失った骨の再生治療:GTR法

はじめに

歯周病は、歯と歯肉の境目(歯周ポケット)から汚れ(歯周病細菌)が入り込み、歯肉が腫れ、最終的には歯を支えている骨が吸収する病気です。
歯周病は感染症です。
歯を支えている骨が吸収すると 次第にグラグラとしてきます。
そして最終的に歯が抜けてしまうのです。
それでは、『吸収した骨は元に戻らないのでしょうか?』
『骨は再生しないのでしょうか?』
歯周病の患者様の多くは、『元の状態に戻らないのか?』と期待をもっています。
答えとしては、条件さえあえば、骨の再生は可能です。
歯周病で失った骨を再生させる治療法がGTR法なのです。
『GTR法』とは、『Guided Tissue Regeneration technique』の略で、日本語では、『歯周組織再生誘導法』と言います。
それでは、GTR法は、
『どんな治療法であるのか?』
『骨は本当に再生するのか?』
という話をしたいと思います。

GTR法の原理(なぜ骨は再生できるのか?)

GTR法は1982年、S.Nymanらにより発表された歯周病治療の新しい方法です。
これは 歯の周りに必要な組織を再生させて、歯の支持構造をできるかぎり元の状態に戻すという方法です。
GTR法の原理を説明するのは ちょっと難しいことでが、以下の解説をご覧になって下さい。
歯周病により失った骨や歯肉繊維は その原因であるプラークや、汚染組織を除去すれば再生しようとします。
しかし、原因を除去した後、そのままであると 治ってほしい骨や歯肉繊維が再生する前に "別の組織 " がそこに入り込み、治ってくれません。
そこで 原因の除去後に "別の組織" が入り込まないように 歯肉の下に "特殊な膜"を置きます。
そうすることにより " 膜 " の下に必要な 骨 や 歯肉繊維 が再生します。
GTR法の開発当初は 歯肉の下に置いたこの" 膜 "は溶けない材料であったため、再度" 膜 "を取り出す必要がありました。
現在は" 吸収する膜 "が開発されたため 1回の診療にて行うことができるようになりました。

gtr法の原理 gtr法の原理 gtr法の術式

上記の話では、分かりにくいので、もうちょっと簡単に例にとって解説したいと思います。
まず、腕や足を骨折したとします。
ギブスをし、安静にしていれば、骨はくっつきますよね。
数ヶ月かかりますが…
それでも全身的に問題がない方であれば問題なく骨はくっつきます。
つまり、骨が折れた部位には骨が再生するのです。
骨が再生するには、『骨の細胞』が必要です。
『骨の細胞』が増殖することにより骨は再生するのです。
大切なのは、『骨の細胞』が再生するための場所や条件が必要だということです。
例えば、『コップ』があるとします。
そして、この『コップ』の中に『血液』を入れます。
『骨の細胞』は、この『血液が満たされたコップ』の中で再生(増殖)することができます。
しかし、『骨の細胞』は、『コップ』の外に出て、骨を再生(増殖)することはできません。
『骨の細胞』は、血液で満たされたコップの中でしか生存できないのです。
この『コップ』を骨に置き換えてみます。
骨の吸収と言っても、骨の中に穴があいているような状況であれば、骨の中に血液が溜まる場所があります。
血液が溜まることができれば、その中で骨は再生することが可能になります。
しかし、骨が水平的に吸収してしまっている場合、骨の上方へは、血液が溜まりません。
平な板の上に血液を溜めようと思っても流れてしまうのと同じ減少です。 血液が留まるための堤防がないとダメなのです。
また、歯周病で骨が水平的に吸収してしまい、歯肉が退縮している場合、歯肉に押しつぶされてしまい、骨が増殖するスペースが存在しません。
そのため、歯肉が退縮している場合、GTR法を行っても歯肉が上に盛り上がってきて、骨が再生することはできません。

GTR法でどこまで骨が回復できるのか?

それでは、GTR法で どこまで骨の回復は可能なのでしょうか?
元の状態にまで骨が回復するのでしょうか?
答えとしては、適応症さえ合えば、骨の再生はある程度は可能です。
しかし、多くの症例では、GTR法によって十分骨の再生が可能と思われるケースの方が圧倒的に少ないのが現状です。
GTR法は、魔法の治療ではありません。
どのような進行した歯周病であっても 元の状態に回復できるわけではありません。
その理由は先程の項で説明したとおりです。
時々当医院に来院される患者様の中で、歯周病の再生治療を希望されて来院される方がいらっしゃいます。
特に他歯科医院にて抜歯と診断され、抜歯が嫌で『どうにかならないか』とインターネット等で検索され、GTR法やエムドゲイン法があることを知り、『骨が再生できるのではあれば、抜歯にならない!』と期待を込めて来院されるわけです。
しかし、いくら歯周病専門医と言っても全ての症例でGTR法を行っているのではありません。 歯周病専門医

もし、適応症でない場合、GTR法を行っても効果がないばかりでなく、逆に悪化してしまうことさえあります。
GTR法を行う場合には、術前にきちんとした適応を守ることが重要です。

前項で解説したように骨が再生するためには、血液が留まる場所が必要であることを解説しました。骨の再生のためには、『骨の細胞』が必要です。
そして、『骨の細胞』が生存できる場所が必要なのです。
『骨の細胞』が生存する場所が確保できなければ、決して骨は再生しません。

GTR法の実績

当医院ではGTR法を行っています。
院長は、神奈川歯科大学の歯周病学講座に在籍している時にGTR法の研究を行っていました。
研究業績は、こちらを参考にして下さい。
スタッフ紹介

特にコラーゲンを使用したGTR膜は、私達の共同研究で開発した材料です。
GTR法をご希望の場合には、担当医もしくは初診時の問診票、スタップ等にお申し出下さい。

GTR法の費用

GTR法の費用は、表金表をご覧ください。

料金表

その他の骨再生治療

歯周病で吸収した骨の再生治療には、GTR法の他にエムドゲイン法という治療方法があります。
この治療法については下記をご覧下さい。 失った骨の再生治療:エムドゲイン法