PDT(フォトダイナミックセラピー)

新しい歯周病治療PDT(フォトダイナミックセラピー)

PDTとは、Photo Dynamic Therapy(フォトダイナミックセラピー)の略で、日本語では光線力学療法と言います。
今までにない新しい歯周病治療です。
それではこのPDTは、今までの歯周病治療となにが違うのでしょうか?

まず歯周病とはなにか?(どのような病気か?)という話しからしたいと思います。
歯周病は、歯周病細菌による感染症です。
歯と歯肉の境目(歯周ポケット)に汚れ(食べかす)等が入り込み感染を起こします。

この歯と歯肉の境目に汚れが入り込み感染を起こすのです。
そのため、歯周病の基本的な治療として、歯周ポケット内部に溜まっている汚れ(歯石 等)を取り除く治療を行います。
この治療をスケーリング ルートプレーニング(SRP)と言います。
このスケーリング ルートプレーニング(SRP)は歯周病治療の基本中の基本です。
しかし、この治療欠点もあります。 SRPにより歯石 等の感染物質を取り除く際に歯周病細菌が歯周ポケット内部に散らばって残ってしまうことがあります。

もちろん治療開始前の歯周病細菌の数によってもこうしたことには差があります。
SRPを大雑把に説明すると「耳かき」を行っているようなものです。
耳の穴の中にある汚れ(垢)を機械的に取り除くのが「耳かき」です。
歯周病の治療であるSRPも同様です。
SRPを行うことにより歯石(汚れ)は結構取れますが、全て(100%)取れるわけではありません。
砕かれた歯石の削片 や 目で見えない細菌 等は 残る可能性があります。
大量の細菌が残ると それが元になり、歯周病が再発することがあります。

また、重度歯周病の場合、歯周ポケット内部には、大量の歯周病細菌が生息しています。この細菌が腫れや、出血の原因となっているだけでなく、骨が吸収を起こします。
歯周病細菌を減らすことが歯周病を治す第一歩なのです。
そのため、SRP(ルートプレーニング)により残った歯周病細菌や初診時に炎症が強い場合には歯周病細菌の繁殖を抑えるために薬を使用することがあります。
この方法は内科的歯周病治療:飲み薬(抗菌薬)による歯周病治療と言います。
この治療法については以下を参考にして下さい。 飲み薬で歯周病を治す!

しかし、抗生剤を使用した歯周病治療の大きな欠点として薬剤耐性(薬剤に対して抵抗性を持ち、これらの薬剤が効かない、あるいは効きにくくなる現象のこと)が起こることがあります。

前置きが長くなりましたが、今までの歯周病治療では効果が確実に期待できない症例があったり(細菌除去が不確実な症例)、副作用の問題(薬剤耐性)が起こることがありました。
以下で説明するPDTはそうしたことがまったく起こらない新しい歯周病治療なのです。

それではPDTの実際の使用方法について解説します。
詳細はその後で説明します。

まず、歯周ポケット内部にバイオジェル(光活性剤)を入れます。
次に歯周ポケット内部に光エネルギーを約1分間照射します。
大まかな流れはこれで終了です。
非常に簡単な治療です。
図で見てみましょう!

PDTの実際の使用方法

痛みはありませんし、非常に短時間で行えます。
それでは、詳細の話しになります。
まず、使用するバイオジェルですが、0.01%のメチレン-ブルー色素を含む中性リン酸緩衝液で、この色素は、歯周病細菌(グラム陰性菌 および グラム陽性菌 の細胞壁を構成するリポポリサッカライド、糖脂質の脂質)に得意的に結合します。
難しい話しはできるだけ避けましょう!
簡単に言えば、歯周ポケット内部にバイオジェルを入れると 歯周病細菌 と結合(くっつく)ということです。
このバイオジェルは光感受性物質と言い、光を吸着すると 化学反応が起こり活性酸素を発生させることができます。
活性酸素という言葉は最近良く耳にすることかと思います。
この時に使用する光エネルギーは、「Periowave」という装置を使用します。「Periowave」は、670nmの波長で 220mWの低出力光エネルギーです。 発熱を起こすこともないため、痛みを感じることはありません。

光エネルギー(Periowave)を照射することにより、色素(バイオジェル)が結合した歯周病細菌は破壊されます。
このバイオジェル(色素)は、人間の身体の細胞には結合しません。
また、光が照射される1~2ミリが有効範囲であるため、その効果は限局的です。
そのため、ピンポイントでバイオジェル(色素)を塗布し、光を照射することが必要です。
以下は、「Periowave」という光エネルギーを照射する装置です。
非常に小さいものです。

「Periowave」

さらにPDTの詳細を説明します。
ご興味のある方は是非以下も見て下さい。
以下は「PDTの適応症」および「治療のポイント」です。

PDTの適応症および治療のポイント

1. 歯周病治療と併用すると有効!

歯周病の治療と併用して行うことにより効果があります。
あくまで歯周病に対してPDT単独で使用するのではなく、PDT前に歯周ポケット内部の感染物質(歯石等)を超音波スケーラー等で除去(クリーニング)してからPDTを行い、PDT終了後には必ず破壊された歯周病細菌および 毒素を洗浄することが必要です。

2. メインテナンス(定期検査)で使用すると有効!

PDTによって ある程度の期間歯周病細菌の再発を抑えることが可能となりますので、メインテナンスにおいて歯周ポケットの再発した部位に使用することにより維持安定を得ることができます。
どれくらいPDTの効果が持続するかということは、さざざまな条件により大きく変わりますが、約1~2ヶ月は維持可能となります。
(PDTを使用すれば歯周病にならないということではありません徹底した歯磨きができていないと効果はありません)つまり、重度歯周病の方や再発率の高い人は、メインテナンスの度に行うと効果が高いということになります。
PDTを行えば、一生歯周病細菌がいなくなるということではありません。

3. 再発しやすい歯周病には有効!

先にも説明しましたように 歯周病は歯周病細菌よる感染症です。
そのため、もともと歯周病細菌が多い方は 再発率が高くなります。
歯周病が再発しやすい方にはPDTは最適と言えます。

4. 歯周病治療における菌血症の防止に有効!

歯科治療における菌血症とは、汚れ(細菌)が歯周病治療(抜歯等の他の歯科治療でも起こります)を行うことにより、身体の中(血管内)に細菌侵入することを言います。
歯周ポケット内部(歯肉の内部)には当然のことですが、血管が存在します。
特に歯周病で歯肉が腫れている方は出血が起こっていることが多いため、歯周ポケット内部に存在する汚れ(歯石)と血管が触れていることになります。
他の言い方をすれば、汚れ(歯周病細菌)が血管に触れている状態といってもいいでしょう。
こうした汚れ(細菌)が一時的に血管内部に侵入することを菌血症と言います。
特に 歯周病治療 等の歯科治療を行うとこうした菌血症が起こることが報告されています。
歯周病治療の基本的な治療であるルートプレーニングでは、報告に差はありますが、「8~79%の確率で菌血症が生じる!」と報告されています。
事実 ルートプレーニング を行った後(6分後)に採血して調べると血液中から歯周病細菌が発見されることが報告されています。
PDTをルートプレーニング前に行うことにより、歯周病細菌の減少をはかることが可能となるため、菌血症のリスクを減少できます。

5. 細菌性心内膜炎、大動脈弁膜症、チアノーゼ性先天性心疾患、人工弁、シャント術実施患者…の方に有効!

上記のような方は、歯周病治療を行う上で最もリスクが高い患者様と言えます。
上記の疾患等を 有する患者様は、歯周病治療において菌血症を起こす可能性が高いため、PDTは有効と言えます。

6. インプラント周囲炎(インプラントの歯周病)に有効!

インプラントは虫歯になることはありませんが、歯周病のような状態にはなります。
このことをインプラント周囲炎と言います。
インプラント周囲炎はインプラントがダメになる原因として最も高いことです。
メインテナンス(定期検査)の際にPDTを使用し、細菌の減少を行うことも有効ですし、もしインプラント周囲炎になってしまった場合にも効果が高い治療と言えます。

PDTの治療費

現在 歯科領域ではこのPDTは保険が適応されていません。
そのため、自費診療となります。

料金表