歯周病は治るのか?

はじめに

現在、歯周病の患者様にとっては、『歯周病は本当に治るのか?』ということは、最も気になるところだと思います。
まず 始めに その答えからお話します。
中程度までの歯周病であれば、十分改善します。
状況しだいで、重度の歯周病であっても改善する可能性もあります。
骨再生治療を行えば、骨の回復(再生)もかなり行えることができます。
しかし、あまりにも非常に進行した歯周病の場合には、治りません。

それでは、 『中程度とはどのような状態であるのか?』『非常に進行した歯周病(重度歯周病)とはどのような状態か?』『どこまで進行したら、抜歯となるのでしょうか?』『また、治る場合、どこまで改善するのでしょうか?』

歯周病は、歯周病細菌による感染症です。
このことは、このHPのさまざまなところでも書いています。
そして、感染が進行すると 歯を支えている骨が吸収します。
この骨吸収がどの程度進行しているかが、歯を残せる大きなポイントになります。

ただし、骨の吸収だけで、治る基準 や 抜歯の基準 を正確に決めることは非常に難しいことです。
この理由として、歯周病は、生活習慣病であり、さまざまな要因から成り立っているからです。
歯周病の原因は、
  1. 歯周病細菌
2. 歯磨きが適切にできていない(1.の原因になります)
3. 噛み合わせ(歯ぎしりを含む)
4. 喫煙
5. 食生活、運動、飲酒、睡眠、ストレス…
  等です。
そのため、単に骨の吸収があるからダメ(抜歯)ということではありません。
中程度以下の歯周病で、骨吸収がさほど少なくても、歯磨きができていない、歯ぎしりが強い、噛み合わせが悪い、喫煙している ということが重なっている患者様では、治らない可能性が高くなります。
逆に骨吸収がある程度ある重度歯周病でも、今後徹底して歯磨きをきちんと行うことができる、喫煙や生活習慣が適切である等も問題がなければ、治る可能性も十分あります。

中程度の歯周病とは?

歯周病の進行程度をあらわす検査には、
  1. 歯周病ポケット検査
2. レントゲン写真による骨吸収程度の検査
3. 噛み合わせの検査
等があります。
この詳細は、下記をご覧下さい。 歯周病の検査はどんなことをするの?

まず、歯周病ポケット検査において、5ミリ以上の歯周ポケットであった場合には、中程度になります。
ちなみに7ミリ以上は、重度歯周病です。
しかし、もっとも重要なのは、レントゲン写真による骨吸収程度の検査です。
歯周ポケットが7ミリ以上あっても、レントゲンで骨吸収がない場合もあります。
骨吸収がなければ、歯周ポケットが7ミリ以上でも 中程度以下の歯周病です。
言い換えれば、骨吸収が進行していると 状態としては悪いのです。

また、同じ歯周ポケットでも検査時に出血がある場合には、問題があります。
出血があるということは、現時点で進行している歯周病であるということです。
例えば、5~6ミリ程度の歯周ポケットでも、出血があり、レントゲンで骨の吸収が進行していれば、重度歯周病ということになります。
※ ただし、出血がなくても歯周病が進行している場合もあります。
これは、喫煙者に多く見られる症状です。
1/3程度以下の骨吸収であれば、中程度の歯周病と言えます。

非常に進行した歯周病とは どのような状態か?

骨の吸収が大きいケースは、進行した歯周病と言えます。
噛み合わせ等にもより違いますが、歯を支えている骨が1/3程度吸収してくると"歯がグラグラ"してきます。
骨の吸収が1/3以上ある場合には、中程度~重度歯周病といってもいいでしょう。
しかし、重度歯周病といっても まだまだ 半分程度の 骨が残っている場合には、抜歯にはなりません。
2/3以上の骨吸収がある場合には、非常に進行した重度歯周病になります。

また、"歯のグラグラ"程度をあらわす数値として『動揺度検査』という簡単な検査があります。
以下のようにあらわします。

動揺度0:歯がほとんど動かない
動揺度1:歯が頬側、舌側のみに若干動く程度
動揺度2:上記+歯が横(左右)にも動く
動揺度3:上記+上下にも動く

動揺度2以上であれば、重度歯周病です。
動揺度3であった場合、抜歯となる可能性が高くなります。

下の写真は、骨吸収がまったくない健康な状態のレントゲン写真です。

骨吸収がまったくない健康な状態のレントゲン写真

下の写真は、骨吸収が2/3以上ある重度歯周病のレントゲン写真です。

骨吸収が2/3以上ある重度歯周病のレントゲン写真

どこまで進行したら、抜歯か?

ここまでで、中程度の歯周病、重度の歯周病というのが、ある程度分かったと思います。
それでは、どこまで歯周病が進行したら抜歯になるのでしょうか?
最初にも書きましたように、歯周病の原因は さまざまあります。
そのため、抜歯の基準は正確にあるものではありません。

しかし、以下の場合には、抜歯になる可能性が高くなります。
1. 骨吸収が2/3以上ある
2. 動揺度が3
3. 6点法の歯周ポケット検査において、全てが7ミリ以上の歯周ポケット検査が存在する。
4. 歯磨きがまったくできていない
  ※ 1歯について6カ所を測定する歯周病ポケット検査については、こちらをクリックして下さい。 歯周ポケット検査(歯周病の基本的な検査)

歯周病治療によりどこまで治るのか?(改善するのか?)

歯周病治療を行うとどこまで改善するのでしょうか?
まず、歯周病治療の内容がお分かりにならない方はこちらをクリックして下さい。 歯周病の治療 どこまで治るかを説明する前に以下のことは患者様ご自身で徹底して管理して下さい。

1. 徹底した歯磨きを行う
毎食後、10分以上は、時間をかけ、歯科衛生士による適正な指示にしたがい行って下さい。

2. 生活習慣をきちんと見直す
何度も書きますように歯周病は、生活習慣病です。
喫煙している方、治らないと思って下さい。
また、口腔内も身体の一部ですから健康な身体こそ健康な口腔内になります。
食生活、睡眠、適度な運動、ストレスの少ない生活をできるかぎり心がけて下さい。

それでは、歯周病治療によりどこまで治るのかを解説します。
まず、歯周ポケットですが、これは、治療によりほとんど治ります。
もともと歯周ポケットが7~8ミリあっても、徹底して歯周病治療を行うことにより2~3ミリ程度に改善します。
これは、歯周病治療により歯周ポケット内部に存在した汚れ(歯周病細菌)を除去したことにより改善するのです。
しかし、治らないものもあります。
これは、吸収してしまった骨です。
吸収した骨は、基本的には元の状態には戻りません。
『骨再生治療のGTR法やエムドゲイン法を行うと骨が再生するのでは?』
GTR法やエムドゲイン法は魔法の治療ではありません。
どのような状態の歯でも再生治療を行えば骨が再生するのではありません。
再生するための適応基準に当てはまれば 骨が再生することは可能です。
しかし、それでも100%元に戻るわけではありません。

基本的には、歯周病治療により吸収した骨の量は、増えません。
しかし、歯周病治療の目的は、歯周病の進行を止めることにあります。
歯周ポケット内部の細菌を取り除き、歯周病の進行を食い止めることにより、悪化を阻止することが最も大切なことです。