんを伴う口腔内カンジダ症を起こします。免疫の減退は歯石や歯垢の蓄積も促進し、歯周病を発生させます。特に喫煙開始年令が低いほど、免疫の減退は強く起こり、歯肉の炎症反応(発赤、腫脹)が現れずに、骨吸収が強くあらわれる特有の病体を示します。タバコそのものの臭いと歯周病の臭いが混ざり、ときとして強い口臭を放ちます。虫歯もできやすくなり、若くして歯を失う可能性が増加します。
喫煙者の歯周病は通常の歯周病治療に反応しにくく、いったん治療が成功しても、すぐに再発してしまう傾向があります。
※ このレポートは、実践社刊吸う人と吸わない人のたばこ病タバコ問題センターその他を参照して、作成されています。
4. 喫煙と歯周病
タバコは全身だけでなく口腔の健康にも重大な問題を引き起こします。
喫煙が健康に大して有害であるということは、すでに確立された考え方になっていますが、タバコは全身だけでなく口腔の健康にも重大な問題を引き起こします。最近の多くの疫学的研究の結果、喫煙は歯周病の最大の危険因子であると考えられるようになってきました。
5. 歯肉への影響
口腔清掃状況と年齢と喫煙状況による歯周病の進行状況の研究
口腔衛生状態が悪く、喫煙している人は非常に高い確率で歯周病であることが言えます。
この2つの表は口腔衛生状況の良い人と悪い人に対して、喫煙と歯周病の進行程度を年齢別にみたものです。
口腔衛生状態の良い人は喫煙者でも中程度・重度歯周病の比率は50%以下ですが、口腔衛生状態の悪い人で喫煙者は中程度・重度歯周病の比率は80%にも及んでいます。
つまり口腔衛生状態が悪く、喫煙している人は非常に高い確率で歯周病であることが言えます。
6. タバコは歯周病を悪化させる!
喫煙と歯周病の関係は、歯周病の学会において数多く報告されています。
ある報告によると、タバコを吸う人と吸わない人では歯周病の進行は6倍以上も早いという結果もあります。タバコのページはそうしたデータを中心に歯周病とタバコの害を中心に全身的な問題も加えて解説します。
自分自身でタバコを吸う人だけでなく、周囲(家族、会社など)で喫煙環境がある全ての人に見ていただきたいと思います。
本当に歯周病を治したい人(もちろん全身的な健康も含めて)は、これを機会に禁煙してみて下さい。
1本のタバコが自分自身の寿命を短くするだけでなく、大切な家族の健康をも短くしてしまいます。タバコで人生をダメにしてもいいのですか?強い意志があれば禁煙は必ずできます。
事実私も喫煙していましたが、禁煙しました。
現在、先進国では喫煙率はどんどん減少してきています。日本においても喫煙率は徐々に低下しつつありますが、15歳以上の喫煙人口は約3,363万人に上り、約1,800万人が“タバコ依存症”と推定されています。また成人の喫煙率は男性が52.8%、女性が13.4%と、文明国に於いて極めて高い率となっています。特に女性の20~30歳代の喫煙率が徐々に増加し、20歳代では23%にもなっています。(データ「喫煙と健康に関する実体調査」 1999 厚生省 より)